炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

49節 何から聞きたい

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「で、ここまで話してみたわけだけど、どうかしら? 」

「いや、最後まで話してくださいよ。恐らく重要なのはここからなんですよね」

 ヒトミは、それまで話していた長い話を一度中断し、アルゴライムに感想を求めた。けれど、アルゴライムは作業的に聞き流していたので、感想なんて無かった。

「いやね、ここから先は本人に話してもらおうと思って」

ガチャ

 ヒトミがそういい、柱があった場所に視線を送ると、扉が開くような音がした。

「ヒトミ、言われた通り創造神ミコトを連れてきた。これで満足か? 」

 アノニムの声がした。しかし、ヒトミはアノニムの問に答えずじっとアノニムのことを見つめていた。そして、アルゴライムは何だかアノニムのことを見てはいけない気がして仕方なくヒトミのことを見ていた。

「他にも、頼んだと思うけれど……」

「ズィミアの再起動準備も終わってる。ここに来るのにも時間はかかってない」

「ふーん、そうなのね。アルゴライムはミコトに会ったことないのよね? 」

 突然話を振られ、アルゴライムは一瞬、自分に言われたことだとは思わなかった。

「あ、はい。な、ありませんよ。初めて聞く名前です」

 自分に向けられた問だと気がつくと、アルゴライムはすぐに返事をした。そして、恐る恐るアノニムとミコトがいる方に振り返り、ミコトの姿を認識した。

 その姿は、とても美しかった。顔の作りも雰囲気も柔らかい女性の印象を持っているのに、どこか冷たく、かっこいいとも思える。

 そして、アルゴライムは気が付いた。この空間にいる全ての者が整った顔をしており、全員美しいということに気が付いた。約一名、美しいというよりは可愛いという表現が似合うけれど。

「ヒトミ、これがワカナなのか? 聞いていた印象よりもだいぶ弱く見えるが」

「力が隠せる程度に精神が成長しただけよ。じゃあ、私とアノニムはズィミアの様子、見てくるから。ミコトはこの子に話しておいてね」

 ヒトミはそう言ってアルゴライムの方を振り返ることなく、その部屋から出ていった。自分だけなにも知らされず置いていかれる状況がやけに多いなと思いながらも、アルゴライムは怒らずに待ってみることにした。

 恐らく、もうすぐ疑問に思っていることがすべて解決するから。

「ワカナ」

「え、あ、はい。何ですか? えーと、、、」

「ミコトだ。そう呼ばれていただけだが、ヒトミもアノニムもヤツもみんなそう呼ぶ。そう読んでも良い」

 無駄に冷静なミコトの姿にアルゴライムは、管理者の特徴である感情がないということを思い出した。

 話し方が作業的であり、表情も話す口と瞬きする目以外動かない。

 ただの管理者ではないのだろうが、感情なんてこのミコトに存在しないのだろう。アルゴライムはそう確信した。

「さて、ワカナは何から聞きたい」


【雑談】
しんねんあけましておめでとうございます。

遅れたこと、申し訳無いです。ホント。

今年、2020年は"水華うい"として活動します。よろしくお願いします。

2020.1.15水華うい

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