炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

41節 素の貴女の方が好きよ、私。

「まあ、元はと言えば、私のミスが原因立ったんだけどねぇ」

 真剣な顔なのに、無駄に軽いノリでヒトミがそう言うのだから、アルゴライムは真剣な顔のまま返す言葉がなく、硬直してしまった。

「まさか、目を開けたままで寝てるとかじゃないわよね? 起きてるわよね? アルゴライム? 」

「え、いや、あの、ミスって何ですか? 」

 アルゴライムがそう問うと、ヒトミは何をいっているの? と言うような顔を向けた。酒に酔い、どこまで説明したのか自分の中で理解できていないようだ。

「あ、あれよ、説明してなかったのは意図的で、忘れてたとかじゃなくてね、今のは、場を何て言うのか……。そう! 和ませようとしたのよ! 」

 完全に開き直っているが、絶対に忘れていたし、そのことすらついさっきまで忘れていた。何よりも、嘘臭いヒトミの笑顔が証拠になる。

 アルゴライムは、そんなヒトミをじっと見つめ続けていた。ヒトミが自白をするまでずっと。

「忘れてました。ハイ……」

「説明してくれますね? 」

 ヒトミがにへっと歪んだ笑みをアルゴライムに見せたが、それを無視して睨みながらアルゴライムは質問するように強制した。

 ヒトミは、諦めを表情に表し、緑色の有色透明の液体の入ったフラスコを取り出し、一気に飲み干した。目を瞑り、頬をつねると、ヒトミは笑顔でアルゴライムの睨みに対抗した。

「今度はどんな薬を飲んだんですか? 」

「酔いざまし。これで話せるわ」

「そうですね。では、話してもらおうか? 」

 アルゴライムは、殺気を向けながら早く話すようにヒトミを促した。アルゴライムにとってヒトミは既に敬意を払わなくていい者ではなく、敬意を払ってはならない者に成り下がっていた。

 アルゴライム・クローバーという存在の中で滅多に分類されない最底辺の人種にヒトミはなってしまったのだ。いや、人種はおかしい気もする。神種だ。

「はーい。全く、そんな怖い顔をしなくても……」

「別にそんな顔してねぇよ」

 ヒトミは眉を寄せ、アルゴライムの不機嫌そうな怒りの顔を真似た。それはあまりにも似ていない顔真似で、アルゴライムの怒りの感情をさらに逆撫でさせたようだ。彼女は怒っていた。

「なんか、敬意を払うために無理して敬語を使ってる貴女より、素の貴女の方が好きよ、私」

「馬鹿にしないでください。いや、違う、じゃない、えっと、話して」

 ヒトミは、ニヤリと悪戯に笑みをアルゴライムに見せている。完全に遊んでいる。怒られても、何があっても、ヒトミは言い訳に苦しむことになるだろう。例え、どんな意図があったとしても。

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