炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
3節 希望的観測ってやつ
「……えっと、おねーちゃんっていつから厨二病だったっけ」
返す言葉に困った七日が視線を六日から気不味そうに逸らし、冗談混じりに言う。六日が冗談でも厨二病でもなく本気で言っていることなど七日が知らないわけもない。しかし、本気でいてもらっては困るのだ。
かつてこの地球に神がいて悪魔と呼ばれる者や魔女なんて呼ばれる者もいた。聖人と呼ばれる者は今もいるだろう。しかし、その言い伝えられている神や悪魔の大半は本物のカミサマ達によって設置された科学の世界を実現させるための指南役でしかない。
科学を発展させるため、ある者は魔術を使っただろう。しかし、それは到底人間には使うことができない代物だ。禁術として伝えられたものが多いだろう。
普通の人間には魔術を使うことなどできない。しかし、それを使うことのできた魔女や他の種族とされてしまった者は真偽や過程はどうであれ゙狩られだ。誰かが意図的に狩ったのか、偶然に必然に狩られたのか、そんなことは誰も知らない。魔に属するものは、魔術を断片的にでも使用する者は消されなければならない。それが常識であり、七日も知っている地球の掟であった。
「読んでいる本がね、読めないのよ。おかしな事を言っているというのはわかるのだけどね、読めないの。七日なら何か知ってるんじゃないかなぁと思いましてね」
箸を一度置いて六日がやけに真面目そうな顔で言う。七日は床まで落ちてしまった箸を拾うために床に手をつく。そこで重い何かが上に乗っかったかのように七日は上半身を起こすことができなくなった。
「七日の鍵は私が外してあげるから」
そう言って六日は夕飯が冷めないうちにと箸を進める。一口食べてまた一口、白米を口に運び続ける。
七日は重い負荷を掛けられてまともに動くことができなかった。ただ動けずに六日の言葉を耳に入れる。
「七日、ダメよ。出掛ける前と帰ってきた後にはきちんと確認しなくちゃ。気を付けなくちゃ椅子に何か細工されてても気がつきませんよ。ふふふ」
冷や汗がポタポタと垂れる七日に目もくれず六日は笑う。箸を置き、ゆっくりと立ち上がり、六日は七日に近づいた。そして、さっきまで七日が座っていた椅子をひっくり返して裏に書いた魔方陣を見せる。
「半信半疑ではいたのだけどねぇ、こんなに効くとは思わなかったわ。しばらくしたら戻るはずだから、じゃあごちそうさまです。また明日も一緒に食べましょうか」
クスクスと上品に笑いながら六日は言う。そして、そのまま夕飯を半分以上残して部屋に戻っていった。カチャリと音がして六日の部屋が完全に閉まる。去っていく六日は鼻唄混じりにご機嫌だった。
「……っ! これだから人間は……」
六日に万が一でも聞こえないようになのかが口の中で呻くように言う。別に人間が嫌いなわけでも憎んでいるわけでもないが、そんな言葉が口から出てしまったのだ。
六日が七日に見せた魔方陣は遥か昔、悪魔の魔力を奪うためにどこかの魔女が作ったものだった。意味をわかって使っているのかはわからないが、もしも理解しているのであれば問題だ。
「あぁー! もう! どうして人間は今も昔も何処でも悪魔にだけ当たりが強いんだよ! 天使だって害悪なんだからな! 天使用の魔方陣も作れっての!」
なんとかフラっと立ち上がった七日が魔方陣の書かれた椅子を何度も蹴りながら小声で叫ぶ。まだ魔女がいた時代、何度この魔方陣にかけられたか。何度天使の振りをしたアノニムに助けられたか。それを思い出すだけで腹が立つ。
どうしてこうもこの地球で作られる魔術ば意志゙が強いのだろうか。七日はいつもいつも頭を悩ませていた。悪魔の域を抜けた悪魔である七日にこんな魔術など意味は無い筈なのに地球でだけはかかってしまう。
どっかの罠好きの天使も地球の魔術を最近はよく使うと誰かが言っていた。地球の魔術の対象は暗示も含まれるからだ。例えば自称猫の人間に『猫が寝てしまう魔術』を使えば眠ってしまう、などだ。今は人間の少女として生まれ過ごしている七日も根では悪魔なのだ。
この魔術の意味を六日が理解しているとすれば、七日は悪魔か重度の厨二病だ。場合によっては七日はこの家にいることができなくなる。
「ま、希望的観測ってやつかな」
蹴って蹴って蹴りまくって気が済んだのか七日は軽く伸びをして今度は何も仕掛けがないことを確認した椅子に座った。箸を服の裾で汚れを軽く取り、また食べ始める。暗く後ろ向きに考えても何も良いことなんて無いことはこの長い記憶と経験でわかっている。
ただ目の前にある大量の食べ残しにはため息が出てしまうが。
小学校低学年程度しか食べないで成人女性がまともに生活できるのかと不安になるものだ。六日がまともな生活をおくっていない事を一番よく知っているのが七日なのだが。
「……ごちそうさまでした」
誰に言うでもない挨拶をボソリと呟くと七日は、寝ている間と明日の外出中に何か仕掛けられないようにと少しだけ対策をする。六日が言っていた七日の゙鍵゙を外されてはたまったものではない。
゙鍵゙は七日が人間として一生を終えるのに必要なものだ。記憶を管理する力が七日の生活を邪魔しないように、悪魔だと言う事実が生活に支障をきたさないように、コトが七日の命をある程度管理できるようにと付けられたものだ。
「影ちゃん、アノニム忙しいと思うから直接コトに伝えてね。鍵が壊れるかもしれないからサポートよろしくって」
自分の影に顔を近づけて七日は明るく言った。そして、何事もなかったかのように食器を片付け始めた。
