炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
11節 片目でいい
外に出るとそこには黒い森が広がっている。さっきまでもいたのだからワカナもそれはわかっていたが、気味が悪い。木や草の陰から何かが飛び出してきたとしても何の不思議もない。
『ありえないわ。あんなのが俺だなんて信じられないわ! ワカナもそう思うでしょ』
「さっきから煩いですよ、バレたらどうするんですか」
どこかで怒りに叫ぶ声がする。その声にワカナが小さく言い返す。
『俺の声はワカナにしか聞こえないんだから良いじゃないの。俺たちは同じものを聞いて同じものを見てるのよ? 』
「私にはシアラが見てる景色も聞いているものもわかりませんけどね」
声の主はシアラだ。神界の一部屋に籠ってイロクを作っているシアラだ。
▼▼
「目をちょうだい、片目でいいわ」
アノニムが出ていったあの部屋でシアラはワカナに言った。優しい笑みを浮かべてワカナの顔を優しく撫でながら。
「何故ですか? いきなりそう言われても困ります」
当然の反応だ。
「そうね。簡単に言えば俺の目を片方あげるからその目で見た景色を俺にも見せて。会話もできるようにしてあげるし、困ったときに助けてあげるわ」
シアラは自分の左目を手で覆い隠しながら言った。何処かに何かを置いてきた、そんな後悔の笑みを浮かべて。幸せそうに跳ねる声で。
「……」
「そんな怖い顔しないで。でも、俺はわがままだから拒否は許してあげない」
信じられないと言うようにワカナは警戒に目を細めた。そのワカナにシアラは近づき、残った右手でワカナの左手を抑えた。
痛みはない。それでも脳をかき混ぜられる様な気分が悪くなる違和感がある。
「ありがとう。じゃあ、この事は内緒よ」
違和感がなくなり、ワカナがシアラの方を見ると、シアラはそう言ってワカナの肩を押して部屋から追い出した。
追い出されたワカナは左目を押さえたが、その手は視界に映らなかった。
『じゃ、お願いね』
どこからか聞こえてくるシアラの言葉にワカナは、なるほど、と納得した。
▲▲
『……もしかして、怒ってる? 』
「そう見えるのならそうなんじゃないですか? 」
『じゃあ怒ってるわね。それより、今ワカナに脱落されると困るわ。俺の言ってる意味、わかるでしょ? 』
そう言ってシアラはワカナに周囲を見させた。暗くて何も見えないが、さっきであった二人ではない誰かが遠くからワカナのことを見ていることはわかる。
気がつかなかった振りをしてワカナは座り、わざと油断する。それに気がついた誰かはワカナに襲いかかる。十数メートル離れていたのにすぐワカナの視界に捉えられる場所まで迫った。
それを無言で焼き払う。殺すなと言われていたから死なない程度に。
「野生の動物かと思いましたが、天使ですか」
全身を焦がされて動けなくなり、転がった天使にワカナが言う。焼きが甘かったのか天使はワカナに返した。
「何故……殺さなかった……。…………悪魔の癖に」
「悪魔ではなく吸血鬼です。さっき悪魔を見ましたが、私の羽と悪魔の羽は作りが違いますよ。間違えないでください」
優しく冷たくワカナは言い、自分の羽を見せようとしてピタッと止まった。
『心配はいらない、俺が保証する』
「……違いますよ、私服の替えがないので破けません」
服の背中は羽がある辺りも布で覆われていた。その羽を出して飛ぼうとしたりすればこの服は使いものにならないだろう。姿も何もかもが変わらないということは間違いなく服は破れる。前は替えがあったから問題なかったが、今はない。
『破けるのが嫌なら脱げば? 俺ならそうする』
「あー、その手がありますね。寒そうですけど」
『ありえないわ。あんなのが俺だなんて信じられないわ! ワカナもそう思うでしょ』
「さっきから煩いですよ、バレたらどうするんですか」
どこかで怒りに叫ぶ声がする。その声にワカナが小さく言い返す。
『俺の声はワカナにしか聞こえないんだから良いじゃないの。俺たちは同じものを聞いて同じものを見てるのよ? 』
「私にはシアラが見てる景色も聞いているものもわかりませんけどね」
声の主はシアラだ。神界の一部屋に籠ってイロクを作っているシアラだ。
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「目をちょうだい、片目でいいわ」
アノニムが出ていったあの部屋でシアラはワカナに言った。優しい笑みを浮かべてワカナの顔を優しく撫でながら。
「何故ですか? いきなりそう言われても困ります」
当然の反応だ。
「そうね。簡単に言えば俺の目を片方あげるからその目で見た景色を俺にも見せて。会話もできるようにしてあげるし、困ったときに助けてあげるわ」
シアラは自分の左目を手で覆い隠しながら言った。何処かに何かを置いてきた、そんな後悔の笑みを浮かべて。幸せそうに跳ねる声で。
「……」
「そんな怖い顔しないで。でも、俺はわがままだから拒否は許してあげない」
信じられないと言うようにワカナは警戒に目を細めた。そのワカナにシアラは近づき、残った右手でワカナの左手を抑えた。
痛みはない。それでも脳をかき混ぜられる様な気分が悪くなる違和感がある。
「ありがとう。じゃあ、この事は内緒よ」
違和感がなくなり、ワカナがシアラの方を見ると、シアラはそう言ってワカナの肩を押して部屋から追い出した。
追い出されたワカナは左目を押さえたが、その手は視界に映らなかった。
『じゃ、お願いね』
どこからか聞こえてくるシアラの言葉にワカナは、なるほど、と納得した。
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『……もしかして、怒ってる? 』
「そう見えるのならそうなんじゃないですか? 」
『じゃあ怒ってるわね。それより、今ワカナに脱落されると困るわ。俺の言ってる意味、わかるでしょ? 』
そう言ってシアラはワカナに周囲を見させた。暗くて何も見えないが、さっきであった二人ではない誰かが遠くからワカナのことを見ていることはわかる。
気がつかなかった振りをしてワカナは座り、わざと油断する。それに気がついた誰かはワカナに襲いかかる。十数メートル離れていたのにすぐワカナの視界に捉えられる場所まで迫った。
それを無言で焼き払う。殺すなと言われていたから死なない程度に。
「野生の動物かと思いましたが、天使ですか」
全身を焦がされて動けなくなり、転がった天使にワカナが言う。焼きが甘かったのか天使はワカナに返した。
「何故……殺さなかった……。…………悪魔の癖に」
「悪魔ではなく吸血鬼です。さっき悪魔を見ましたが、私の羽と悪魔の羽は作りが違いますよ。間違えないでください」
優しく冷たくワカナは言い、自分の羽を見せようとしてピタッと止まった。
『心配はいらない、俺が保証する』
「……違いますよ、私服の替えがないので破けません」
服の背中は羽がある辺りも布で覆われていた。その羽を出して飛ぼうとしたりすればこの服は使いものにならないだろう。姿も何もかもが変わらないということは間違いなく服は破れる。前は替えがあったから問題なかったが、今はない。
『破けるのが嫌なら脱げば? 俺ならそうする』
「あー、その手がありますね。寒そうですけど」
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