炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
45節 大悪魔の力
「……そうか。でも私は不満しかないからな、協力はしてもらう」
イロクがそう言うと、ナノカのいつも強気の目が垂れる。黄と緑の澄んだ瞳がナノカが口に出さない助けをイロクに訴えかける。けれど、イロクはその目を見ていなかった。
ナノカの微かに揺れているツインテールを見てイロクはシアラの髪型について思い出した。そういえば、シアラの髪がきちんと結われてた。たしか、シアラを迎えに行ったときも、そのあとで宮殿で会ったとき、さっきも髪が乱れることなく結われていた。
「影には意思がある。そんな意思がある影が暴れるのは苦しいぞ。影を盗られるのは痛みもない。ナノカは苦しい方がいいのか? 」
「……そうではないです。ただ、イロク様はシアラ様がおかしいと思っているようですが、私から見れば最近のイロク様が考えていることもおかしいですよ。そう、思ってしまっただけです」
おかしい、か。確かにシアラのためには仕方ないとかシアラがそう思うなら仕方ないとか理由をつけてやっているが、それがおかしいという自覚はなかった。まあ、ナノカもそれについておかしいと言ってるとは誰も言ってないが。
イロクは気がつくとシアラのためにと行動していた。最近からこんなわけではない。ずっとずっと昔からイロクはこんななのだ。
イロクはシアラが望むなら、ではなく、シアラが笑うならとナノカから影を盗った。ナノカが何かを言っていた気がするが、イロクには何も聞こえていなかった。
「私の役にたてよ、どうせなら最期までシアラには笑っててほしいからな」
イロクの知っているシアラは余程の良いことがない限り笑顔になることはなかった。色々考えていたのだろうが、それが普通だと思っていたイロクは笑顔のシアラを見たいとか特に思ってはいなかった。けれど今は楽しそうに笑っているのだ。
望みが叶えばシアラは笑う。好きな天使がかわいく笑う。そんなに可愛いならずっと笑っていてほしいと思うのは当然のことだろう? その望みが何であってもイロクは叶えてシアラの笑顔を見ていたいだけだ。
「いーち、にー、さーん、しー……」
イロクは影を数えて天使と悪魔たちの足元にこっそりバレないように忍ばせた。最初で最後、大悪魔の力を使ってみたいだけのちょっとしたお遊びだ。
影は黒い、闇も黒い。闇を操る大悪魔の能力で影を操ればどうなるのか。どうせいつもと変わらないだろうが、イロクは試したくなった。
「使うな、とは言われてないし、別にいいだろ」
誰に尋ねられたわけではないが、イロクは言った。
ふぅ、と息を吐き、イロクは目を瞑って集中する。自身を黒い靄が包み、それが部屋に充満していく。生きている天使や悪魔はイロクに近づけないだろう。その靄の中でさっき放った影を探す。気配だけが見つかり、その影に命じる。
「暴れていいぞ」
そうすればもうこんな靄いらない。イロクは全部といてナノカが倒れている方へ目を向けた。いつのまにか倒れてしまったナノカ。そのナノカの影もさっきので誰かを殺めただろう。ああ、かわいそうに。
イロクがそう言うと、ナノカのいつも強気の目が垂れる。黄と緑の澄んだ瞳がナノカが口に出さない助けをイロクに訴えかける。けれど、イロクはその目を見ていなかった。
ナノカの微かに揺れているツインテールを見てイロクはシアラの髪型について思い出した。そういえば、シアラの髪がきちんと結われてた。たしか、シアラを迎えに行ったときも、そのあとで宮殿で会ったとき、さっきも髪が乱れることなく結われていた。
「影には意思がある。そんな意思がある影が暴れるのは苦しいぞ。影を盗られるのは痛みもない。ナノカは苦しい方がいいのか? 」
「……そうではないです。ただ、イロク様はシアラ様がおかしいと思っているようですが、私から見れば最近のイロク様が考えていることもおかしいですよ。そう、思ってしまっただけです」
おかしい、か。確かにシアラのためには仕方ないとかシアラがそう思うなら仕方ないとか理由をつけてやっているが、それがおかしいという自覚はなかった。まあ、ナノカもそれについておかしいと言ってるとは誰も言ってないが。
イロクは気がつくとシアラのためにと行動していた。最近からこんなわけではない。ずっとずっと昔からイロクはこんななのだ。
イロクはシアラが望むなら、ではなく、シアラが笑うならとナノカから影を盗った。ナノカが何かを言っていた気がするが、イロクには何も聞こえていなかった。
「私の役にたてよ、どうせなら最期までシアラには笑っててほしいからな」
イロクの知っているシアラは余程の良いことがない限り笑顔になることはなかった。色々考えていたのだろうが、それが普通だと思っていたイロクは笑顔のシアラを見たいとか特に思ってはいなかった。けれど今は楽しそうに笑っているのだ。
望みが叶えばシアラは笑う。好きな天使がかわいく笑う。そんなに可愛いならずっと笑っていてほしいと思うのは当然のことだろう? その望みが何であってもイロクは叶えてシアラの笑顔を見ていたいだけだ。
「いーち、にー、さーん、しー……」
イロクは影を数えて天使と悪魔たちの足元にこっそりバレないように忍ばせた。最初で最後、大悪魔の力を使ってみたいだけのちょっとしたお遊びだ。
影は黒い、闇も黒い。闇を操る大悪魔の能力で影を操ればどうなるのか。どうせいつもと変わらないだろうが、イロクは試したくなった。
「使うな、とは言われてないし、別にいいだろ」
誰に尋ねられたわけではないが、イロクは言った。
ふぅ、と息を吐き、イロクは目を瞑って集中する。自身を黒い靄が包み、それが部屋に充満していく。生きている天使や悪魔はイロクに近づけないだろう。その靄の中でさっき放った影を探す。気配だけが見つかり、その影に命じる。
「暴れていいぞ」
そうすればもうこんな靄いらない。イロクは全部といてナノカが倒れている方へ目を向けた。いつのまにか倒れてしまったナノカ。そのナノカの影もさっきので誰かを殺めただろう。ああ、かわいそうに。
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