炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

11節 愚痴を愚痴って愚痴が愚痴を呼び起こし愚痴が消える

「ちょっと、話聞いてるの? アルゴライム」

「しっかりと聞いていますよ。ですが、少し私の話を聞きなさい」

 アルゴライムが今までに見せたことのない怒り方をしていた。それでも崩れない敬語からは、何かの執念のようなものを感じた。姉に何度言われても直さなかった敬語には、何かしらのこだわりはあったのだろう。けれど、ここまで来るともはや呪いのようなものすらに思えるのだ。

「いいわ……。気が済むまで話して。時間はたっぷりとあるのだから」

「良いですよ。私が小さいと言われたくない理由を、簡潔にお話いたしますので」

 アルゴライムは、そう言うと一度大きく深呼吸をした。そして、再び息を吸うと、そのまま話始めた。

「確かに私の身長は137センチメートルです。この数年間、何度測ってもその事実が変わることなどありませんでした。しかし、お姉ちゃんの身長は168センチメートル。これは、不公平としか言い様のないことだと私は思います。なぜ同じ人間、同じ血筋なのにここまで違うのか、何度も自問自答を繰り返しました。けれど、答えが出ることなどありませんでした。お姉ちゃんとは30センチメートル以上も身長が離れているのです。一緒に歩いているときの私の気持ちがあなたにわかりますか? 例えば、お姉ちゃんの学校での友人と会ったときなどです」

 説教口調でペラペラと話続けていたアルゴライムだが、突然話の流れが途切れた。ヒトミに答えを求めているのだ。ヒトミは、その事を察すると、少し考えだが、確かな答えにはたどり着かなかった。

「いいえ、憶測でしか答えはないわ」

「その憶測で良いので話してください。もしかしたら合っているかもしれないので」

 不確かなことを言ってアルゴライムをさらに怒らせたくはなかったが、言わないと終わりそうにない説教だったので、ヒトミは言うことにした。

「……小さいって言われる……でしょ? 」

「半分正解で半分足りませんね」

 ヒトミの答えにアルゴライムは即答した。合っている。しかし、少し足りない。一番言われたくない言葉が抜けているのだ。

「正解はお姉ちゃんと比べられて小さいと言われるです」

「ああ、そういうことね。それなら納得できるわ……」

 ようやく説教が終わって続きが読める。ヒトミがそう確信したときだった。しかし、アルゴライムの話す勢いは止まらずにずっと話そうとしていた。

「それだけではありません。前にお姉ちゃんと四日先輩と六日さんと私で遊園地に言ったときなんて扱いは最低でしたよ。『これ子供用じゃないよ? 買い間違えちゃったのかな? 』って、私は小学生ですか? 高校生だったんですけど、私。私小学生じゃなかったんですよ? それどころか中学生でもありませんでした。それなのにこの扱い、私が覚えているなかで最低の出来事ですよ! 」

「落ち着いて、落ち着いて。もう昔の話じゃないの」

「……まあ、そうなんですけどね。とりあえず、これが私の小さいって言われたくない理由です。わかっていただけましたか? 」

 アルゴライムは正気に戻ったようだ。誰にも言っていなかった愚痴を吐き出せて気が楽になったのだろう。ヒトミの目を見てしっかりと目があったことを確認すると、再びソファに深く座り込み、本を片手に持った。

「続きを読むつもりね。私も一緒に読んでも良いかしら? 」

「……どうぞ」

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