炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
18節 もう一歩、もう一歩
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飛び起きた。
ドゴンッと何かが破裂する様な大きな音がし、ワカナは叩き起こされた。無意識のうちにカーテンも締め切って隣の部屋との仕切りがないことを除けば外の様子がまったくわからない部屋をワカナは見回す。
少し荒れてしまってはいるが、それは自分でやったことなのであの騒音は外から来たものだと気付いた。
「シアラ、シアラ。起きてます? 」
『起きるも何も眠ってないわ。おはよう、ワカナ』
ワカナが話しかけると、シアラが退屈そうな声で答えた。落ち着いていないワカナとは違い、かなり呑気な様子でシアラは言う。今にも欠伸が聞こえてきそうだ。
「あぁ、おはようございます。……じゃなくて、あの音何かわかりますか? 」
『あれほど大きな音はなかったけど、ワカナが寝た後から何度かあったわよ。どっかで殺し合いでもしてるんでしょ、関係ないわ』
「そうですか……それで、あれどうしましょう」
まだ耳に残っている感じがするあの音について起きていたならば何か知っているかもしれないとワカナが聞くと、シアラは本当に興味がないように答えた。ワカナはそんなシアラの態度にワカナが眉を寄せて不機嫌に言う。
壊れてしまった壁の破片を睨んでワカナはシアラにまた尋ねる。壊したときには何も思わなかったが、一眠りして見てみれば大変なことをしてしまったものだ。あんなものをあゆみに見られれば確実に怒られるではすまないだろう。
スタスタとワカナはどうにかならないかと壁の方へと向かった。
「……っ」
『こ、ここには入らない方がいいわね。少なくとも俺は嫌よ』
欠片だけでも拾おうとワカナが隣の部屋の床を踏むと、やはり強い寒気がした。この寒気に逆らってこれ以上奥に入り込めば、首から上が無くなってしまうのではないかと思えてしまう。
その場にいなくてもワカナと同じくらい、いや、それ以上に強くシアラはそう感じている。一人、誰からも見られない空間で首を押さえて冷や汗を流した。
『ねえ、何してるのよ』
ワカナは首を強く左右に振ってもう一歩進んだ。さらに強くなる嫌な予感にシアラがワカナを止めるように言う。
『ねえ! 聞いてるの』
もう一歩。
『ちょっと! 聞こえないはずないでしょ』
もう一歩。
『それ以上は行かせないわ』
もう一歩。近いはずなのに遠い誰かが眠るベッドに近づく。
『お願いだから止まって』
もう一歩。もう一歩。
『止まれ! 』
もう一歩。もう一歩。もう一歩。
『せめて何か言いなさいよ! 』
もうそこにある。
『ワカナ! 』
後三歩。
『ねぇ! 』
二歩。
『ねぇ』
一歩。
『……』
着いた。
シアラの声は泣きそうなものになり、最後には力がなくなっていった。
凍える。寒気のせいで指一本動かすことすらも出来なくなってしまったシアラが震えながらワカナがしていることをただ見ている。
ワカナの目の前に頭から布団を被った誰かが眠っている。生きてはいる。布団が上下していなければ死んでいるか何もいないときっと思っていただろう。何かがいる気配はあるようでない。
手が震える。恐怖か寒気か、布団を捲ろうとするワカナの手が小刻みに震える。
一度握りしめ、その震えを最小限に抑える。そして、深呼吸。肺に入ってくる空気すらも氷のように冷たい。
「……っ」
『……忠告、聞かないからよ……』
布団の下に眠る誰かの姿を見た。その時だ。
ワカナは自然と涙を流した。
つぅ、と頬を伝って首へと涙が落ちる。寒気はもうしない。
回復してきたのかシアラがざまあみろ、と言うように言った。
都麗菜。ワカナの姉が間違えるはずもないその姿でそこに眠っていた。
飛び起きた。
ドゴンッと何かが破裂する様な大きな音がし、ワカナは叩き起こされた。無意識のうちにカーテンも締め切って隣の部屋との仕切りがないことを除けば外の様子がまったくわからない部屋をワカナは見回す。
少し荒れてしまってはいるが、それは自分でやったことなのであの騒音は外から来たものだと気付いた。
「シアラ、シアラ。起きてます? 」
『起きるも何も眠ってないわ。おはよう、ワカナ』
ワカナが話しかけると、シアラが退屈そうな声で答えた。落ち着いていないワカナとは違い、かなり呑気な様子でシアラは言う。今にも欠伸が聞こえてきそうだ。
「あぁ、おはようございます。……じゃなくて、あの音何かわかりますか? 」
『あれほど大きな音はなかったけど、ワカナが寝た後から何度かあったわよ。どっかで殺し合いでもしてるんでしょ、関係ないわ』
「そうですか……それで、あれどうしましょう」
まだ耳に残っている感じがするあの音について起きていたならば何か知っているかもしれないとワカナが聞くと、シアラは本当に興味がないように答えた。ワカナはそんなシアラの態度にワカナが眉を寄せて不機嫌に言う。
壊れてしまった壁の破片を睨んでワカナはシアラにまた尋ねる。壊したときには何も思わなかったが、一眠りして見てみれば大変なことをしてしまったものだ。あんなものをあゆみに見られれば確実に怒られるではすまないだろう。
スタスタとワカナはどうにかならないかと壁の方へと向かった。
「……っ」
『こ、ここには入らない方がいいわね。少なくとも俺は嫌よ』
欠片だけでも拾おうとワカナが隣の部屋の床を踏むと、やはり強い寒気がした。この寒気に逆らってこれ以上奥に入り込めば、首から上が無くなってしまうのではないかと思えてしまう。
その場にいなくてもワカナと同じくらい、いや、それ以上に強くシアラはそう感じている。一人、誰からも見られない空間で首を押さえて冷や汗を流した。
『ねえ、何してるのよ』
ワカナは首を強く左右に振ってもう一歩進んだ。さらに強くなる嫌な予感にシアラがワカナを止めるように言う。
『ねえ! 聞いてるの』
もう一歩。
『ちょっと! 聞こえないはずないでしょ』
もう一歩。
『それ以上は行かせないわ』
もう一歩。近いはずなのに遠い誰かが眠るベッドに近づく。
『お願いだから止まって』
もう一歩。もう一歩。
『止まれ! 』
もう一歩。もう一歩。もう一歩。
『せめて何か言いなさいよ! 』
もうそこにある。
『ワカナ! 』
後三歩。
『ねぇ! 』
二歩。
『ねぇ』
一歩。
『……』
着いた。
シアラの声は泣きそうなものになり、最後には力がなくなっていった。
凍える。寒気のせいで指一本動かすことすらも出来なくなってしまったシアラが震えながらワカナがしていることをただ見ている。
ワカナの目の前に頭から布団を被った誰かが眠っている。生きてはいる。布団が上下していなければ死んでいるか何もいないときっと思っていただろう。何かがいる気配はあるようでない。
手が震える。恐怖か寒気か、布団を捲ろうとするワカナの手が小刻みに震える。
一度握りしめ、その震えを最小限に抑える。そして、深呼吸。肺に入ってくる空気すらも氷のように冷たい。
「……っ」
『……忠告、聞かないからよ……』
布団の下に眠る誰かの姿を見た。その時だ。
ワカナは自然と涙を流した。
つぅ、と頬を伝って首へと涙が落ちる。寒気はもうしない。
回復してきたのかシアラがざまあみろ、と言うように言った。
都麗菜。ワカナの姉が間違えるはずもないその姿でそこに眠っていた。
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