炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

20節 天使と悪魔の連絡

「謝りには行きます。でも、一つ気になっていることがあるのです……」

 カオルの盗んだおやつと同じものを用意させ、やけ食いしていた果物を片付け、イロクにどう謝るかの相談も終え、ようやく謝りに行く、といったときに大天使は口を開いた。

「……何でしょうか。出来るだけ急いで謝りに行った方が良いと思うのです……」

 怒っていない、イラついていないと言う風にカオルは笑顔で答えたが、その笑顔は何か暗かった。イロクと大天使はカオルが早くしろ、と思っていることを察した。

「そうは思います。けれど、何か問題が起きているかもしれません……」

 無関係ならば無視して謝った方が良いようなことだが、大天使がここまで気にするのなら何かあるのだろうとイロクはため息をついてから手を貸すことにした。

「その気になることを言ってみろ。そうじゃなきゃ私たちにはわからないだろ」

「……そうですね。確かにその事を一応聞かなければ大天使様も気が済まないでしょうし……」

 カオルも譲る気はないようだが、大天使の話を聞く気にはなったようだ。自分の上司の要望を聞くくらいには素直になれば良いのに。イロクはそう思った。

「下の天使から連絡がないんです。イロク先輩、シアラ先生から何か連絡はありませんか……」

「私がヒサの先輩だったのもシアラ先生だったのも向かいのことで今は違うが、無いな」

 大天使の精神が参っているらしく、昔の呼び方に戻ってしまったようだ。イロクとシアラは常に連絡を取りあっているわけではないから特に気にはしていなかった。

「これが普通なのでしょうか。悪魔の方も気になりますし、やはり大悪魔に謝りに行きます。そこで聞けば良いんです……」

 勝手に自己解決されるとイロクもカオルも何も言えない。どうせそうなるなら勝手にしてくれ。そう思うしか出来なかった。

「……行きますか……」

 カオルはそう言って宮殿の外に繋がる扉を開いた。そこから出てまっすぐ飛べばこの部屋の外見と全く同じものが見える。ただ白いここと違い、黒の部屋だが。

 そして、同じように扉を開けば大悪魔に会える。部屋にいなければ会えないが。

「大悪魔様なら部屋にいる。宮殿の後輩から連絡がないってことそういうことだ。行くなら今だな」

「……サボっている可能性は……」

 宮殿勤めの悪魔のほとんどがまともに仕事もせずにいることは誰もが知っている。今もいつも通りサボっていれば数少ない仕事をする悪魔は大悪魔の情報を得るほど余裕はないはずだ。連絡がないのも頷ける。

「まあ、行ってみればわかるだろ。ほら、行くぞ」

 誤魔化すようにイロクは我先にと外に出た。付いていった方が楽に宮殿に入ることが出来るからいると思うしかない。

 いないだろうな。大天使とカオルはそう思った。

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