炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
5節 希望は持たない方が良いのかねぇ
「……嫌われちゃったんですかね」
その夜、夕飯を食べるために部屋から出てきたむいかがリビングの様子を見て悲しそうにそう呟いた。それを聞き流してまるで聞こえなかったかのように夕飯の皿を並べた。
「冷めないうちに食べて」
冷たく七日は六日の顔も見ずに言った。
「はいはい、お話もしたいものね」
そう言って六日は席についた。並べられた夕食を見て、今日はパスタかぁ、とぼやく。そして、七日も席につくのを待つと、六日は微かににこりと微笑んだ。
「……で、何を知っているのですか?」
夕方と同じくリボンと手袋を付けた六日が手を合わせている七日に頬杖をつきながらにこりと尋ねた。
「何のこと」
「魔術について何か知っているでしょう」
「私はおねーちゃんと違うから知らない」
クルクルとパスタをフォークに巻き付けながら七日は答えた。それを口に運び少ししょっぱかったなと反省。
「じゃあこれ読めますか」
六日が部屋から持ってきていた一冊の本を広げて七日に見せる。
昔とある天使……というかアノニム科学の発展のため、その最後の指南として残した魔術。それがそこに記されていた。
うっわ、アノニムが見たら喜びそうだなぁ。何て思いながら七日はそれを睨み付けた。
「さあ、私おねーちゃんと違って日本語じゃないと読めないや」
当然日本語な訳もなく、英語で書かれたわけでもないそれを七日はそう言って片付けた。英語でも読めないのだが。
「あら、そうなの。じゃあ私一人でやるしかないね。ごちそうさま、私はしばらく研究するからまた食事を運んでね」
六日は残念そうに言って立ち上がり、本を持って部屋に戻り、また籠ってしまった。せっかく作ったのに全く手をつけられなかったパスタを七日は睨む。
六日が七日の読めないと言ったことを信じたのか、ただ諦めたのか、そんなこと七日にはわからないし、わかろうとも思わない。六日が夕食を残したところで何も思わない。次の日の昼食にして食べさせれば良いのだ。
それよりも気になるのは六日が言っていだ研究゙だった。化学の研究だとか歴史の研究だとかそういう類いではないことくらい七日でも簡単にわかる。まず間違いなく魔術の研究だろう。魔術に興味を持ち、それについて調べることは何の問題でもないし自由にすれば良いと七日も思うが、それを使われるのは地球の禁忌に触れる。偶然かもしれないが六日には前日や夕方の前科がある。七日もそろそろ黙って見ているだけでいることは出来なくなりそうだ。
「希望は持たない方が良いのかねぇ」
六日のパスタを冷蔵庫に入れながら七日はボソリと呟いた。
深夜、真夜中、家中の明かりが消えている時間。その真っ暗闇に七日は一人でリビングに出てきていた。喉が乾いたとか眠れないだとかトイレに行きたいとかそんな平和な理由ではない。ほとんど何も見えない中で手探りでダイニングテーブルまで歩き、そこに何も置かれていないことを確認すると七日は両手をつきそっと目を閉じた。
そして、もし六日がまだ起きていても気が付かれないように自分でも聞き取れないほど小声で明確な意志を持って呟いた。
「影ちゃん、私の分身ちゃん。探り記録し私に伝えよ。六日ねぇが何をしようとしているのか、その目的と手段を一つも溢さず私に見せよ」
七日が閉じていた目を開く。暗闇の中でも一際目立った闇が液体のようにテーブルの上に広がる。表情など無いのにも関わらずそれは笑っている気がする。それを見た七日も微笑んだ。そして、軽くテーブルをパシッと一回叩いて部屋に戻った。
「こんなこと、出来ればしたくなかったんだけどな」
部屋の扉をパタンと閉めて七日はモゾモゾと布団に潜り込み、後悔するように呟いた。数年前、若菜のせいで゙鍵゙がほんの少しだけ壊れて記憶の書庫と影の力、そして悪魔だという自覚を思い出すことになってしまった。そのせいで今こうして苦労しているのだと考えていると大好きな若菜すらも嫌いになってしまいそうだ。まあ、それに気づいてアノニムが遊びに来たことが一番腹立たしいことだったが。
そんなことを考えているうちに七日の意識は眠りに落ちた。
トスッ、ペチョ、トスッ、ペチョ
そんな音が七日を起こした。うっすらと目を明け、枕元の目覚まし時計を確認する。まだ五時の時計を睨むが寝起きの顔と対して変わっていない。
「影ちゃん、後にして。今日休みだしそうじゃないにしてもまだ早い」
そう言って七日は布団を頭まで被る。
「後にしてー」
変わらずトストス体当たりしてくる影に七日が払い除けるように手をパタパタとして言う。
それでも変わらない。相当急ぎのようだ。
「……何」
上半身を起こして七日は自分の影と向き合う。不機嫌そうに眉を顰めて音の無い影の声を聞く。
まあ、その報告は眠気が吹っ飛ぶものだった。
「……それ、さ、間違いなんじゃない? 頭がおかしいじゃ片付けられない、だから、あれ、もう一回調査お願いね」
