炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
7節 知らないくらい昔のこと
「はぁ、これは私たちが知らないくらい昔のことなんだがな……」
深く一度ため息をつき、アノニムはワカナを見ながら話し始めた。
昔々、大昔のことだ。まだ神界にシアラが来たばかりの頃のことだ。創造神かつこの場では絶対神だったミコトがシアラを消滅前にこの場に呼んだことを破壊神かつミコトに作られた神であるコトが怒り、ミコトが眠っている間に消そうとしたことが始まりだった。
ミコトのコピーのような存在だとしてもコトとミコトの力は全く同じではない。しかし、コトはミコトを消すことはできなかったが、力の一部を奪うことができ、二人の力が均等になった……。
けれど、完璧で完全だったはずのミコトは一つだけ欠けた。コトがミコトの消滅を失敗したことによって融合し、分裂した二人の力のせいで同時に存在することができなくなった。それを知った二人は自分の力を使い、不便がないように尽くしたが、やはり不便ではあった。
しばらくしてコトはヒトミに堕とされ、自分に襲いかかる抗いきれない眠気だけが相手が起きるヒントだった。コトが何かを企んでいることを知ると、ミコトはこれを利用してできるだけ眠らないようにヒトミやアノニムと計画を話していた。
「ってことだ。ワカナにはその事を消すために動いてほしい」
ミコトもヒトミもズィミアも全く手伝おうという顔をせず、ただミコトだけは少し眠たそうにアノニムの長々とした説明を聞いていた。ワカナの顔を見てアノニムは何となく微笑むように説明していたが、終わると三人を順番に睨み、疲れたようにわざとらしく大きなため息をついた。
それを、ははは、と受け流したヒトミの前でワカナが驚いているような悩んでいるような顔をしながらミコトから半強制的に手渡されたクッキーを口に運んでいた。
「何か不明な点でもありましたか? 僕が言うのもアレですが、アノニムの説明はほぼ完璧と言っても何も問題のない出来でしたけど……? 」
ズィミアもワカナの様子を確認すると、そのままワカナに尋ねた。
「いえ、ただミコトとコトって名前が似てるなと思っただけです」
「あぁ~」
「確かにな……」
「アノニム、説明してやるのだ」
ワカナの問いにヒトミとズィミアが納得しているのに対し、ミコトだけは不機嫌を隠すことのない顔を浮かべて後ろにいるアノニムに目も向けずに言った。
「あーれは言っちゃいけないよ、ワカナ。もう覚えてないけど何処かの世界で神を表す言葉が『コト』だったんだ。それでコトがそう呼ばれて、副、という意味を持つ『ミ』を付けてミコトってわけだ。他に呼ぶ名前がないからこう呼んでいるが、この話するとミコトがこんな風に怒るぞ~」
ワカナが納得しながらアノニムが指差すミコトの顔を見ると、細めの糸一本で理性を保っているような顔をして眉をピクピクとさせていた。ワカナも口から苦笑いが漏れだし、もう聞かないことを心に決めた。
「そういうことなのだ。もう気になることはないな、話を進めてあげるのだ」
ワカナが聞いたことのない程冷たく作業的なミコトの声も他の三人にはいつものことらしく、全く気にしない様子で相槌を打ったりしていた。
「そうねぇ。正直ワカナに頼み込めばそれで終わる気がするわ」
「僕もヒトミと同じ意見です。当然ですが」
「ということで、ミコト、頼んだ」
四人だけで話が進んでいると疎外感を感じながらワカナがいじけていると、隣でガタッと大きな音がした。
「何故我がやらねばならないのだ! 」
「神様だから……? 」
怒って言うミコトにヒトミがクッキーを喉に詰まらせながら答えた。ヒトミは他に理由が浮かばなかったのか言った自分でも思わず笑いそうになる程呆れた理由を言いながら、にへっ、と口元を緩めた。
「ヒトミも名目上は神なのだ。ヒトミがやるのだ」
「力はないし時々洗脳されちゃうから私には無理ね。私のコピーのアノニムに頼めば? 」
「ははは、残念だったなヒトミ。それならそのコピーを作ったズィミアに頼むんだな」
「お断りします。何の力もない僕よりやはりミコトがやるべきでしょう」
責任を押し付け合うように四人がワカナに何かを頼む役を回し続けているようだった。ワカナの疎外感はますます進み、いじけも段々と大きくなっていった。
そして、切れた。
「お前らなァ、いい加減にしろよ? 私は誰でも良いから説明を求めます。仲間はずれはやめろなァ? 」
机を膝で蹴りあげるように勢いよく立ち上がったワカナが口の中だけで話をするようにモゴモゴとした生暖かいトーンで言った。そう言われたのにヒトミは何故か感心した様子で手を叩き、それにつられるようにミコトも同じように手を叩いた。
「ようやく敬語を少しだけ捨てたわね」
「素がそっちとは聞いていたのだが、実際に見ると迫力あるのだ」
ワカナは何を言われたか一瞬理解に苦しんでいたが、自分が今言ったことを理解し、口を押さえて恥ずかしそうに座った。
「……こっち見てないで早く何か頼むなら頼んでください」
