炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
37節 姉妹
コツコツコツ
階段を降りる音は、やけに響いた。暗いところなのに灯りもなく、アルゴライムはただうっすらと見える段差を下っていった。
「……誰よ……今日は誰も来ないんじゃなかったの? 」
懐かしい声が聞こえた。少し前までは大好きだった姉の、今は殺すべき対象の声。そして、会いたくて会いたくない者の声だ。
「……」
コツコツコツ
「もしかして子供たちが度胸試しに来たの? それだったら戻りなさい。メイリスが怒るわよ」
アルゴライムが無言で近づき続けると、キューバルは優しくそう呼び掛けた。
「えっ……」
地下に降りたその空間に、キューバルどころか生き物の影はなかった。それを見たアルゴライムは、思わず声を出してしまった。
「と言うとでも思った? 貴女は誰よ、勝手に入って来ないでもらえ……る……? え? 」
キューバルは、アルゴライムのすぐ後ろに立っていた。アルゴライムは、ゾクッとしたけれど、キューバルの顔を見上げていた。
「わ……ヨ……ルカ? どうしてこんなところにいるのよ」
キューバルは、少し慌てたようにはじめは落ち着いていなかったが、後半は冷静になって言った。
「お姉ちゃん……知らばっくれないでもらえませんか? 面倒なので」
アルゴライムは、懐かしい顔と声に一瞬泣き出しそうになってしまったが、一つ確信を持っていることがあり、どうにか泣かずに冷静に会話をしようとすることができた。
「何? 私何か知らばっくれていたかしら? あと、どうしたの? 言葉遣いは貴女らしくないじゃない」
キューバルは、アルゴライムの顔をしっかりと見ながら言った。そして、アルゴライムに向けて笑いかけていた。
「言っていたことと行動が違いますが、忘れたんですか? まあ、とても昔の話なので忘れていても不思議ではありませんが」
とても会いたかったはずの姉を前にしているのに、アルゴライムは笑顔を見せず、冷たく鋭い表情でキューバルを見て言った。会えた喜びに感情を傾けては殺すことができない。アルゴライムはそう判断したのだ。
「何のこと? それより、どうしてここにいるの? 」
「……お姉ちゃん。貴女は私の姉ではなく、私は貴女の妹ではない。貴女はそう言いたいのですね? 」
「何でそんなことを言うの? 私は貴女の姉であるわ。間違いなくね」
「姉は妹に笑わないものですよ。忘れましたか? 」
アルゴライムが昔、ヨルカとしてルータスに言った出任せだった。しかし、その出任せをキューバルは本当のことだと言い、ヨルカを守ったのだ。その事を、キューバルは忘れてしまっていた。
「……あんなの嘘に決まっているでしょう? 貴女を守るための嘘だったのだから」
キューバルは、冷たい表情を微かに浮かべたが、すぐに笑顔に戻って言った。わざとらしい笑顔に、アルゴライムは少しだが、煩わしさを覚えた。
「では、聞き方を変えます。貴女、麗菜にとって、あの当時の私、ヨルカは妹ではない。そう言うことですね。そして、さっき私が若菜であることに気がついて今は貴女にとって私は妹である。そう言いたいのですよね? お姉ちゃん。何か違うところがあったら言ってください。次以降会うときがあったらの話ですが、気を付けますから」
階段を降りる音は、やけに響いた。暗いところなのに灯りもなく、アルゴライムはただうっすらと見える段差を下っていった。
「……誰よ……今日は誰も来ないんじゃなかったの? 」
懐かしい声が聞こえた。少し前までは大好きだった姉の、今は殺すべき対象の声。そして、会いたくて会いたくない者の声だ。
「……」
コツコツコツ
「もしかして子供たちが度胸試しに来たの? それだったら戻りなさい。メイリスが怒るわよ」
アルゴライムが無言で近づき続けると、キューバルは優しくそう呼び掛けた。
「えっ……」
地下に降りたその空間に、キューバルどころか生き物の影はなかった。それを見たアルゴライムは、思わず声を出してしまった。
「と言うとでも思った? 貴女は誰よ、勝手に入って来ないでもらえ……る……? え? 」
キューバルは、アルゴライムのすぐ後ろに立っていた。アルゴライムは、ゾクッとしたけれど、キューバルの顔を見上げていた。
「わ……ヨ……ルカ? どうしてこんなところにいるのよ」
キューバルは、少し慌てたようにはじめは落ち着いていなかったが、後半は冷静になって言った。
「お姉ちゃん……知らばっくれないでもらえませんか? 面倒なので」
アルゴライムは、懐かしい顔と声に一瞬泣き出しそうになってしまったが、一つ確信を持っていることがあり、どうにか泣かずに冷静に会話をしようとすることができた。
「何? 私何か知らばっくれていたかしら? あと、どうしたの? 言葉遣いは貴女らしくないじゃない」
キューバルは、アルゴライムの顔をしっかりと見ながら言った。そして、アルゴライムに向けて笑いかけていた。
「言っていたことと行動が違いますが、忘れたんですか? まあ、とても昔の話なので忘れていても不思議ではありませんが」
とても会いたかったはずの姉を前にしているのに、アルゴライムは笑顔を見せず、冷たく鋭い表情でキューバルを見て言った。会えた喜びに感情を傾けては殺すことができない。アルゴライムはそう判断したのだ。
「何のこと? それより、どうしてここにいるの? 」
「……お姉ちゃん。貴女は私の姉ではなく、私は貴女の妹ではない。貴女はそう言いたいのですね? 」
「何でそんなことを言うの? 私は貴女の姉であるわ。間違いなくね」
「姉は妹に笑わないものですよ。忘れましたか? 」
アルゴライムが昔、ヨルカとしてルータスに言った出任せだった。しかし、その出任せをキューバルは本当のことだと言い、ヨルカを守ったのだ。その事を、キューバルは忘れてしまっていた。
「……あんなの嘘に決まっているでしょう? 貴女を守るための嘘だったのだから」
キューバルは、冷たい表情を微かに浮かべたが、すぐに笑顔に戻って言った。わざとらしい笑顔に、アルゴライムは少しだが、煩わしさを覚えた。
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