炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
46節 壊れる世界とエラー
そんな世界、破壊せずに保存するなど魔力の無駄遣い以外のなにものでもない。
だが、存在する生命体は、良い者ばかりだった。しかし、神は産み出すことと消滅させることは可能だったが、救うことはできなかった。
そのために、都 若菜はこの世界に転移してくる必要があったのだ。神が救えなかった者たちを救うために、都 若菜という融通のきく生命体を転移させる必要があったのだ。
それに、神にとっては好都合だった。大好きな世界、地球からエラーを追い出すことができるのだ。そして、若菜が地球に戻れないように殺したのも神だ。不自然な形で熱中症を引き起こしたのも神だ。魔力も与えていないのに思い通りに成長を続ける地球を、神は心から気に入っていた。そんな地球から大嫌いなエラーを撤去できる。それは、心の底から喜べることだったのだ。
地球にエラーが落とされてしまったのも、元を辿れば管理者エラーのせいだった。生命体エラーの管理を管理者エラーに丸投げしていた神は、知らぬ間にエラーを地球に落とされてしまっていたのだ。アノニムとズィミアの作戦でもあった。特になんの問題も起きなかったから何もなかったが、問題が起きていれば、少なくとも片方は存在を消されていた。
気に入られた世界に産まれた、いらない存在。その存在は、若菜や麗菜を含めて六人いた。そのうちの五人が既に地球を去った。殆どが神の手により消され、不慮の事故にあってしまっている。
若菜もそうだ。若菜は、吸血鬼『ヨルカ』として産まれてすぐに神に殺されてしまっていた。もう必要のない肉体だからと、魂に負担がかかってしまうからなどと何かと理由をつけ、止め続けていた管理者も根負けしてしまったのだ。
そうして二度死んだ後、若菜は、再び死のうとしているのだった。
「わかった。その頼みはきこう。少し待ってくれ」
アルゴライムの頼みを聞いたとき、アノニムは恐らく頷いた。姿がなかったから見ることはできなかったが、アルゴライムはそう感じた。
「リリス、少し用事ができた。しばらくここにいてくれ」
「え! せっかくライムを探しに行こうと思っていたのに……。まあいいわ、待っているから早くね」
一戦を終えたクローバーの館、ずっと目を閉じて考え込むような姿勢をとっていたアノニムがいきなり目を開けて言った。精神的にも身体的にも疲れているはずのリリスは、何故か出掛ける準備をしていたが、その理由がすぐにわかった。リリスは、突然いなくなってしまったアルゴライムを、探しに行こうとしていたのだ。
「言っただろう、すぐに戻ると」
アノニムは、そうとだけ言うと、空中に浮かんだ。羽はないから空中にただ立っているだけにも見える。そして、そのまま飛んでいった。
「アノニムはいつもせっかちよね……。あ、ライムが帰ってきたときのために、先にパーティーの支度でもしようかしら。きっと彼女、喜んでくれるわよね! 」
館は、ほぼほぼ半壊状態だった。そんな中、図書館とそこに通ずる道は無事だった。その道を、明るい日光の下、もうこの世界では唯一の鬼狼になってしまったリリスは、進んで行った。
種族よりも友人を、母親殺しには帰る家がないのだから、もう友人のために生きるしかない。そう確信してしまったのだ。
だが、存在する生命体は、良い者ばかりだった。しかし、神は産み出すことと消滅させることは可能だったが、救うことはできなかった。
そのために、都 若菜はこの世界に転移してくる必要があったのだ。神が救えなかった者たちを救うために、都 若菜という融通のきく生命体を転移させる必要があったのだ。
それに、神にとっては好都合だった。大好きな世界、地球からエラーを追い出すことができるのだ。そして、若菜が地球に戻れないように殺したのも神だ。不自然な形で熱中症を引き起こしたのも神だ。魔力も与えていないのに思い通りに成長を続ける地球を、神は心から気に入っていた。そんな地球から大嫌いなエラーを撤去できる。それは、心の底から喜べることだったのだ。
地球にエラーが落とされてしまったのも、元を辿れば管理者エラーのせいだった。生命体エラーの管理を管理者エラーに丸投げしていた神は、知らぬ間にエラーを地球に落とされてしまっていたのだ。アノニムとズィミアの作戦でもあった。特になんの問題も起きなかったから何もなかったが、問題が起きていれば、少なくとも片方は存在を消されていた。
気に入られた世界に産まれた、いらない存在。その存在は、若菜や麗菜を含めて六人いた。そのうちの五人が既に地球を去った。殆どが神の手により消され、不慮の事故にあってしまっている。
若菜もそうだ。若菜は、吸血鬼『ヨルカ』として産まれてすぐに神に殺されてしまっていた。もう必要のない肉体だからと、魂に負担がかかってしまうからなどと何かと理由をつけ、止め続けていた管理者も根負けしてしまったのだ。
そうして二度死んだ後、若菜は、再び死のうとしているのだった。
「わかった。その頼みはきこう。少し待ってくれ」
アルゴライムの頼みを聞いたとき、アノニムは恐らく頷いた。姿がなかったから見ることはできなかったが、アルゴライムはそう感じた。
「リリス、少し用事ができた。しばらくここにいてくれ」
「え! せっかくライムを探しに行こうと思っていたのに……。まあいいわ、待っているから早くね」
一戦を終えたクローバーの館、ずっと目を閉じて考え込むような姿勢をとっていたアノニムがいきなり目を開けて言った。精神的にも身体的にも疲れているはずのリリスは、何故か出掛ける準備をしていたが、その理由がすぐにわかった。リリスは、突然いなくなってしまったアルゴライムを、探しに行こうとしていたのだ。
「言っただろう、すぐに戻ると」
アノニムは、そうとだけ言うと、空中に浮かんだ。羽はないから空中にただ立っているだけにも見える。そして、そのまま飛んでいった。
「アノニムはいつもせっかちよね……。あ、ライムが帰ってきたときのために、先にパーティーの支度でもしようかしら。きっと彼女、喜んでくれるわよね! 」
館は、ほぼほぼ半壊状態だった。そんな中、図書館とそこに通ずる道は無事だった。その道を、明るい日光の下、もうこの世界では唯一の鬼狼になってしまったリリスは、進んで行った。
種族よりも友人を、母親殺しには帰る家がないのだから、もう友人のために生きるしかない。そう確信してしまったのだ。
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