炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
31節 遥か昔の記憶part16
「目的……ね。全ての吸血鬼をこの世の者の目から遠ざける以外にあると思う? 」
ルータスは言い終えると、わかりやすい偽りの笑顔でヨルカに近づいた。
「もちろんヨルカも例外じゃない。そのくらいわかってたことだよね? ついてきて」
ルータスはヨルカの腕をつかんで引っ張って言った。ヨルカは戸惑いながらも、できるだけ動揺しないようにしてルータスの腕を払い除けた。
「自分で歩ける。因みにどこに行くの? 」
「……教えない。ヨルカはただついてくれば良い。キューバルもそこにいる」
ヨルカはため息をつきながらも、ルータスについていった。まだ昼間だというのに空は暗い。屋敷の使用人が唱えた魔術の影響だが、屋敷が燃えた煙の影響でもあった。
ひたすら無言が続いた。少し開けた森の道を歩き、街に入ってもずっとまっすぐ歩き、賑わう街の中心を過ぎ、建物が少なくなった。その間、ヨルカが耳にしていた言葉は全て、吸血鬼に対する偏見と迫害だった。
「ここに入って地下に降りて。そこにキューバルがいる」
着いた所は墓場だった。墓場と言っても、教会があるわけでもなく、誰かが死体を埋め、それを知った他の誰かがまた死体を埋め、それが続いてできた、死体の捨て場だ。
「貴女、こんなところに住んでたのね」
墓場の中心に一つ、小さな建物がたっていた。周辺には墓はなく、その地下に何かがあることが用意に想像できた。
「別に。食料の調達が楽そうだったから、空き家だったしここに住んだだけ」
建物の扉を開け、ルータスは言った。建物の中は、目の前に下る階段があるだけで、他には何も見えなかった。
「私が先に行くことに意味は? 」
「食料を取ってから行く。下に私の娘みたいなのがいるから、従えば良い。年齢も見た目も妹みたいだけど妹じゃない」
姉妹なんてうんざりだ。ルータスがそう言いたいのがヨルカにも伝わった。それを感じとると、ヨルカは何も言わずに建物の中に入っていった。
キューバルに会いたかったわけでもない。ルータスの娘みたいなのに会いたかったわけでもない。ただ、ルータスに対する罪悪感と、何故ここまでするのか、その理由が知りたかっただけだ。
「……貴女がヨルカっていう吸血鬼? 」
ヨルカが階段を下りて地下に向かうと、幼い少女に声をかけられた。
「そうよ。貴女は? ルータスの娘? 」
「そう。私はメイリス。でも本当の娘じゃない」
メイリスは無表情でヨルカを睨むように見ていた。ルータスにずっと吸血鬼は恨む対象だと教えられていた。
「……恐らく、吸血鬼と狼の間に生まれた捨て子でしょう。ルータスが鬼狼と名乗っているのだから」
「正解。私は吸血鬼だけじゃなくて狼も恨んでる。お母さんは、吸血鬼と人間を恨んでる。でも人間は許すって言ってる。私は狼を許すって言った。だから、吸血鬼だけは許さない」
メイリスの言っていることはメチャクチャで、ヨルカには理解できなかった。
「ヒナ! 」
メイリスはヒナの名前を叫んだ。ヨルカが驚き、メイリスの見ているヨルカの後ろを振り替えると、そこにはヒナがいた。
「ヒナ? なんでこんなところにいるの? 」
ヒナは答えなかった。ただ、いつもとは違う黒い手袋をつけ、冷たい表情でヨルカの目を見つめていた。
ガッ
ヨルカの後頭部に強い衝撃が走った。頭が急に重くなり、倒れかけた。そして、ヒナがそのままヨルカの頭を床に叩きつけた。
ルータスは言い終えると、わかりやすい偽りの笑顔でヨルカに近づいた。
「もちろんヨルカも例外じゃない。そのくらいわかってたことだよね? ついてきて」
ルータスはヨルカの腕をつかんで引っ張って言った。ヨルカは戸惑いながらも、できるだけ動揺しないようにしてルータスの腕を払い除けた。
「自分で歩ける。因みにどこに行くの? 」
「……教えない。ヨルカはただついてくれば良い。キューバルもそこにいる」
ヨルカはため息をつきながらも、ルータスについていった。まだ昼間だというのに空は暗い。屋敷の使用人が唱えた魔術の影響だが、屋敷が燃えた煙の影響でもあった。
ひたすら無言が続いた。少し開けた森の道を歩き、街に入ってもずっとまっすぐ歩き、賑わう街の中心を過ぎ、建物が少なくなった。その間、ヨルカが耳にしていた言葉は全て、吸血鬼に対する偏見と迫害だった。
「ここに入って地下に降りて。そこにキューバルがいる」
着いた所は墓場だった。墓場と言っても、教会があるわけでもなく、誰かが死体を埋め、それを知った他の誰かがまた死体を埋め、それが続いてできた、死体の捨て場だ。
「貴女、こんなところに住んでたのね」
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建物の扉を開け、ルータスは言った。建物の中は、目の前に下る階段があるだけで、他には何も見えなかった。
「私が先に行くことに意味は? 」
「食料を取ってから行く。下に私の娘みたいなのがいるから、従えば良い。年齢も見た目も妹みたいだけど妹じゃない」
姉妹なんてうんざりだ。ルータスがそう言いたいのがヨルカにも伝わった。それを感じとると、ヨルカは何も言わずに建物の中に入っていった。
キューバルに会いたかったわけでもない。ルータスの娘みたいなのに会いたかったわけでもない。ただ、ルータスに対する罪悪感と、何故ここまでするのか、その理由が知りたかっただけだ。
「……貴女がヨルカっていう吸血鬼? 」
ヨルカが階段を下りて地下に向かうと、幼い少女に声をかけられた。
「そうよ。貴女は? ルータスの娘? 」
「そう。私はメイリス。でも本当の娘じゃない」
メイリスは無表情でヨルカを睨むように見ていた。ルータスにずっと吸血鬼は恨む対象だと教えられていた。
「……恐らく、吸血鬼と狼の間に生まれた捨て子でしょう。ルータスが鬼狼と名乗っているのだから」
「正解。私は吸血鬼だけじゃなくて狼も恨んでる。お母さんは、吸血鬼と人間を恨んでる。でも人間は許すって言ってる。私は狼を許すって言った。だから、吸血鬼だけは許さない」
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