炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

第2部1章1節 神界

 私は、神界と言うのだからあのときのように真っ白な空間を想像してました。けれど、実際に見てみると、私たちの言う天国のようでも地獄のようでもなく、西洋の宮殿のような華やかな場所でした。

 違うのでしょうけど、大理石のようなもので出来た大きな柱。宙で雲のように揺らめく白く半透明な布のような薄いもの。全方角から注がれる日の光とはまた違った暖かい光。全てが幻想的な空間でした。

 そこに一人、真っ白なワンピースを着た私が立っているのです。何て夢のような出来事なのでしょうか。一知人にここで待っているようにと言われてほんの数刻。その知人が目の前に現れました。


「やあ、待たせたな。どうだい? 神界は」

 アノニムが、手を降りながらアルゴライムの方へゆっくりと歩いてきた。いや、アノニムだと言うことはわかるが、姿はさっきまでとは全く違う。人の形を模していることには変わらない。しかし、中性的な子供ではなく、中性的な大人であった。

「アノニム……ですよね? 」

 アルゴライムも、思わず不審に思ってしまうほど見た目が変わり、美しい服を着ていた。着ている服は、アルゴライムのものとは違い、和服で、黒い袴のようだった。この白い空間に、アノニムの黒い服はとても浮いていた。

「私以外に誰がいるんだい? ああ、姿が違うから不安なのか」

「ええ、まあ……」

 アルゴライムは、少しボーッとしていた。この空間の美しさもあるが、一番見とれてしまうのは、アノニムの美しさだった。何故その顔で降りなかったのかと疑問に思うほど、その顔は誰が見ても美しいものだった。

「ああ、顔かい? 悪いんだけど私たち管理者はこの姿で降りるのを神に禁じられているんだ」

「何故……。あ、心が読めるんでしたよね、確か」

 気になっていたことを図星でつかれたアルゴライムは、気になってアノニムに聞こうとした。しかし、その瞬間にアノニムが心を読むことができると言うことを思い出した。

「ああ。そういうことだ」

 アノニムは、やけに得意気に言った。そして、一瞬だけイライラするような笑みを浮かべた。自慢がしたかったのか、色々話せる者は少ないから楽しいのか、少し楽しそうにも見えた。

「そう言えば、何故そんなに美形なのですか? 本当に、腹立たしいほどに」

「初代神の意向だ。こういう顔が好きだったらしい。知らないが。あと、禁じられている理由だが、昔管理者が一人、美しすぎたせいで貴族に捕まったことがあるらしい。考えたくもない。それが面倒だから神は禁じた。それだけだ」

 アノニムは、アルゴライムが疑問に思ったことを脳内に浮かべると、その説明を次々にして行き、ずっと話続けていた。このあとも、面倒な理由、初代神のこと、二代目神のことなど、放っておくといつまでもアノニムは話しそうだった。

「あの、そろそろいいですか? 」

「……どうぞ? 」

 アノニムには、アルゴライムが何を言おうとしているかわかっているはずだ。しかし、何も言おうとせずに、アルゴライムの発言を許した。

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