炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

51節 暑い? 熱い?

「あ、そういうの必要ないんで、理解できるように努力しますから話してください」

「いや、我だってなこんなことは言いたくない。だが、我は神なのだ。一番なんでも知ってるのだ。我が話さなければいったい誰が話すのだ! 」

 アルゴライムの言葉も聞かず、涙目になりながらミコトは何かを訴え始めた。これでも神か。アルゴライムはまずそう思った。

「あーはい。貴方しかいませんね。わかったので話してください」

 アルゴライムは、ミコトの相手をするのが面倒になり始めていた。強がって大人の振りをしながらわがままで一度騒いだら誰も止めることができない。そんな人を前に見たことがあった。それと重ねて見えるミコトを止める術はないと判断した。

「そうだ! 我しかいないのだ! ならばどうする? 話すしかないのだな! 」

 想定よりも大分早くミコトがアルゴライムに話す気になってホッとした。早めに冷静になったミコトは、アルゴライムに何かを訴えるように視線を向けた。

「あ、どうぞお話しください」

 アルゴライムが言ったその言葉が原因かはわからないが、ミコトの長く白い前髪から睨んだ瞳が緑に見えた。さっきまでその瞳は黄色かったはずだ。アルゴライムが見間違いかと二回大きく瞬きをすると、ミコトはしっかりとアルゴライムの方を向いて座っていた。瞳も黄色かった。

「仕方ない。そこまで言うのならば我が話してやるのだ」

(平常心、平常心)

 過去のことを細かく思い出していたからか、アルゴライムは思わずミコトを殴りそうになった。

(手を出してしまっては同じことを繰り返すだけです。……あれ? 何を繰り返すんだっけ)

 アルゴライムが若菜だった頃の記憶は、どんどん薄れていた。鮮明に思い出そうとする程忘れていき、特に死を迎える四年半前からの記憶、小学五年生の冬辺りからの記憶がない。

 ついさっきまでばあの事件゙のこと以外はほとんど思い出せていた。いや、さっきは思い出せなかったことも少しは思い出せる……? 五日とは仲良くなったとは言えないが、ゲームを教えてもらった。うまくはなかったけど、時々榊家に行って一緒にゲームをした。思い出せた。

(あれ? 私は何で死んだの? そうだ、お姉ちゃんは? 麗菜お姉ちゃん。どうなったの? )

 アルゴライムは、少しでも忘れていることを思い出そうとするだけで頭痛がした。強く思い出そうとすると意識が途切れるのではと思うほど頭が痛かった。しばらくすると、座っているのも辛くなり、椅子から落ちて倒れた。

 そして、また暫くして頭の痛みは消えた。思い出そうなどとは出来ていない。途切れることの無い痛みの中でそんなことはできなかった。

「暑い? 熱い? 」

 駆け寄りもしない、顔をアルゴライムに向けることもないミコトの声が聞こえた。その言葉を聞くと、痛みで気がつかなかった体温の高さに気がついた。

 体内から発火しそうな程あつい。動けないのはそのせいだ、声が出せないのもきっと。アルゴライムはすぐに理解した。前にもこんなことがあった気がする。でも、覚えていない。思い出そうとすればまた頭が痛む。それだけは覚えていることができた。

「悪いな。ヤツは暫く起きない。ならば我らも少し準備がある。終わるまでは眠っていてもらうのだ。ほんの少しだ、ワカナは休め」

 初めのような無表情な冷たい顔で緑の瞳がアルゴライムを睨んだ。アルゴライムは、何故か出せた声で思ったことと、挨拶をした。もう疑問に思う体力も戻っていない。

「情緒……不安定すぎ……ますよ。……はぁ……おや……すみな……さ……ぃ」

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