炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
11節 六日ねぇは嫌なんだよ
ほんの数秒も経てばその赤い光は消えて六日も目から腕を離す。
「チッ……何なのよ。目眩ましか何か?」
まだ目の前がチカチカとしているらしい。目を擦りながら六日が不機嫌に言う。
そして、それを赤い稲妻のようなものが走る玉を持ったハルカがニコリと嘲るように笑いながら見ていた。
「もっと他に聞くことはないの?」
ハルカは七日に尋ねる。自分の後ろに麗菜と七日とアノニムが隠れるようにして六日の前に立ち、小柄なその身長を見下ろしている。
「うっわ、何ここ。目が痛いわね……」
赤い光が見せている幻覚か何か知らないが、ハッキリとしてきた六日の視界には目が痛くなるような原色よりも赤い空間が映った。気がつけば足が地面についている。
「自分の事もっと良く見た方が良いと思うよ」
ハルカは六日を見ながら笑みを含んだ声で言う。
「……は? 若菜さんは……?」
言われて六日は少しだけ自分の姿を確認する。
髪がワカナにしては短い。背がワカナにしては高い。ワカナにしては声が少し低い。
ガバッと六日が自分の事を良く見ると、六日は懐かしく知っている服を着た茶髪の少女だった。ワカナと同じ高校の夏服を着て癖の強い茶髪を横で一つに結ったワカナが記憶しているであろう高校時代の榊六日だ。
「驚かなくていいよ、おねーちゃん。全部説明してあげるから」
ハルカの後ろからピョコっと顔を出した七日が笑って言う。
「……何をしたんですか、七日。ここはいったい何処なんです?」
自分が取り乱していることに気がつき、六日は無理矢理自分を落ち着かせて七日に尋ねた。顔では平然を装っているが、何が起きているかわからず心は混乱している。そして、それはハルカと七日にもわかっていた。
「落ち着いてよ、麗菜とアノニムもわかってないんだから。おねーちゃんだけじゃないんだね。私が分かりにくく説明してあげる」
嫌味のように顔を歪めて七日が言った。心を見透かされたような気になって嫌だなと六日は眉を顰めた。
「見透かされたじゃなくて読んでるんだよ、おねーちゃん」
ボソリと呟くように七日が言い、六日がその言葉に不思議そうに耳を傾ける。
「私ね、誰かの記憶では『心を読める悪魔』なの。ハルカの事も良く見て。『一日ねぇが連れてきた鮎川ハルカ』そのものでしょ。そして『鮎川ハルカは不知火あゆみ』でもあるんだよ。……これで私の分かりにくい説明は終わり」
七日は軽く俯き、六日の顔を絶対に見ないようにしながら明るく言う。そんなことを気にもせずに六日はハルカの姿を良く見た。
白いツインテールだった長い髪は焦げ茶色のショートカットになっている。背もさっきよりも高くなり、闇のように黒い瞳が二つ六日を覗いていた。六日が知っているハルカは彼女だ。
「……あっそう。で、私は若菜さんにとって『クラスメイトの女の子』でしかない、そういうことですね」
「そういうこと。こんなんでも理解しちゃうんだから六日ねぇは嫌なんだよ」
全てを理解したかのような顔で六日が七日に確認すると、七日は少しだけ声を低くして嫌がるように言った。そして、七日は後ろを振り返り頭上にいくつもクエスチョンマークを浮かべているアノニムと麗菜の方を向いた。にっこりと微笑んで救われたと言うような幸せそうな顔で。
「さて、おねーちゃんの事はハルカに任せて、私はまだ状況が掴めていない普通のお二人に今度は少しだけ分かりやすく説明してあげよう」
両手を軽く広げて七日はショーでも始める日のように言う。場を盛り上げるためだけの前座のように、司会者のような口振りで麗菜とアノニムに近づく。
