炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
29節 悪魔と大悪魔の兄弟
熱は上がらなかったものの疲れがたまっていたようで大悪魔は数日間眠っていた。その間イロクはずっと部屋から出ず、三日目に大天使が訪ねてくるまで寝ることもなかった。流石にその事を知った大天使に強制的に布団に運ばれ眠らされたが。
「ようやく起きたか。体調はどうだ」
真夜中、掛けている布団が暑いのかすごい汗をかいているラウカの汗を拭いてあげようと濡れたタオルと桶を用意したときラウカは目を覚ました。
「兄ちゃん……。僕どれくらい寝てた? 」
「兄ちゃんやめろ。大体五日くらい、栄養面は心配ないぞ、カオルが特性の点滴を打ってくれたからな」
「そうか、ありがとうって言っておこう。だいぶスッキリしたよ、明日からは普通に動けそう」
「ならよかった。朝まではいてやるから、もう外には出るなよ」
起きたのならもう拭いてあげる必要はないとタオルを大悪魔に渡し、イロクは大天使に用意された布団を大悪魔のベッドのすぐ横に敷いて寝ることにした。熱は下がった。顔色もいい。何かあった時にずく起きれるようにしておけば問題ないと判断したからだ。
「兄ちゃんおやすみ」
「ああ、おやすみ」
子供の頃のように挨拶をし、二人は目をつぶった。
イロクと大悪魔・ラウカは兄弟だ。ラウカが大悪魔になった時、先に神から任命されたのはイロクだった。
当時弟の存在が気に食わなかったイロクは、弟の方がいい大悪魔になると言って神相手にそれを断った。そのときから彼にとってはシアラが一番だったのだ。
大悪魔が弟だからこそ今まで好き勝手できていたのだろう。実力主義の悪魔の世界でそれに背いて友の側にいるなんてそうでないとできるはずがない。
シアラの側にいたい。そのイロクの願いは神の命令を条件付きで回避した。ラウカが病気で死んだ場合の次の大悪魔はイロク。これは違えることのない命令になった。
大悪魔になったラウカはそれからもイロクのことを兄ちゃんと呼びたかった。けれど、兄より優れた弟がいてたまるかと名前で呼ぶようにイロクは言った。兄弟であることを隠して周りに他の悪魔がいるときにはただの上司と部下として接していた。
それでも兄弟は兄弟だ。シアラには宮殿に呼ばれたと言ってイロクは定期的に大悪魔に会いに来ていた。体調管理を建前に食事を作り置きしたり愚痴を話したり仕事を手伝ったり時々イタズラを仕掛けられたりしていた。
その度に宮殿に残ってほしいというお願いを聞かされ、断る。この二人が兄弟だということはシアラでさえ知らない。が、隠しているつもりでよくボロが出るので大天使とカオルは知っていた。
二人は今、夢を見ていた。同じような夢だ。今イロクが住んでいる家で一緒に住んでいた頃の夢だ。懐かしく、笑顔になるような幸せな夢だ。大悪魔にとっては。イロクにとっては同じように懐かしくも笑顔にもなるが、イタズラされた夢の方が多い。
過ぎたことをすれば叱らなければならないからだ。叱るのはあまり好きではない。眉間にシワを寄せながら眠っている。
そんな幸せそうな寝顔と心を読んでこっそりと部屋に入っていたナノカは部屋から出ていった。
「ようやく起きたか。体調はどうだ」
真夜中、掛けている布団が暑いのかすごい汗をかいているラウカの汗を拭いてあげようと濡れたタオルと桶を用意したときラウカは目を覚ました。
「兄ちゃん……。僕どれくらい寝てた? 」
「兄ちゃんやめろ。大体五日くらい、栄養面は心配ないぞ、カオルが特性の点滴を打ってくれたからな」
「そうか、ありがとうって言っておこう。だいぶスッキリしたよ、明日からは普通に動けそう」
「ならよかった。朝まではいてやるから、もう外には出るなよ」
起きたのならもう拭いてあげる必要はないとタオルを大悪魔に渡し、イロクは大天使に用意された布団を大悪魔のベッドのすぐ横に敷いて寝ることにした。熱は下がった。顔色もいい。何かあった時にずく起きれるようにしておけば問題ないと判断したからだ。
「兄ちゃんおやすみ」
「ああ、おやすみ」
子供の頃のように挨拶をし、二人は目をつぶった。
イロクと大悪魔・ラウカは兄弟だ。ラウカが大悪魔になった時、先に神から任命されたのはイロクだった。
当時弟の存在が気に食わなかったイロクは、弟の方がいい大悪魔になると言って神相手にそれを断った。そのときから彼にとってはシアラが一番だったのだ。
大悪魔が弟だからこそ今まで好き勝手できていたのだろう。実力主義の悪魔の世界でそれに背いて友の側にいるなんてそうでないとできるはずがない。
シアラの側にいたい。そのイロクの願いは神の命令を条件付きで回避した。ラウカが病気で死んだ場合の次の大悪魔はイロク。これは違えることのない命令になった。
大悪魔になったラウカはそれからもイロクのことを兄ちゃんと呼びたかった。けれど、兄より優れた弟がいてたまるかと名前で呼ぶようにイロクは言った。兄弟であることを隠して周りに他の悪魔がいるときにはただの上司と部下として接していた。
それでも兄弟は兄弟だ。シアラには宮殿に呼ばれたと言ってイロクは定期的に大悪魔に会いに来ていた。体調管理を建前に食事を作り置きしたり愚痴を話したり仕事を手伝ったり時々イタズラを仕掛けられたりしていた。
その度に宮殿に残ってほしいというお願いを聞かされ、断る。この二人が兄弟だということはシアラでさえ知らない。が、隠しているつもりでよくボロが出るので大天使とカオルは知っていた。
二人は今、夢を見ていた。同じような夢だ。今イロクが住んでいる家で一緒に住んでいた頃の夢だ。懐かしく、笑顔になるような幸せな夢だ。大悪魔にとっては。イロクにとっては同じように懐かしくも笑顔にもなるが、イタズラされた夢の方が多い。
過ぎたことをすれば叱らなければならないからだ。叱るのはあまり好きではない。眉間にシワを寄せながら眠っている。
そんな幸せそうな寝顔と心を読んでこっそりと部屋に入っていたナノカは部屋から出ていった。
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