影から言われたことが信じられないというように言葉に詰まりながら七日は頼む。二度寝しようかとも思ったがそんなこと出来ない。覚めてしまった目を擦り、七日は影が六日の部屋に向かうのを見送った。
その夜、夕飯を食べるために部屋から出てきたむいかがリビングの様子を見て悲しそうにそう呟いた。それを聞き流してまるで聞こえなかったかのように夕飯の皿を並べた。
「冷めないうちに食べて」
冷たく七日は六日の顔も見ずに言った。
「はいはい、お話もしたいものね」
そう言って六日は席についた。並べられた夕食を見て、今日はパスタかぁ、とぼやく。そして、七日も席につくのを待つと、六日は微かににこりと微笑んだ。
「……で、何を知っているのですか?」
夕方と同じくリボンと手袋を付けた六日が手を合わせている七日に頬杖をつきながらにこりと尋ねた。
「何のこと」
「魔術について何か知っているでしょう」
「私はおねーちゃんと違うから知らない」
クルクルとパスタをフォークに巻き付けながら七日は答えた。それを口に運び少ししょっぱかったなと反省。
「じゃあこれ読めますか」
六日が部屋から持ってきていた一冊の本を広げて七日に見せる。
昔とある天使……というかアノニム科学の発展のため、その最後の指南として残した魔術。それがそこに記されていた。
うっわ、アノニムが見たら喜びそうだなぁ。何て思いながら七日はそれを睨み付けた。
「さあ、私おねーちゃんと違って日本語じゃないと読めないや」
当然日本語な訳もなく、英語で書かれたわけでもないそれを七日はそう言って片付けた。英語でも読めないのだが。
「あら、そうなの。じゃあ私一人でやるしかないね。ごちそうさま、私はしばらく研究するからまた食事を運んでね」
六日は残念そうに言って立ち上がり、本を持って部屋に戻り、また籠ってしまった。せっかく作ったのに全く手をつけられなかったパスタを七日は睨む。
六日が七日の読めないと言ったことを信じたのか、ただ諦めたのか、そんなこと七日にはわからないし、わかろうとも思わない。六日が夕食を残したところで何も思わない。次の日の昼食にして食べさせれば良いのだ。
それよりも気になるのは六日が言っていだ研究゙だった。化学の研究だとか歴史の研究だとかそういう類いではないことくらい七日でも簡単にわかる。まず間違いなく魔術の研究だろう。魔術に興味を持ち、それについて調べることは何の問題でもないし自由にすれば良いと七日も思うが、それを使われるのは地球の禁忌に触れる。偶然かもしれないが六日には前日や夕方の前科がある。七日もそろそろ黙って見ているだけでいることは出来なくなりそうだ。
「希望は持たない方が良いのかねぇ」
六日のパスタを冷蔵庫に入れながら七日はボソリと呟いた。
深夜、真夜中、家中の明かりが消えている時間。その真っ暗闇に七日は一人でリビングに出てきていた。喉が乾いたとか眠れないだとかトイレに行きたいとかそんな平和な理由ではない。ほとんど何も見えない中で手探りでダイニングテーブルまで歩き、そこに何も置かれていないことを確認すると七日は両手をつきそっと目を閉じた。
そして、もし六日がまだ起きていても気が付かれないように自分でも聞き取れないほど小声で明確な意志を持って呟いた。
「影ちゃん、私の分身ちゃん。探り記録し私に伝えよ。六日ねぇが何をしようとしているのか、その目的と手段を一つも溢さず私に見せよ」
七日が閉じていた目を開く。暗闇の中でも一際目立った闇が液体のようにテーブルの上に広がる。表情など無いのにも関わらずそれは笑っている気がする。それを見た七日も微笑んだ。そして、軽くテーブルをパシッと一回叩いて部屋に戻った。
「こんなこと、出来ればしたくなかったんだけどな」
部屋の扉をパタンと閉めて七日はモゾモゾと布団に潜り込み、後悔するように呟いた。数年前、若菜のせいで゙鍵゙がほんの少しだけ壊れて記憶の書庫と影の力、そして悪魔だという自覚を思い出すことになってしまった。そのせいで今こうして苦労しているのだと考えていると大好きな若菜すらも嫌いになってしまいそうだ。まあ、それに気づいてアノニムが遊びに来たことが一番腹立たしいことだったが。
そんなことを考えているうちに七日の意識は眠りに落ちた。
トスッ、ペチョ、トスッ、ペチョ
そんな音が七日を起こした。うっすらと目を明け、枕元の目覚まし時計を確認する。まだ五時の時計を睨むが寝起きの顔と対して変わっていない。
「影ちゃん、後にして。今日休みだしそうじゃないにしてもまだ早い」
そう言って七日は布団を頭まで被る。
「後にしてー」
変わらずトストス体当たりしてくる影に七日が払い除けるように手をパタパタとして言う。
それでも変わらない。相当急ぎのようだ。
「……何」
上半身を起こして七日は自分の影と向き合う。不機嫌そうに眉を顰めて音の無い影の声を聞く。
まあ、その報告は眠気が吹っ飛ぶものだった。
「……それ、さ、間違いなんじゃない? 頭がおかしいじゃ片付けられない、だから、あれ、もう一回調査お願いね」
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