炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
13節 天使と悪魔の黒い靄
「やっぱり、その時間の単位はおかしいよ」
そう言って天使はイロクに持っていた槍を突き付けた。近接戦になれば一撃で肉塊になると判断しての行動だ。
距離をおかれたイロクは、拳を握りながら呟いた。
「困ったな……術は手加減の仕方知らないんだよ」
突きつけられた槍を握り、何かを唱えた。すると、後ろに伸びていた影がイロクに吸収され、握った手から黒い靄のような何かが出た。
「……今なら取り消せるけど、通してくれるか? 」
そう言ってもう一度通すように頼むイロクの手に握られた黒い靄は命を持ったように暴れていた。イロクは申し訳そうな楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「と、通さない……」
「そっか。じゃあ、大変だ」
イロクは笑顔で槍から手を離した。すると、手から出ていた黒い靄が天使の方向目掛けて槍の中で動いた。天使は怯えて槍から手を話そうとしたが、手は全く動かなかった。
「う、うわああああああああぁぁぁぁぁぁ」
天使は後ろに倒れてしばらくバタバタと暴れていたが、すぐに動かなくなった。そして、その天使の腹の辺りから黒い何かが顔を出していた。
「おかえり。久しぶりに暴れて楽しかったか? ああ、友達を見つけたか。よかったな、その子と一緒に帰っておいで」
その黒い何かに手を差しのべながらイロクはそう言った。既に応援の天使はたくさんその近くにいたが、誰も近づくことができずにいた。
黒い物体をイロクが手に取ると、消えていた影が再び伸び、笑顔を浮かべた。
「こいつだけじゃダメか。できれば皆殺しだけは避けたいからな、せめて百人くらいでかかってきてくれよ。まあ、ここにいる全員くらいは相手にできるけどな」
イロクは誰の顔を見ずにそう言った。大人数相手では手加減することに気が回らない。それにもう一人殺してしまった。何人に増えても悪魔相手じゃなければ変わらないと判断した。
「まあ、今回は大天使と大悪魔様のしょうもない喧嘩が原因で私たちには関係ない。ここで喧嘩を止めても誰も損をしない。私は無傷で終わらせたいからここを通してもらいたいんだけどなあ」
イロクは無意味だとわかりながらも交渉しようとした。別に殺したいわけではないが、殺すことに躊躇いがあるわけでもない。ここで戦っていた方が時間が稼げていいくらいだ。
誰も死ぬとわかって戦いたくなどない。けれど、大天使に心酔している宮殿の天使たちなら半数以上は戦うだろう。悪魔を大天使に近づけないように。それはイロクにもわかっていた。だから待っているのだ。
「さて、誰から来るつもりだ? 」
その言葉に反応し、足音をたてないようにゆっくりとイロクの方に一人の天使が近寄り始めた。それに気がついてもイロクはそっちを向かなかった。影を踏まれそうなほど近づかれても気が付いてない振りを続けた。
パチャ 
天使が踏んだイロクの影は何故か水のような音がした。
「……上から来ればこんなことにはならなかったのにな」
イロクがそう言っている間に影から黒い何かが数十個その天使に襲いかかった。
「え、いやっ……やだっ……きゃぁぁぁぁ! ! ! 」
黒い何かが溶け込み、真っ黒に染まった天使は苦しそうに叫び、暴れて動かなくなった。それを少しつまらなそうに見ていたイロクは、真っ黒の天使に手を差し伸べて言った。
「あのな、お前ら。何人で襲いかかっても新しい友達は一人だけなんだって前も言っただろう。夕べ私が影を使わなかったことを怒ってるのか? それは謝るから一人ずつで襲ってくれ。な? 」
イロクはすべての黒い物体を回収すると立ち上がり、もう一度周りの天使を見た。
そう言って天使はイロクに持っていた槍を突き付けた。近接戦になれば一撃で肉塊になると判断しての行動だ。
距離をおかれたイロクは、拳を握りながら呟いた。
「困ったな……術は手加減の仕方知らないんだよ」
突きつけられた槍を握り、何かを唱えた。すると、後ろに伸びていた影がイロクに吸収され、握った手から黒い靄のような何かが出た。
「……今なら取り消せるけど、通してくれるか? 」
そう言ってもう一度通すように頼むイロクの手に握られた黒い靄は命を持ったように暴れていた。イロクは申し訳そうな楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「と、通さない……」
「そっか。じゃあ、大変だ」
イロクは笑顔で槍から手を離した。すると、手から出ていた黒い靄が天使の方向目掛けて槍の中で動いた。天使は怯えて槍から手を話そうとしたが、手は全く動かなかった。
「う、うわああああああああぁぁぁぁぁぁ」
天使は後ろに倒れてしばらくバタバタと暴れていたが、すぐに動かなくなった。そして、その天使の腹の辺りから黒い何かが顔を出していた。
「おかえり。久しぶりに暴れて楽しかったか? ああ、友達を見つけたか。よかったな、その子と一緒に帰っておいで」
その黒い何かに手を差しのべながらイロクはそう言った。既に応援の天使はたくさんその近くにいたが、誰も近づくことができずにいた。
黒い物体をイロクが手に取ると、消えていた影が再び伸び、笑顔を浮かべた。
「こいつだけじゃダメか。できれば皆殺しだけは避けたいからな、せめて百人くらいでかかってきてくれよ。まあ、ここにいる全員くらいは相手にできるけどな」
イロクは誰の顔を見ずにそう言った。大人数相手では手加減することに気が回らない。それにもう一人殺してしまった。何人に増えても悪魔相手じゃなければ変わらないと判断した。
「まあ、今回は大天使と大悪魔様のしょうもない喧嘩が原因で私たちには関係ない。ここで喧嘩を止めても誰も損をしない。私は無傷で終わらせたいからここを通してもらいたいんだけどなあ」
イロクは無意味だとわかりながらも交渉しようとした。別に殺したいわけではないが、殺すことに躊躇いがあるわけでもない。ここで戦っていた方が時間が稼げていいくらいだ。
誰も死ぬとわかって戦いたくなどない。けれど、大天使に心酔している宮殿の天使たちなら半数以上は戦うだろう。悪魔を大天使に近づけないように。それはイロクにもわかっていた。だから待っているのだ。
「さて、誰から来るつもりだ? 」
その言葉に反応し、足音をたてないようにゆっくりとイロクの方に一人の天使が近寄り始めた。それに気がついてもイロクはそっちを向かなかった。影を踏まれそうなほど近づかれても気が付いてない振りを続けた。
パチャ 
天使が踏んだイロクの影は何故か水のような音がした。
「……上から来ればこんなことにはならなかったのにな」
イロクがそう言っている間に影から黒い何かが数十個その天使に襲いかかった。
「え、いやっ……やだっ……きゃぁぁぁぁ! ! ! 」
黒い何かが溶け込み、真っ黒に染まった天使は苦しそうに叫び、暴れて動かなくなった。それを少しつまらなそうに見ていたイロクは、真っ黒の天使に手を差し伸べて言った。
「あのな、お前ら。何人で襲いかかっても新しい友達は一人だけなんだって前も言っただろう。夕べ私が影を使わなかったことを怒ってるのか? それは謝るから一人ずつで襲ってくれ。な? 」
イロクはすべての黒い物体を回収すると立ち上がり、もう一度周りの天使を見た。
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