炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
12節 死んだら悲しい
黒と紅の少女らしいワンピースの袖を引っ張って脱ぎ捨てる。ご丁寧に下着までファンタジー調でまだ薄い白いワンピースを着ている気分だった。背中の羽を出しても服には被害が出そうにないのはありがたい。
「うぅ……寒いですね」
『白いワンピースでも似合うわよ。そんな色も着れば? たぶん俺役が持ってるから』
「あー、そーですね。しばらく黙っててください、私はこの天使と話をしますので」
シアラはワカナが話しかけたつもりもないのに勝手に答えたり話しかけてきたりするから電話は切りたいときに切れて便利だったなとワカナに思わせた。さすがにシアラを黙ったが、不満げな雰囲気は何故だか伝わってきた。
「良いですか、私の持つこの吸血鬼の羽は紫色に光るんです。悪魔のはこんなにしっかりとしていないでしょう? わかったらもう二度と間違えんなよ」
倒れている天使に羽を広げて見せてみる。よく見えないかなと思い、天使の頭を掴んで羽に近づけて見るが、反応がなくてうっかり言葉遣いが悪くなってしまった。誰がなんと言おうとうっかりだ。シアラが何か言いたげだがうっかりだ。
「聞いてます? 起きてます? 生きてます? ……死んでんな」
『生きてるわよ。息してるから、気を失ってるだけ。でも放置してたら寒いし死ぬでしょうけどね。それと、言葉遣い悪くない? 』
反応が全くない天使にワカナが天使の頭を掴んだまま上げ下げしたり叩いたりしながら尋ねた。どちらかと言えば暑い方が大嫌いだが、寒くてイライラし始めたワカナが死んでることにして放り投げようとすると、シアラがツッコミを入れた。
黙っていた短時間で思っていたことをズバズバとシアラは言っていく。口を尖らせながらワカナはそれを聞き流した。
「私のことは放っておいてください。さて、これ連れて帰りますか」
『それが良いわ。殺すなって言われてるし、死なれたらまずいものね』
そう言ってワカナはその天使を担いだ。
『ちょっと、服は? 』
「あー、忘れてました。今から着ても汚れてますし、捨てたくないですし……」
『持って帰れば? 』
「そうですね」
ワカナは右腕で天使を抱えるように担ぎ、余った左手で脱ぎ捨てた服を拾って歩いてきた道を戻った。
『あれ? 戻ったらイツカがいたわよね? いいの? その格好で』
「どうでもいいです。汚れた服を着るなんて嫌ですし」
シアラの言葉にワカナは興味無さげに冷たく細めた目で答えた。地面に落としてどうせ土が付いた服を睨んで触るのも躊躇いたくなった。
『手袋はいいの? 汚れるわよ』
「手袋はお姉ちゃんに言われて付けているだけなので。殴り合いとかするなら素手の方が好みですよ」
目に入った白い手袋のことをシアラは尋ねた。ワカナは左の手袋を睨むように見てから返す。さっきも誰かに危害を加えるのなら手袋を外してしまえば良かったと少しだけ後悔しながら。
『……何で手袋つけてるの? 』
「答える必要はありません」
『ただ歩いてるのも暇でしょ? 俺も暇だし』
見える景色は暗い森ばかり。聞こえる音も土を踏むワカナの足音と風が葉を揺らす音だけ。ワカナも多少は退屈だと思い始めていたので話すことにした。
「私が喧嘩ばかりしていた頃、何かあったそうなんです。相手を殺しかけでもしたんでしょうかね。そのときにお姉ちゃんに言われたんです。若菜が死んだらお姉ちゃん悲しい、って。先に死んだのはあっちなんですけどね」
麗菜が死んだ報告を六日にされたときのことを思い出したのかワカナは少し潤んだ目を固く瞑ってからパット目を開いた。
「私記憶力はそこまで良くないのでお姉ちゃんが忘れないようにって私にリボンを結んで手袋をつけたんです。言葉遣いも相手に敬意を持てるようにって変えて……もう良いですよね」
思出話なんてしていたら何だか泣きたくなってしまう。気持ちと視線が下向きになってきたことに気がついたワカナは顔をあげてシアラに言った。うっすらと明かりが見えてきてもう目的地は近いと思い直すと、ワカナはグッと足に力を入れて歩いた。
『良いわ。バレたら困るし、俺は黙ってるわね』
そうしてくれると、とても助かる。最初から黙っててくれれば良いのにとワカナはシアラに伝えるように心で強く思って森を出た。少し開けた場所にあるから見つけやすくて助かるものだ。
「ただいま戻りました」
