炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
32節 それだ馬鹿
「六日……どうしてあいつが出てくるんだ?」
アノニムが七日に尋ねた。言い間違えたのか、聞き間違えたのかを確認するような顔で絶対に信じないと言うように。
「良いから答えて!」
「ワカナが吸血気になった世界で二人は仲がよかった。それだけだが」
宮殿の廊下をコツコツコツと三人が速足で移動しながら七日がアノニムに強く言い、それに腹をたてたアノニムが反抗期の子供が親に言い訳をするように言う。コトはその間には入れないと言うように二人に腕を捕まれながらあたふたしている。
「……待って。あの体は吸血鬼なんだよね?」
アノニムの言葉に冷静になった七日が確認のために尋ねた。
「そうだが」
七日が何を考えているのかわからないアノニムは聞かれたことに答える。
「今日の天気は?」
「雲一つ無い晴天」
「今の時間は?」
「大体昼過ぎか」
「おかしくない?」
短い問答を数回繰り返してから七日は首を傾げながら言った。
「何がだ?」
「バカなの?」
七日の言っていることがアノニムにはよくわからないようだ。わからないから尋ねたら七日は呆れた顔で返してきた。
「あ?」
「吸血鬼なら何で今外にいて何も起きてないの? って聞いてるの、わかって」
何かがプツンと切れかけたが、どうにか持ちこたえてアノニムが顔を歪めて言う。七日はやけに冷静にアノニムに言った。
当然持つ疑問のはずだ。七日はここに留まり、神界で起きたことは何一つ知らないのだ。吸血鬼はその強大な力を持つ代わりに弱点が多い。それが七日にとっての常識でどの記憶を探っても偽りも何もないことだった。
「そりゃあ、平気になるように六日の力を少し切ってワカナに突っ込んだからな」
「それだ馬鹿! その力のせいで……っ!」
アノニムが不機嫌に態度悪く言うと、七日が叫んだ。その声は宮殿無いによく響き、何人か無事な天使と悪魔が三人のいる場所に顔を出した。
七日は集まってきたのを煩わしく思い、舌打ちをしてコトの手を離した。そして、歩いてきた方向に走り出した。
「お、おい、ナノカ! どこに行くんだ」
コトが七日に向けて叫んだ。
「ワカナのところ! おねーちゃんと話があるの!」
振り返ること無く七日は叫んで外まで飛び出した。青い空の下、赤く黒くもう面影もない森が広がっている。その中でワカナは楽しそうに舞うように浮かんでいた。
コウモリの羽を広げ、火の粉を散らし、日を背に黒く炭となった木々を眺めている。きっと耳には火に囲まれ、燃えている誰かの叫び声が届いているだろう。
「七日、どうしたんです?」
飛び出してきた七日に気がついてワカナが声をかけた。欲しかった玩具を与えられた子供のような無邪気な笑みをその顔に浮かべて。
「……ワカナに用はないよ。私はおねーちゃんに話があるの…………」
ワカナの笑顔の後ろに誰かを思い浮かべて七日は言葉が詰まらないように言う。
「……おねーちゃんですか。貴女の姉に当たる方は大勢いるはずですが」
「六日おねーちゃん、下手な演技はやめてよね。ワカナは私たちにとって必要な存在なの……。返して!」
笑顔を崩さずにワカナは答え、七日がそれに答える。かなり高い位置に浮かんでいるワカナはその笑顔の奥で試すように七日を見下ろす。
七日はワカナに近づき、わがままな妹のように言う。そして、下がろうとするワカナの腕を掴み、叫んだ。
「何でこんな事をするのか言え!」
その七日の言葉に答えるようにワカナは口を狂喜に歪めた。
アノニムが七日に尋ねた。言い間違えたのか、聞き間違えたのかを確認するような顔で絶対に信じないと言うように。
「良いから答えて!」
「ワカナが吸血気になった世界で二人は仲がよかった。それだけだが」
宮殿の廊下をコツコツコツと三人が速足で移動しながら七日がアノニムに強く言い、それに腹をたてたアノニムが反抗期の子供が親に言い訳をするように言う。コトはその間には入れないと言うように二人に腕を捕まれながらあたふたしている。
「……待って。あの体は吸血鬼なんだよね?」
アノニムの言葉に冷静になった七日が確認のために尋ねた。
「そうだが」
七日が何を考えているのかわからないアノニムは聞かれたことに答える。
「今日の天気は?」
「雲一つ無い晴天」
「今の時間は?」
「大体昼過ぎか」
「おかしくない?」
短い問答を数回繰り返してから七日は首を傾げながら言った。
「何がだ?」
「バカなの?」
七日の言っていることがアノニムにはよくわからないようだ。わからないから尋ねたら七日は呆れた顔で返してきた。
「あ?」
「吸血鬼なら何で今外にいて何も起きてないの? って聞いてるの、わかって」
何かがプツンと切れかけたが、どうにか持ちこたえてアノニムが顔を歪めて言う。七日はやけに冷静にアノニムに言った。
当然持つ疑問のはずだ。七日はここに留まり、神界で起きたことは何一つ知らないのだ。吸血鬼はその強大な力を持つ代わりに弱点が多い。それが七日にとっての常識でどの記憶を探っても偽りも何もないことだった。
「そりゃあ、平気になるように六日の力を少し切ってワカナに突っ込んだからな」
「それだ馬鹿! その力のせいで……っ!」
アノニムが不機嫌に態度悪く言うと、七日が叫んだ。その声は宮殿無いによく響き、何人か無事な天使と悪魔が三人のいる場所に顔を出した。
七日は集まってきたのを煩わしく思い、舌打ちをしてコトの手を離した。そして、歩いてきた方向に走り出した。
「お、おい、ナノカ! どこに行くんだ」
コトが七日に向けて叫んだ。
「ワカナのところ! おねーちゃんと話があるの!」
振り返ること無く七日は叫んで外まで飛び出した。青い空の下、赤く黒くもう面影もない森が広がっている。その中でワカナは楽しそうに舞うように浮かんでいた。
コウモリの羽を広げ、火の粉を散らし、日を背に黒く炭となった木々を眺めている。きっと耳には火に囲まれ、燃えている誰かの叫び声が届いているだろう。
「七日、どうしたんです?」
飛び出してきた七日に気がついてワカナが声をかけた。欲しかった玩具を与えられた子供のような無邪気な笑みをその顔に浮かべて。
「……ワカナに用はないよ。私はおねーちゃんに話があるの…………」
ワカナの笑顔の後ろに誰かを思い浮かべて七日は言葉が詰まらないように言う。
「……おねーちゃんですか。貴女の姉に当たる方は大勢いるはずですが」
「六日おねーちゃん、下手な演技はやめてよね。ワカナは私たちにとって必要な存在なの……。返して!」
笑顔を崩さずにワカナは答え、七日がそれに答える。かなり高い位置に浮かんでいるワカナはその笑顔の奥で試すように七日を見下ろす。
七日はワカナに近づき、わがままな妹のように言う。そして、下がろうとするワカナの腕を掴み、叫んだ。
「何でこんな事をするのか言え!」
その七日の言葉に答えるようにワカナは口を狂喜に歪めた。
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