炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
25節 いい子だからお話ししてあげる
「……こっち」
アルゴライムは、ときどき曲がっているが、ほとんど景色が変わらない道をヒトミの案内の通り歩いている。
「…………ここよ」
ヒトミが案内したところには、アノニムの部屋と同じく柱があるだけだった。部屋への入り方も一緒。同じようにして二人はなかに入った。
「……お茶でも飲んでちょうだい」
ヒトミの部屋、そこには木製の小さな小屋の一室ような空間があった。ベッドが一つ、小さなテーブルと椅子が一つ、クローゼットのような戸棚のようなものが三つ。人里離れたログハウス。そんな印象もあった。
「ここは何ですか? 」
アルゴライムは、リリスをベッドに寝かせて一つしかない椅子に座り、出されたお茶を口にした。
「口に合うかしら? たぶん、今吐き出さないように必死だと思うけれど……」
ヒトミが立ったままお茶を飲んで目だけでアルゴライムを見ると、アルゴライムは口をおさえて小刻みに震えていた。
「飲んでくれるわよね? 」
ヒトミの顔は、不自然に笑っていた。アルゴライムが吐き出そうとしているものと同じお茶を平然と飲み、少し面白がっているようにも見える。そんな姿を涙目で確認すると、覚悟を決めてアルゴライムはお茶を飲み込んだ。
「飲めたのね。いい子だからお話ししてあげる」
「……辛い。すごく辛いんですけど、何ですかこれは」
アルゴライムは、底に残ったお茶を見ながらヒトミに問いかけた。
「お茶よ。私の故郷の、だけどね」
イタズラか悪意か、ヒトミはアルゴライムに笑いかけた。
そのお茶は、香りは普通の甘めのものだったが、口に含むと苦く辛く、アルゴライムが知っている常識では、好んで飲もうとは誰も思わない。ただ苦いだけで栄養があるように思えなかったからだ。
「……前から思っていたことを一つ聞いてもいいですか? 」
「ええ。どうぞ」
アルゴライムができるだけそのお茶を遠ざけると、少しヒトミを睨んでそう呟いた。
「……どこまで、知って、いるのですか? 」
アルゴライムは、目を伏せて下唇を噛み締め、聞くのを躊躇っていた。けれど、聞き終えると、少しホッとしたように目の力を抜いていた。
「何を、とは聞かないわ。その答えは『全て』よ」
「……全てって、昔から……ですか? 」
「あなたの覚えていないことも全て。あの事件のこととか」
それを聞くとアルゴライムは、机に伏せて「うぅぅ」と呻き声を出しながら恥ずかしがっているようだった。ヒトミはそれを見てクスクスと笑っていたけれど、少ししてと物音一つ出さなくなったアルゴライムを「やりすぎたかも」と言うような顔で見た。
「ア、アルゴライムさん? あの、えっと、お話……できます? 」
「……」
無反応。沈黙。黙秘。アルゴライムは体を動かすことなく、全面的に話したくないと表していた。けれど、このままではいけないと悟ったのか、一度強く机に頭を打ち付けると、ヒトミの方を見た。
「……事件とか、あったということしか知らないけれど、もういいですか? 『敬意』何て捨てても」
アルゴライムは、ときどき曲がっているが、ほとんど景色が変わらない道をヒトミの案内の通り歩いている。
「…………ここよ」
ヒトミが案内したところには、アノニムの部屋と同じく柱があるだけだった。部屋への入り方も一緒。同じようにして二人はなかに入った。
「……お茶でも飲んでちょうだい」
ヒトミの部屋、そこには木製の小さな小屋の一室ような空間があった。ベッドが一つ、小さなテーブルと椅子が一つ、クローゼットのような戸棚のようなものが三つ。人里離れたログハウス。そんな印象もあった。
「ここは何ですか? 」
アルゴライムは、リリスをベッドに寝かせて一つしかない椅子に座り、出されたお茶を口にした。
「口に合うかしら? たぶん、今吐き出さないように必死だと思うけれど……」
ヒトミが立ったままお茶を飲んで目だけでアルゴライムを見ると、アルゴライムは口をおさえて小刻みに震えていた。
「飲んでくれるわよね? 」
ヒトミの顔は、不自然に笑っていた。アルゴライムが吐き出そうとしているものと同じお茶を平然と飲み、少し面白がっているようにも見える。そんな姿を涙目で確認すると、覚悟を決めてアルゴライムはお茶を飲み込んだ。
「飲めたのね。いい子だからお話ししてあげる」
「……辛い。すごく辛いんですけど、何ですかこれは」
アルゴライムは、底に残ったお茶を見ながらヒトミに問いかけた。
「お茶よ。私の故郷の、だけどね」
イタズラか悪意か、ヒトミはアルゴライムに笑いかけた。
そのお茶は、香りは普通の甘めのものだったが、口に含むと苦く辛く、アルゴライムが知っている常識では、好んで飲もうとは誰も思わない。ただ苦いだけで栄養があるように思えなかったからだ。
「……前から思っていたことを一つ聞いてもいいですか? 」
「ええ。どうぞ」
アルゴライムができるだけそのお茶を遠ざけると、少しヒトミを睨んでそう呟いた。
「……どこまで、知って、いるのですか? 」
アルゴライムは、目を伏せて下唇を噛み締め、聞くのを躊躇っていた。けれど、聞き終えると、少しホッとしたように目の力を抜いていた。
「何を、とは聞かないわ。その答えは『全て』よ」
「……全てって、昔から……ですか? 」
「あなたの覚えていないことも全て。あの事件のこととか」
それを聞くとアルゴライムは、机に伏せて「うぅぅ」と呻き声を出しながら恥ずかしがっているようだった。ヒトミはそれを見てクスクスと笑っていたけれど、少ししてと物音一つ出さなくなったアルゴライムを「やりすぎたかも」と言うような顔で見た。
「ア、アルゴライムさん? あの、えっと、お話……できます? 」
「……」
無反応。沈黙。黙秘。アルゴライムは体を動かすことなく、全面的に話したくないと表していた。けれど、このままではいけないと悟ったのか、一度強く机に頭を打ち付けると、ヒトミの方を見た。
「……事件とか、あったということしか知らないけれど、もういいですか? 『敬意』何て捨てても」
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