ワカナは早口になって声も小さかったが、ズィミアは微笑ましそうにその様子を見ていた。
深く一度ため息をつき、アノニムはワカナを見ながら話し始めた。
昔々、大昔のことだ。まだ神界にシアラが来たばかりの頃のことだ。創造神かつこの場では絶対神だったミコトがシアラを消滅前にこの場に呼んだことを破壊神かつミコトに作られた神であるコトが怒り、ミコトが眠っている間に消そうとしたことが始まりだった。
ミコトのコピーのような存在だとしてもコトとミコトの力は全く同じではない。しかし、コトはミコトを消すことはできなかったが、力の一部を奪うことができ、二人の力が均等になった……。
けれど、完璧で完全だったはずのミコトは一つだけ欠けた。コトがミコトの消滅を失敗したことによって融合し、分裂した二人の力のせいで同時に存在することができなくなった。それを知った二人は自分の力を使い、不便がないように尽くしたが、やはり不便ではあった。
しばらくしてコトはヒトミに堕とされ、自分に襲いかかる抗いきれない眠気だけが相手が起きるヒントだった。コトが何かを企んでいることを知ると、ミコトはこれを利用してできるだけ眠らないようにヒトミやアノニムと計画を話していた。
「ってことだ。ワカナにはその事を消すために動いてほしい」
ミコトもヒトミもズィミアも全く手伝おうという顔をせず、ただミコトだけは少し眠たそうにアノニムの長々とした説明を聞いていた。ワカナの顔を見てアノニムは何となく微笑むように説明していたが、終わると三人を順番に睨み、疲れたようにわざとらしく大きなため息をついた。
それを、ははは、と受け流したヒトミの前でワカナが驚いているような悩んでいるような顔をしながらミコトから半強制的に手渡されたクッキーを口に運んでいた。
「何か不明な点でもありましたか? 僕が言うのもアレですが、アノニムの説明はほぼ完璧と言っても何も問題のない出来でしたけど……? 」
ズィミアもワカナの様子を確認すると、そのままワカナに尋ねた。
「いえ、ただミコトとコトって名前が似てるなと思っただけです」
「あぁ~」
「確かにな……」
「アノニム、説明してやるのだ」
ワカナの問いにヒトミとズィミアが納得しているのに対し、ミコトだけは不機嫌を隠すことのない顔を浮かべて後ろにいるアノニムに目も向けずに言った。
「あーれは言っちゃいけないよ、ワカナ。もう覚えてないけど何処かの世界で神を表す言葉が『コト』だったんだ。それでコトがそう呼ばれて、副、という意味を持つ『ミ』を付けてミコトってわけだ。他に呼ぶ名前がないからこう呼んでいるが、この話するとミコトがこんな風に怒るぞ~」
ワカナが納得しながらアノニムが指差すミコトの顔を見ると、細めの糸一本で理性を保っているような顔をして眉をピクピクとさせていた。ワカナも口から苦笑いが漏れだし、もう聞かないことを心に決めた。
「そういうことなのだ。もう気になることはないな、話を進めてあげるのだ」
ワカナが聞いたことのない程冷たく作業的なミコトの声も他の三人にはいつものことらしく、全く気にしない様子で相槌を打ったりしていた。
「そうねぇ。正直ワカナに頼み込めばそれで終わる気がするわ」
「僕もヒトミと同じ意見です。当然ですが」
「ということで、ミコト、頼んだ」
四人だけで話が進んでいると疎外感を感じながらワカナがいじけていると、隣でガタッと大きな音がした。
「何故我がやらねばならないのだ! 」
「神様だから……? 」
怒って言うミコトにヒトミがクッキーを喉に詰まらせながら答えた。ヒトミは他に理由が浮かばなかったのか言った自分でも思わず笑いそうになる程呆れた理由を言いながら、にへっ、と口元を緩めた。
「ヒトミも名目上は神なのだ。ヒトミがやるのだ」
「力はないし時々洗脳されちゃうから私には無理ね。私のコピーのアノニムに頼めば? 」
「ははは、残念だったなヒトミ。それならそのコピーを作ったズィミアに頼むんだな」
「お断りします。何の力もない僕よりやはりミコトがやるべきでしょう」
責任を押し付け合うように四人がワカナに何かを頼む役を回し続けているようだった。ワカナの疎外感はますます進み、いじけも段々と大きくなっていった。
そして、切れた。
「お前らなァ、いい加減にしろよ? 私は誰でも良いから説明を求めます。仲間はずれはやめろなァ? 」
机を膝で蹴りあげるように勢いよく立ち上がったワカナが口の中だけで話をするようにモゴモゴとした生暖かいトーンで言った。そう言われたのにヒトミは何故か感心した様子で手を叩き、それにつられるようにミコトも同じように手を叩いた。
「ようやく敬語を少しだけ捨てたわね」
「素がそっちとは聞いていたのだが、実際に見ると迫力あるのだ」
ワカナは何を言われたか一瞬理解に苦しんでいたが、自分が今言ったことを理解し、口を押さえて恥ずかしそうに座った。
「……こっち見てないで早く何か頼むなら頼んでください」
ワカナは早口になって声も小さかったが、ズィミアは微笑ましそうにその様子を見ていた。
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