炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
3節 シアラの部屋
「こっちよ」
シアラはワカナを中に入れてアノニムを招き入れると、ミコトが入れないように扉を閉めて言った。
「貴女ももう起き上がれるでしょ? 自分で歩いてちょうだい」
喉を押さえてゴロゴロ転がるワカナにシアラが言った。そう言われるとワカナがスッと立ち上がり、シアラを睨んだ。
「痛いことには代わりありませんよ。貴女が引き摺ったので頭も痛いですし……」
今度は喉ではなく後頭部を擦りながら嫌味のようにワカナは言った。
「……そうなの。で、名前は? 」
興味無さげに聞き流してからシアラはワカナに尋ねた。
「……えーと……あ、若菜です」
「ワカナ、ねぇ~。ふ~ん」
シアラは値踏みをするようにワカナの頭から足の先までじっくり三回くらい見て答えた。聞いていたよりは小さいなと思ったけれど、それは命の危険を感じて言わないようにした。死なないが。
「この吸血鬼さぁ、聞いてたより弱くない? 」
シアラがワカナを指差しながらアノニムに言った。聞いてた話ではワカナが怒れば神界すらも危険な状態になるはずなのに現状シアラに簡単に止められている。不思議だ。
「そうだな。私も思うぞ」
アノニムもシアラの意見に賛成して二人でワカナのことをじっと見た。腕を縛られ、大人しくしているワカナに暴れても良いと言うように見た。
「……あー、そうですね。面倒ですけどこのくらいならしてあげますよ」
そう言うとワカナは、腕に巻かれた白い布を黒く腐らせ、ボロボロと崩した。
「へー、どうやったのよ。焼いたの? 」
「いえ、呪いました」
落ちた黒い布だったものを持ってシアラは興味津々に尋ねた。そして、ワカナは考えることなく答えた。
「で、何を代償にどう呪ったんだ? 」
「え、えーと……とりあえず外したかっただけなのでよく考えてませんでしたね」
ワカナが普通に首を傾けながら答えると、シアラは「は? 」と言うように口を開けたまま何も言わずに止まってしまった。それを見た何かを企んでいたのであろうアノニムがニヤニヤしながらワカナの肩に手をおいてシアラに言った。
「わかったか。ワカナはこういうやつだ。さっきもっとすごいのもやっていたが、これだけでもわかるよな? 」
「……」
まるで自分の事のようにアノニムはシアラに自慢した。それに腹を立てたのかシアラは無表情に戻し、部屋の奥の方に歩き始めた。
「何の話ですか? 」
「あとでわかる」
それを見てワカナが不思議そうにアノニムを見て尋ねたが、詳しくは答えなかった。
「ここ。ここからが俺の部屋よ。出来るだけ罠に引っ掛からないようにしてね。戻すの大変なんだから」
初めは不機嫌そうに案内しようとしていたが、最後は何故か笑っていた。ワカナやアノニムが罠に掛かるのが楽しみなのだろう。それは何となくだがワカナにも伝わった。
「じゃあ、お邪魔しま……した」
「入らないのか? 」
「隠す気のない罠が散乱している所を見る限り隠す気のある罠はもっと多いと思うので入りたくないです」
笑いそうになっているアノニムが部屋に入れかけた足を後ろに戻したワカナに尋ねると、ワカナは早口で答えた。白い壁に四方を囲まれ、黒い天井と床の部屋の中にはただ放置されているネズミ取りや触れたら焼かれてしまうだろうセンサーなど分かりやすい罠が多く設置されていた。しかし、シアラはその中をすいすいと迷い無く進んでいった。
「俺みたいに避ければ問題ないわ」
「私はこの部屋に入るとき死ぬ覚悟だけど……痛」
ニコニコと言うシアラとそっと部屋に入るアノニム。アノニムがちょうど足を置いたところに矢が降ってきて足の甲に穴が開いた。
「気を付けないとダメじゃない。あ、そこ落ちるわよ」
からかうようにシアラが注意した。そして、アノニムがまた一歩進んだとき、シアラの言う通りガクンと落ちた。
「もっと早く言え」
「わ~大変そうですね」
穴が開き、落ちていったアノニムをその上から覗き込むようにしてワカナが言った。
「……何で無傷なんだよ」
「掛かっても当たる前に避けたりすれば良いと気付いたので」
嫌味のように言うアノニムに頬に指を当てて少し考えたワカナが答えた。シアラは信じられないと言う顔をして目を瞑っていた。これ以上見たくないらしい。
「念のため言っておくぞ。普通はミコト以外出来ない」
穴を這い上がりながらアノニムはワカナの赤い目を睨むように見て言った。
アノニムが穴から完全に出ると、元の黒い床に戻った。もう触っても何も起きない。その様子を片目だけ開けたシアラが満足そうに見ていた。
「いつまでそうしてるつもりですか。私は貴女に用事があるんですよ」
シアラの目の前まで着いたワカナがシアラの顔を覗き込んで言った。シアラはその声を聞くと、パチッと目を開いてすぐ近くにワカナとアノニムがいることを確認した。