返す言葉に困った七日が視線を六日から気不味そうに逸らし、冗談混じりに言う。六日が冗談でも厨二病でもなく本気で言っていることなど七日が知らないわけもない。しかし、本気でいてもらっては困るのだ。
かつてこの地球に神がいて悪魔と呼ばれる者や魔女なんて呼ばれる者もいた。聖人と呼ばれる者は今もいるだろう。しかし、その言い伝えられている神や悪魔の大半は本物のカミサマ達によって設置された科学の世界を実現させるための指南役でしかない。
科学を発展させるため、ある者は魔術を使っただろう。しかし、それは到底人間には使うことができない代物だ。禁術として伝えられたものが多いだろう。
普通の人間には魔術を使うことなどできない。しかし、それを使うことのできた魔女や他の種族とされてしまった者は真偽や過程はどうであれ゙狩られだ。誰かが意図的に狩ったのか、偶然に必然に狩られたのか、そんなことは誰も知らない。魔に属するものは、魔術を断片的にでも使用する者は消されなければならない。それが常識であり、七日も知っている地球の掟であった。
「読んでいる本がね、読めないのよ。おかしな事を言っているというのはわかるのだけどね、読めないの。七日なら何か知ってるんじゃないかなぁと思いましてね」
箸を一度置いて六日がやけに真面目そうな顔で言う。七日は床まで落ちてしまった箸を拾うために床に手をつく。そこで重い何かが上に乗っかったかのように七日は上半身を起こすことができなくなった。
「七日の鍵は私が外してあげるから」
そう言って六日は夕飯が冷めないうちにと箸を進める。一口食べてまた一口、白米を口に運び続ける。
七日は重い負荷を掛けられてまともに動くことができなかった。ただ動けずに六日の言葉を耳に入れる。
「七日、ダメよ。出掛ける前と帰ってきた後にはきちんと確認しなくちゃ。気を付けなくちゃ椅子に何か細工されてても気がつきませんよ。ふふふ」
冷や汗がポタポタと垂れる七日に目もくれず六日は笑う。箸を置き、ゆっくりと立ち上がり、六日は七日に近づいた。そして、さっきまで七日が座っていた椅子をひっくり返して裏に書いた魔方陣を見せる。
「半信半疑ではいたのだけどねぇ、こんなに効くとは思わなかったわ。しばらくしたら戻るはずだから、じゃあごちそうさまです。また明日も一緒に食べましょうか」
クスクスと上品に笑いながら六日は言う。そして、そのまま夕飯を半分以上残して部屋に戻っていった。カチャリと音がして六日の部屋が完全に閉まる。去っていく六日は鼻唄混じりにご機嫌だった。
「……っ! これだから人間は……」
六日に万が一でも聞こえないようになのかが口の中で呻くように言う。別に人間が嫌いなわけでも憎んでいるわけでもないが、そんな言葉が口から出てしまったのだ。
六日が七日に見せた魔方陣は遥か昔、悪魔の魔力を奪うためにどこかの魔女が作ったものだった。意味をわかって使っているのかはわからないが、もしも理解しているのであれば問題だ。
「あぁー! もう! どうして人間は今も昔も何処でも悪魔にだけ当たりが強いんだよ! 天使だって害悪なんだからな! 天使用の魔方陣も作れっての!」
なんとかフラっと立ち上がった七日が魔方陣の書かれた椅子を何度も蹴りながら小声で叫ぶ。まだ魔女がいた時代、何度この魔方陣にかけられたか。何度天使の振りをしたアノニムに助けられたか。それを思い出すだけで腹が立つ。
どうしてこうもこの地球で作られる魔術ば意志゙が強いのだろうか。七日はいつもいつも頭を悩ませていた。悪魔の域を抜けた悪魔である七日にこんな魔術など意味は無い筈なのに地球でだけはかかってしまう。
どっかの罠好きの天使も地球の魔術を最近はよく使うと誰かが言っていた。地球の魔術の対象は暗示も含まれるからだ。例えば自称猫の人間に『猫が寝てしまう魔術』を使えば眠ってしまう、などだ。今は人間の少女として生まれ過ごしている七日も根では悪魔なのだ。
この魔術の意味を六日が理解しているとすれば、七日は悪魔か重度の厨二病だ。場合によっては七日はこの家にいることができなくなる。
「ま、希望的観測ってやつかな」
蹴って蹴って蹴りまくって気が済んだのか七日は軽く伸びをして今度は何も仕掛けがないことを確認した椅子に座った。箸を服の裾で汚れを軽く取り、また食べ始める。暗く後ろ向きに考えても何も良いことなんて無いことはこの長い記憶と経験でわかっている。
ただ目の前にある大量の食べ残しにはため息が出てしまうが。
小学校低学年程度しか食べないで成人女性がまともに生活できるのかと不安になるものだ。六日がまともな生活をおくっていない事を一番よく知っているのが七日なのだが。
「……ごちそうさまでした」
誰に言うでもない挨拶をボソリと呟くと七日は、寝ている間と明日の外出中に何か仕掛けられないようにと少しだけ対策をする。六日が言っていた七日の゙鍵゙を外されてはたまったものではない。
゙鍵゙は七日が人間として一生を終えるのに必要なものだ。記憶を管理する力が七日の生活を邪魔しないように、悪魔だと言う事実が生活に支障をきたさないように、コトが七日の命をある程度管理できるようにと付けられたものだ。
「影ちゃん、アノニム忙しいと思うから直接コトに伝えてね。鍵が壊れるかもしれないからサポートよろしくって」
自分の影に顔を近づけて七日は明るく言った。そして、何事もなかったかのように食器を片付け始めた。
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