髪色と目の色以外は全くワカナと似ていないと言われていた麗菜と、黒い魔術師のローブを身に纏った紫色の髪を揺らすアノニムに。誰かの記憶の中の自分の姿の衣を被ったそんな二人に近づき、七日はさらに口角を上げた。
「期待はしないでね」
今から言うことのおかしさを知っているから。別に完全に理解されなくても良いと思っているから。約束だよ、と言うように心の底から本心の笑みを浮かべながら七日は言った。
「チッ……何なのよ。目眩ましか何か?」
まだ目の前がチカチカとしているらしい。目を擦りながら六日が不機嫌に言う。
そして、それを赤い稲妻のようなものが走る玉を持ったハルカがニコリと嘲るように笑いながら見ていた。
「もっと他に聞くことはないの?」
ハルカは七日に尋ねる。自分の後ろに麗菜と七日とアノニムが隠れるようにして六日の前に立ち、小柄なその身長を見下ろしている。
「うっわ、何ここ。目が痛いわね……」
赤い光が見せている幻覚か何か知らないが、ハッキリとしてきた六日の視界には目が痛くなるような原色よりも赤い空間が映った。気がつけば足が地面についている。
「自分の事もっと良く見た方が良いと思うよ」
ハルカは六日を見ながら笑みを含んだ声で言う。
「……は? 若菜さんは……?」
言われて六日は少しだけ自分の姿を確認する。
髪がワカナにしては短い。背がワカナにしては高い。ワカナにしては声が少し低い。
ガバッと六日が自分の事を良く見ると、六日は懐かしく知っている服を着た茶髪の少女だった。ワカナと同じ高校の夏服を着て癖の強い茶髪を横で一つに結ったワカナが記憶しているであろう高校時代の榊六日だ。
「驚かなくていいよ、おねーちゃん。全部説明してあげるから」
ハルカの後ろからピョコっと顔を出した七日が笑って言う。
「……何をしたんですか、七日。ここはいったい何処なんです?」
自分が取り乱していることに気がつき、六日は無理矢理自分を落ち着かせて七日に尋ねた。顔では平然を装っているが、何が起きているかわからず心は混乱している。そして、それはハルカと七日にもわかっていた。
「落ち着いてよ、麗菜とアノニムもわかってないんだから。おねーちゃんだけじゃないんだね。私が分かりにくく説明してあげる」
嫌味のように顔を歪めて七日が言った。心を見透かされたような気になって嫌だなと六日は眉を顰めた。
「見透かされたじゃなくて読んでるんだよ、おねーちゃん」
ボソリと呟くように七日が言い、六日がその言葉に不思議そうに耳を傾ける。
「私ね、誰かの記憶では『心を読める悪魔』なの。ハルカの事も良く見て。『一日ねぇが連れてきた鮎川ハルカ』そのものでしょ。そして『鮎川ハルカは不知火あゆみ』でもあるんだよ。……これで私の分かりにくい説明は終わり」
七日は軽く俯き、六日の顔を絶対に見ないようにしながら明るく言う。そんなことを気にもせずに六日はハルカの姿を良く見た。
白いツインテールだった長い髪は焦げ茶色のショートカットになっている。背もさっきよりも高くなり、闇のように黒い瞳が二つ六日を覗いていた。六日が知っているハルカは彼女だ。
「……あっそう。で、私は若菜さんにとって『クラスメイトの女の子』でしかない、そういうことですね」
「そういうこと。こんなんでも理解しちゃうんだから六日ねぇは嫌なんだよ」
全てを理解したかのような顔で六日が七日に確認すると、七日は少しだけ声を低くして嫌がるように言った。そして、七日は後ろを振り返り頭上にいくつもクエスチョンマークを浮かべているアノニムと麗菜の方を向いた。にっこりと微笑んで救われたと言うような幸せそうな顔で。
「さて、おねーちゃんの事はハルカに任せて、私はまだ状況が掴めていない普通のお二人に今度は少しだけ分かりやすく説明してあげよう」
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