右手で扉を開けることができないことに少し戸惑いながら左手で取っ手を握り、ワカナは中にいるあゆみと五日にそう伝えた。
「うぅ……寒いですね」
『白いワンピースでも似合うわよ。そんな色も着れば? たぶん俺役が持ってるから』
「あー、そーですね。しばらく黙っててください、私はこの天使と話をしますので」
シアラはワカナが話しかけたつもりもないのに勝手に答えたり話しかけてきたりするから電話は切りたいときに切れて便利だったなとワカナに思わせた。さすがにシアラを黙ったが、不満げな雰囲気は何故だか伝わってきた。
「良いですか、私の持つこの吸血鬼の羽は紫色に光るんです。悪魔のはこんなにしっかりとしていないでしょう? わかったらもう二度と間違えんなよ」
倒れている天使に羽を広げて見せてみる。よく見えないかなと思い、天使の頭を掴んで羽に近づけて見るが、反応がなくてうっかり言葉遣いが悪くなってしまった。誰がなんと言おうとうっかりだ。シアラが何か言いたげだがうっかりだ。
「聞いてます? 起きてます? 生きてます? ……死んでんな」
『生きてるわよ。息してるから、気を失ってるだけ。でも放置してたら寒いし死ぬでしょうけどね。それと、言葉遣い悪くない? 』
反応が全くない天使にワカナが天使の頭を掴んだまま上げ下げしたり叩いたりしながら尋ねた。どちらかと言えば暑い方が大嫌いだが、寒くてイライラし始めたワカナが死んでることにして放り投げようとすると、シアラがツッコミを入れた。
黙っていた短時間で思っていたことをズバズバとシアラは言っていく。口を尖らせながらワカナはそれを聞き流した。
「私のことは放っておいてください。さて、これ連れて帰りますか」
『それが良いわ。殺すなって言われてるし、死なれたらまずいものね』
そう言ってワカナはその天使を担いだ。
『ちょっと、服は? 』
「あー、忘れてました。今から着ても汚れてますし、捨てたくないですし……」
『持って帰れば? 』
「そうですね」
ワカナは右腕で天使を抱えるように担ぎ、余った左手で脱ぎ捨てた服を拾って歩いてきた道を戻った。
『あれ? 戻ったらイツカがいたわよね? いいの? その格好で』
「どうでもいいです。汚れた服を着るなんて嫌ですし」
シアラの言葉にワカナは興味無さげに冷たく細めた目で答えた。地面に落としてどうせ土が付いた服を睨んで触るのも躊躇いたくなった。
『手袋はいいの? 汚れるわよ』
「手袋はお姉ちゃんに言われて付けているだけなので。殴り合いとかするなら素手の方が好みですよ」
目に入った白い手袋のことをシアラは尋ねた。ワカナは左の手袋を睨むように見てから返す。さっきも誰かに危害を加えるのなら手袋を外してしまえば良かったと少しだけ後悔しながら。
『……何で手袋つけてるの? 』
「答える必要はありません」
『ただ歩いてるのも暇でしょ? 俺も暇だし』
見える景色は暗い森ばかり。聞こえる音も土を踏むワカナの足音と風が葉を揺らす音だけ。ワカナも多少は退屈だと思い始めていたので話すことにした。
「私が喧嘩ばかりしていた頃、何かあったそうなんです。相手を殺しかけでもしたんでしょうかね。そのときにお姉ちゃんに言われたんです。若菜が死んだらお姉ちゃん悲しい、って。先に死んだのはあっちなんですけどね」
麗菜が死んだ報告を六日にされたときのことを思い出したのかワカナは少し潤んだ目を固く瞑ってからパット目を開いた。
「私記憶力はそこまで良くないのでお姉ちゃんが忘れないようにって私にリボンを結んで手袋をつけたんです。言葉遣いも相手に敬意を持てるようにって変えて……もう良いですよね」
思出話なんてしていたら何だか泣きたくなってしまう。気持ちと視線が下向きになってきたことに気がついたワカナは顔をあげてシアラに言った。うっすらと明かりが見えてきてもう目的地は近いと思い直すと、ワカナはグッと足に力を入れて歩いた。
『良いわ。バレたら困るし、俺は黙ってるわね』
そうしてくれると、とても助かる。最初から黙っててくれれば良いのにとワカナはシアラに伝えるように心で強く思って森を出た。少し開けた場所にあるから見つけやすくて助かるものだ。
「ただいま戻りました」
右手で扉を開けることができないことに少し戸惑いながら左手で取っ手を握り、ワカナは中にいるあゆみと五日にそう伝えた。
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