炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

33節 敬語のままで良いのかしら?

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「……思い出に浸ってるところ悪いけど、そろそろ良いかしら」

「え、あ、はい。構いません」

 アルゴライムは、身動きをとらないまま、敬語で話始めたきっかけ、事件のことを思い出していた。ヒトミはしばらく、それを黙ってみていたが、およそ一時間も身動きをとらずにしているのだ。流石に話を進めたくなって声をかけた。

「敬語のままで良いのかしら? 」

「悩みましたけど、もう慣れましたので。ところで、なんの話でしたっけ? 」

 アルゴライムの頭の中は、寝起きの状態のようにぼやぼやとしていた。かなり鮮明な記憶だったため、ヒトミが強制的に呼び起こしたものかもしれないとアルゴライムは思ったが、別に良いと放っておいた。

「まだなにも話をしていないわ。何か、聞きたいことはある? 」

「えーと……」

 今まででどんな会話をし、今がどんな状況なのか、どういう話をするためにここにいるのかを思い出した。

 ああ、そうだ。と言うように、アルゴライムは立ち上がり、大声を出した。

「そうですよ! どういうことですか? 何が起きているのですか? さっきから本当に、話をする寸前になって何かが起こりすぎですよ! さあ、私が一度聞いたことでも良いので、全てを説明してください! 」

 ヒトミは、その言葉を覚めた表情で聞き流すと、長いため息をついてアルゴライムを椅子に座らせた。

「おちついて。説明するから座って」

 そう言うと、もう一度小さくため息を付くと、ヒトミはアルゴライムの手を握って真剣な顔で問いた。

「本当に、気がついていないの? 」

「何がですか」

 ヒトミは、チラッと横になっているリリスのことを見た。アルゴライムが不思議になってその方を見ると、ヒトミが言いたいことに気がついた。

「いや、気づきませんって。姿も性格も変わっているんですから」

「やっぱり無理ね。普通は、気がつくわけもないことだもの。今まで、私たちの意思で気づかせたとき以外では無い事例よ」

「なら、変な言い方しないでくださいよ。自分のことがものすごいバカに見えます」

 アルゴライムは、ホッとしたように目を軽く瞑り、笑みを浮かべた。そして、拗ねたように唇を尖らせて文句を言うようにヒトミを見た。

「そうね。それより、何のことだと思ったのよ」

「……予想通りだった場合、きちんと説明をしていただきますよ」

 アルゴライムは、深呼吸を三回ほど繰り返し、目付きを鋭くさせると、ヒトミにそう言った。

 ヒトミはニヤニヤとそれを見ていたが、もちろん、と言うように軽く頷いた。そして、それを見たアルゴライムはゆっくりと口を開いた。

「いろいろ聞くことはありますが、リースは六日さんですよね。時間の流れに矛盾が生じます。説明してください」

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