「アノニムが二回だけね。わかったわ」
シアラはワカナを中に入れてアノニムを招き入れると、ミコトが入れないように扉を閉めて言った。
「貴女ももう起き上がれるでしょ? 自分で歩いてちょうだい」
喉を押さえてゴロゴロ転がるワカナにシアラが言った。そう言われるとワカナがスッと立ち上がり、シアラを睨んだ。
「痛いことには代わりありませんよ。貴女が引き摺ったので頭も痛いですし……」
今度は喉ではなく後頭部を擦りながら嫌味のようにワカナは言った。
「……そうなの。で、名前は? 」
興味無さげに聞き流してからシアラはワカナに尋ねた。
「……えーと……あ、若菜です」
「ワカナ、ねぇ~。ふ~ん」
シアラは値踏みをするようにワカナの頭から足の先までじっくり三回くらい見て答えた。聞いていたよりは小さいなと思ったけれど、それは命の危険を感じて言わないようにした。死なないが。
「この吸血鬼さぁ、聞いてたより弱くない? 」
シアラがワカナを指差しながらアノニムに言った。聞いてた話ではワカナが怒れば神界すらも危険な状態になるはずなのに現状シアラに簡単に止められている。不思議だ。
「そうだな。私も思うぞ」
アノニムもシアラの意見に賛成して二人でワカナのことをじっと見た。腕を縛られ、大人しくしているワカナに暴れても良いと言うように見た。
「……あー、そうですね。面倒ですけどこのくらいならしてあげますよ」
そう言うとワカナは、腕に巻かれた白い布を黒く腐らせ、ボロボロと崩した。
「へー、どうやったのよ。焼いたの? 」
「いえ、呪いました」
落ちた黒い布だったものを持ってシアラは興味津々に尋ねた。そして、ワカナは考えることなく答えた。
「で、何を代償にどう呪ったんだ? 」
「え、えーと……とりあえず外したかっただけなのでよく考えてませんでしたね」
ワカナが普通に首を傾けながら答えると、シアラは「は? 」と言うように口を開けたまま何も言わずに止まってしまった。それを見た何かを企んでいたのであろうアノニムがニヤニヤしながらワカナの肩に手をおいてシアラに言った。
「わかったか。ワカナはこういうやつだ。さっきもっとすごいのもやっていたが、これだけでもわかるよな? 」
「……」
まるで自分の事のようにアノニムはシアラに自慢した。それに腹を立てたのかシアラは無表情に戻し、部屋の奥の方に歩き始めた。
「何の話ですか? 」
「あとでわかる」
それを見てワカナが不思議そうにアノニムを見て尋ねたが、詳しくは答えなかった。
「ここ。ここからが俺の部屋よ。出来るだけ罠に引っ掛からないようにしてね。戻すの大変なんだから」
初めは不機嫌そうに案内しようとしていたが、最後は何故か笑っていた。ワカナやアノニムが罠に掛かるのが楽しみなのだろう。それは何となくだがワカナにも伝わった。
「じゃあ、お邪魔しま……した」
「入らないのか? 」
「隠す気のない罠が散乱している所を見る限り隠す気のある罠はもっと多いと思うので入りたくないです」
笑いそうになっているアノニムが部屋に入れかけた足を後ろに戻したワカナに尋ねると、ワカナは早口で答えた。白い壁に四方を囲まれ、黒い天井と床の部屋の中にはただ放置されているネズミ取りや触れたら焼かれてしまうだろうセンサーなど分かりやすい罠が多く設置されていた。しかし、シアラはその中をすいすいと迷い無く進んでいった。
「俺みたいに避ければ問題ないわ」
「私はこの部屋に入るとき死ぬ覚悟だけど……痛」
ニコニコと言うシアラとそっと部屋に入るアノニム。アノニムがちょうど足を置いたところに矢が降ってきて足の甲に穴が開いた。
「気を付けないとダメじゃない。あ、そこ落ちるわよ」
からかうようにシアラが注意した。そして、アノニムがまた一歩進んだとき、シアラの言う通りガクンと落ちた。
「もっと早く言え」
「わ~大変そうですね」
穴が開き、落ちていったアノニムをその上から覗き込むようにしてワカナが言った。
「……何で無傷なんだよ」
「掛かっても当たる前に避けたりすれば良いと気付いたので」
嫌味のように言うアノニムに頬に指を当てて少し考えたワカナが答えた。シアラは信じられないと言う顔をして目を瞑っていた。これ以上見たくないらしい。
「念のため言っておくぞ。普通はミコト以外出来ない」
穴を這い上がりながらアノニムはワカナの赤い目を睨むように見て言った。
アノニムが穴から完全に出ると、元の黒い床に戻った。もう触っても何も起きない。その様子を片目だけ開けたシアラが満足そうに見ていた。
「いつまでそうしてるつもりですか。私は貴女に用事があるんですよ」
シアラの目の前まで着いたワカナがシアラの顔を覗き込んで言った。シアラはその声を聞くと、パチッと目を開いてすぐ近くにワカナとアノニムがいることを確認した。
「アノニムが二回だけね。わかったわ」
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