炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
16節 悪魔と天使の矢
イロクの影が通用しないのはその世界には本人を含めてたったの五人だけだ。
すべてを光で浄化する大天使。すべてを闇で吸収する大悪魔。近づくものを射止める天使のNo.2。そして、シアラとイロクだ。
イロクは自信の能力で大天使と大悪魔の能力を防ぐことができる。だが、大天使の能力を防げば影は浄化されてしまうし、大悪魔の能力を防げば影は闇に吸収されてしまう。イロク曰く、あれはチートだ。
どんなに強大な力でも防げないことはない。
「……ふざけてますね。神の代理として働くお二方のために早く争いを止めようとは思わないんですかね……」
「うるさいな。大天使を倒せなかったから仕方なく心酔してる振りのNo.2の癖に」
「……本気で戦えば大悪魔様なんて寝てても倒せるNo.2に言われたくはないですね……」
この二人が極力会わないようにしているのは顔を合わせる度に言い合いが起きるからだ。真面目な用件で会いに行っても偶然見かけたからと話しかけたときも結局は喧嘩になって音の園に行く。
音の園にある多くの穴の内三割はこの二人の戦いでついたものだ。特に細かい穴が密集していればそれは必ず天使のNo.2の矢だ。
「前に見た時より酷くなってないか? No.2」
「……そうですね……」
足場がガタガタして立ったまま戦うことが困難にも見える床に二人は降りた。そして、さあこれから戦うぞというときに天使のNo.2が口を開いた。
「……そのNo.2というのやめてもらえませんか……No.2で言ったらあなたも当てはまりますよね……」
「矢を握りながらそういうこと言わないでほしいな。殺意と会話の日常感が噛み合ってない」
ピシッ
矢がイロクのすぐ横を通ってそのさきの柱に刺さった。顔色だけはさっきと同じ。充血したように真っ赤な目でイロクを睨んでいた。これが彼女の戦闘開始の合図だ。
「……あなたも理解しているでしょう? 三日三晩の戦いは退屈。だから雑談をしようと思ったまでです……」
「あー、確かに暇だな。でも私はNo.2の名前なんて知らないから無理な話だ」
No.2は投げながら話し、イロクは避けながらそれに答える。まだ体力には余裕がある。二人とも普通に会話をするときのように話をすることができる。
「……管理職の名前くらい全員ぶん覚えてくださいよ。そもそもこの間のあなたが来た集会でも名乗りましたからね……」
No.2は手を使って一本ずつ投げるのをやめ、矢を宙に放り出し自動でイロクの方に飛んでいくようにした。
「そうだったっけか? 悪魔は覚えられるんだが、天使は覚えられなくてな。私は別に覚えられてなくてもかまわないが」
イロクは、同時に飛んでくる矢が増えたのでちまちまと避けるのはやめて自分と同じ気をもった影を散らして標準をずらした。
「……あなたの名前を知らない阿呆なんていません。あなたがこの間宮殿で何をやらかしたかお忘れですか? ……」
「わ、忘れたなあ。ちょっとしたドジなんて覚えてるだけ無駄ですよ」
「……民の名簿を焼却したことをドジと言うならご自由に。それよりも、いつもより隙がありますが……」
自分の能力に戦うのを任せれば意識がある内なら放っておいても話をしていても相手の命を狙ってくれる。普段はあまり話さない分こういうときに言いたいことが言い合えるのがこの二人だ。
「音の園はすべての音を記憶するだろ? あんまりこういう場所でそんなひどいこと言わないでほしいんだよな」
「……名前を覚えてないのも随分酷いことですよ。あなたには私のこと言えません……」
まあ、なんやかんやあってこんな状態は四日間続いた。四日後、体力と魔力が尽きてきた二人の本当の力比べが始まるのだ。
すべてを光で浄化する大天使。すべてを闇で吸収する大悪魔。近づくものを射止める天使のNo.2。そして、シアラとイロクだ。
イロクは自信の能力で大天使と大悪魔の能力を防ぐことができる。だが、大天使の能力を防げば影は浄化されてしまうし、大悪魔の能力を防げば影は闇に吸収されてしまう。イロク曰く、あれはチートだ。
どんなに強大な力でも防げないことはない。
「……ふざけてますね。神の代理として働くお二方のために早く争いを止めようとは思わないんですかね……」
「うるさいな。大天使を倒せなかったから仕方なく心酔してる振りのNo.2の癖に」
「……本気で戦えば大悪魔様なんて寝てても倒せるNo.2に言われたくはないですね……」
この二人が極力会わないようにしているのは顔を合わせる度に言い合いが起きるからだ。真面目な用件で会いに行っても偶然見かけたからと話しかけたときも結局は喧嘩になって音の園に行く。
音の園にある多くの穴の内三割はこの二人の戦いでついたものだ。特に細かい穴が密集していればそれは必ず天使のNo.2の矢だ。
「前に見た時より酷くなってないか? No.2」
「……そうですね……」
足場がガタガタして立ったまま戦うことが困難にも見える床に二人は降りた。そして、さあこれから戦うぞというときに天使のNo.2が口を開いた。
「……そのNo.2というのやめてもらえませんか……No.2で言ったらあなたも当てはまりますよね……」
「矢を握りながらそういうこと言わないでほしいな。殺意と会話の日常感が噛み合ってない」
ピシッ
矢がイロクのすぐ横を通ってそのさきの柱に刺さった。顔色だけはさっきと同じ。充血したように真っ赤な目でイロクを睨んでいた。これが彼女の戦闘開始の合図だ。
「……あなたも理解しているでしょう? 三日三晩の戦いは退屈。だから雑談をしようと思ったまでです……」
「あー、確かに暇だな。でも私はNo.2の名前なんて知らないから無理な話だ」
No.2は投げながら話し、イロクは避けながらそれに答える。まだ体力には余裕がある。二人とも普通に会話をするときのように話をすることができる。
「……管理職の名前くらい全員ぶん覚えてくださいよ。そもそもこの間のあなたが来た集会でも名乗りましたからね……」
No.2は手を使って一本ずつ投げるのをやめ、矢を宙に放り出し自動でイロクの方に飛んでいくようにした。
「そうだったっけか? 悪魔は覚えられるんだが、天使は覚えられなくてな。私は別に覚えられてなくてもかまわないが」
イロクは、同時に飛んでくる矢が増えたのでちまちまと避けるのはやめて自分と同じ気をもった影を散らして標準をずらした。
「……あなたの名前を知らない阿呆なんていません。あなたがこの間宮殿で何をやらかしたかお忘れですか? ……」
「わ、忘れたなあ。ちょっとしたドジなんて覚えてるだけ無駄ですよ」
「……民の名簿を焼却したことをドジと言うならご自由に。それよりも、いつもより隙がありますが……」
自分の能力に戦うのを任せれば意識がある内なら放っておいても話をしていても相手の命を狙ってくれる。普段はあまり話さない分こういうときに言いたいことが言い合えるのがこの二人だ。
「音の園はすべての音を記憶するだろ? あんまりこういう場所でそんなひどいこと言わないでほしいんだよな」
「……名前を覚えてないのも随分酷いことですよ。あなたには私のこと言えません……」
まあ、なんやかんやあってこんな状態は四日間続いた。四日後、体力と魔力が尽きてきた二人の本当の力比べが始まるのだ。
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