炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

34節 ああ、もういいや。

 アルゴライムは、少し思いきったように言ったつもりだった。目はなにも気がつかなかった自分と何も教えようとしなかったヒトミたちを訴えていた。

「説明すると長くなるわよ? 構わない? 」

 ヒトミは、最終確認をするためにそう問いたのだが、アルゴライムにはお節介に思ったらしい。アルゴライムは、眉を少し寄せて落ち着いた表情で答えた。

「はい」

 アルゴライムがそう答えたことを認識すると、ヒトミは左手を挙げて指を鳴らした。すると、その瞬間アルゴライムは内蔵が持ち上がるような感覚に教われ、気分が悪くなった。そして、重く押し潰されるような力で机に押し付けられた。

「神って便利よね。こんなことも出来るんだもの」

 ヒトミは、冷たい顔をしてそういうと、立ち上がって入ってきた場所にある柱に近づいた。触れたり叩いたりして何かを調べているようだ。

「何……してる……ですか? 」

「よーいーしょっと! で、何? 」

 そう言ってヒトミは殴って柱を破壊した。その瞬間、アルゴライムを押し付けていた重力が突然弱くなり、からだが軽くなった。

「だから、何したんですか? もうこの程度のことではいちいち驚きませんよ。…………そんな顔しないで答えてください」

 アルゴライムは、軽くなったことで立ち上がることができたので、立ってヒトミに近づいた。ヒトミは、少し面倒くさいと言うような顔をしていたが、アルゴライムに言われたので、ため息をついて話始めた。

「生命体の身体に合う空気は下界の空気。だから、この空間を一番近くにあった下界に移したんだけど、向こう側の重力が強すぎたか、重力魔法の範囲内に入ったから、空気だけ入れ換えて切り離したのよ。このくらいすぐに直せるし、直ったら戻れるから。あの重力地獄は経由するけれどね」

 ヒトミは、始めは仕方無さそうに話していたが、後半は少し楽しそうに笑いながら話していた。アルゴライムは、全てを知られていると言うことで蓋が外れたのか、イライラとする沸点がかなり下がったらしい。そのヒトミの話し方が癪にさわり、つい、大声でいってしまった。

「ああ、もういいや。椅子を作って座って、それで説明を求めます。もちろん、すべての」

「わかってるわよ。貴女も座って。ここは下界だから飲みすぎたらダメだからね、普通のお茶のおかわりいれたから飲みなさい」

 ヒトミはかなりの世話好きのようだ。アルゴライムがヒトミの指示通りに椅子に座ると、テキパキとお茶を入れ、椅子を作ってそれに座った。器用なのか、容量がいいのか、その両方なのかはわからない。しかし、アルゴライムが性格などを無視し、姉にほしいと思うほどの仕事の早さだった。

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