炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
2節 威厳を感じない
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ミコトがワカナとアノニムを連れてきた部屋の前は相変わらず真っ白だったが、扉の周辺に微かにひび割れている部分があった。触らないと気がつかないくらい浅いヒビだが、明らかに他の部屋とは違った。
「ここなのだ。中には理性があるバケモノがいると思っておくのだ」
扉をピッと指差してミコトが扉の先にも聞こえるように言った。そして、ノックをコンコンコンと三回し、そのまま向こうから開けるのを待った。
「俺のことをバケモノだなんて、失礼じゃないの副神様」
奥の黒い部屋から出てきたのは眠たげな赤い目をしたで白いツインテールの黒い翼を広げた天使だった。
「……で、何のつもり? 」
シアラが顔を見せると同時にシアラに殴りかかったワカナの手を止めてシアラはミコトに聞いた。
「忠告はしたのだ」
「<殺せないし死なない>は忠告とは言わないわ」
見ていたかのようにシアラはミコトの言った忠告の内容を当てた。余計なことをしないようにワカナの両手を白い布でぐるぐると巻きながら。
「私は貴女を殺したいです。三回くらい」
「素直なのね。俺はそこの副神様が言ったように死なないわよ。そっちにいるアノニムのお陰でね」
ワカナの言葉にはほとんど反応せず、アノニムの方に視線を向けた。当のアノニムはこいつ苦手だなぁって顔をしてシアラの方を見ないようにしていた。
「で、何の用よ副神様」
視線をミコトの方に向け直し、シアラは尋ねた。執拗にワカナの腕をぐるぐると巻き続けながら。
「我は暇だったからワカナが会いたいって言ったから連れてきただけなのだ」
「ここ数十億年全く威厳を感じなくなったわ」
何故かどや顔を披露するミコトに冷たい瞳でシアラは言った。何回か言われてきた言葉だったからもう何も感じないが、初めの方はショックだった。感情が表に出てきたと喜ぶべきなのかもしれないが、数十億年何も成長していない気がする。生まれたときから完璧なだけなのだが。
「あの私の腕を縛っておいてそこで会話しないでください」
「……何で俺を殺したい吸血鬼と話をしなきゃいけないのよ。しばらく反省してなっさい! 」
シアラはワカナの首の真ん中を針で思いきり刺した。気絶するほどではないが、息ができなくてかなり苦しい。それに痛い。
「あれ? この子が用事あったんだっけ? 」
「ああ、そうだ。ミコトじゃ話にならないしワカナは姉と友達以外の言うことなんて聞かないし、私がお前と話して良いか? 」
苦しむワカナの腕を離しておいて惚けたように言うシアラにアノニムは諦めて話しかけた。そうでもしないとまた扉の向こうに戻ってしまうだろうから。自由の聞かない部屋の外にいるのが嫌だから。
「中で話しましょうよ。アノニムもその子も大丈夫でしょう? 副神様は入れてあげないけど」
扉を半分閉めながら目だけでワカナを指したシアラがそう言った。数千年振りにシアラの部屋に入れるとワクワクしそうな顔をしていたミコトがガッカリした顔をして落ち込んだ。アノニムとワカナはそれを見て心の中で吹き出した。
扉の奥では制限がない。もう未来は見えないが、シアラがやりたい放題やっている荒れた部屋だ。実践しながら研究し、使えない管理者を何度も殺しながら勉強した危険な部屋だ。多少喧嘩慣れしていなければ入りたくもないし出たくもない部屋だろう。そんなところに入りたがるなんてミコトはどうせ変なやつだ。
「仕方ないな。それはお前が持って入れ」
目でワカナのことを指してアノニムは言った。しばらくはミコトを放っておいてやろう。神としてもう少し表情を隠してもらわないと困る。少しは一人でいた方がましだろ。
ミコトがワカナとアノニムを連れてきた部屋の前は相変わらず真っ白だったが、扉の周辺に微かにひび割れている部分があった。触らないと気がつかないくらい浅いヒビだが、明らかに他の部屋とは違った。
「ここなのだ。中には理性があるバケモノがいると思っておくのだ」
扉をピッと指差してミコトが扉の先にも聞こえるように言った。そして、ノックをコンコンコンと三回し、そのまま向こうから開けるのを待った。
「俺のことをバケモノだなんて、失礼じゃないの副神様」
奥の黒い部屋から出てきたのは眠たげな赤い目をしたで白いツインテールの黒い翼を広げた天使だった。
「……で、何のつもり? 」
シアラが顔を見せると同時にシアラに殴りかかったワカナの手を止めてシアラはミコトに聞いた。
「忠告はしたのだ」
「<殺せないし死なない>は忠告とは言わないわ」
見ていたかのようにシアラはミコトの言った忠告の内容を当てた。余計なことをしないようにワカナの両手を白い布でぐるぐると巻きながら。
「私は貴女を殺したいです。三回くらい」
「素直なのね。俺はそこの副神様が言ったように死なないわよ。そっちにいるアノニムのお陰でね」
ワカナの言葉にはほとんど反応せず、アノニムの方に視線を向けた。当のアノニムはこいつ苦手だなぁって顔をしてシアラの方を見ないようにしていた。
「で、何の用よ副神様」
視線をミコトの方に向け直し、シアラは尋ねた。執拗にワカナの腕をぐるぐると巻き続けながら。
「我は暇だったからワカナが会いたいって言ったから連れてきただけなのだ」
「ここ数十億年全く威厳を感じなくなったわ」
何故かどや顔を披露するミコトに冷たい瞳でシアラは言った。何回か言われてきた言葉だったからもう何も感じないが、初めの方はショックだった。感情が表に出てきたと喜ぶべきなのかもしれないが、数十億年何も成長していない気がする。生まれたときから完璧なだけなのだが。
「あの私の腕を縛っておいてそこで会話しないでください」
「……何で俺を殺したい吸血鬼と話をしなきゃいけないのよ。しばらく反省してなっさい! 」
シアラはワカナの首の真ん中を針で思いきり刺した。気絶するほどではないが、息ができなくてかなり苦しい。それに痛い。
「あれ? この子が用事あったんだっけ? 」
「ああ、そうだ。ミコトじゃ話にならないしワカナは姉と友達以外の言うことなんて聞かないし、私がお前と話して良いか? 」
苦しむワカナの腕を離しておいて惚けたように言うシアラにアノニムは諦めて話しかけた。そうでもしないとまた扉の向こうに戻ってしまうだろうから。自由の聞かない部屋の外にいるのが嫌だから。
「中で話しましょうよ。アノニムもその子も大丈夫でしょう? 副神様は入れてあげないけど」
扉を半分閉めながら目だけでワカナを指したシアラがそう言った。数千年振りにシアラの部屋に入れるとワクワクしそうな顔をしていたミコトがガッカリした顔をして落ち込んだ。アノニムとワカナはそれを見て心の中で吹き出した。
扉の奥では制限がない。もう未来は見えないが、シアラがやりたい放題やっている荒れた部屋だ。実践しながら研究し、使えない管理者を何度も殺しながら勉強した危険な部屋だ。多少喧嘩慣れしていなければ入りたくもないし出たくもない部屋だろう。そんなところに入りたがるなんてミコトはどうせ変なやつだ。
「仕方ないな。それはお前が持って入れ」
目でワカナのことを指してアノニムは言った。しばらくはミコトを放っておいてやろう。神としてもう少し表情を隠してもらわないと困る。少しは一人でいた方がましだろ。
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