炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
16節 遥か昔の記憶part1
「お姉さま! 」
約四千二百年前、アルゴライムは『ヨルカ』という名の吸血鬼としてこの世界に生まれた。
なんの不具合か、記憶が消えてしまっていて、キューバルが麗菜だということに気づいていなかった。が、「どこか懐かしい感じがする」とキューバルが言ったことにより、ヨルカはキューバルの妹となった。
「ヨルカ様。どうしたのですか? キューバル様はただいま会議に出席されておりますが」
大きな扉の前、地下図書室への扉の前で大きな吸血鬼の男がヨルカに言った。
「そうか……。じゃあ、あとでいいや! 」
今開かれている会議は、吸血鬼、狼、人間の代表で開かれている平和のための会議だ。ヨルカはそれを知っていたため、走って二階にある自室へと戻った。
「そっか~お姉さま会議か……」
ヨルカは今年で丁度四百才になる。吸血鬼では大人の振りがしたい年頃だ。姉と話したくても最近は会議が多く、話せていない。それを悲しく見せないようにしているのだ。
コンコンコンッ
「ヨルカ様、失礼します」
ノックの音と共に女の子が聞こえた。使用人として屋敷に支えている人間だ。僅か十七才の少女だったが、素晴らしい働きを見せていた。
「ルーちゃん……どうしたの? 」
「ヨルカ様、私とお話ししませんか?」
「お話……? する! ルーちゃんとお話ししたいな」
ヨルカの表情は明るくなった。吸血鬼の四百才は、人間では十才ほどの幼い子なのだ。(吸血鬼は八百才で成人。狼の平均寿命は三十年。鬼狼は四百才で成人。キューバルは六百五十八才の若さで富を築いた)
「ヨルカ様、何のお話をいたしましょうか」
「えっとね、お姉さまのお話がしたい! 」
「ヨルカ様は本当にキューバル様のことがお好きですね、羨ましい限りです」
ヨルカにとって、記憶を失ってもなお変わらなかったものは、姉に対する妹としての尊敬と愛情だった。若菜としても、麗菜を尊敬し、アルゴライムとしても、会えぬ姉に対して愛を送っていた。
「お姉さまは強くて、頭もよくて、優しいから! だからね、ヨルカ、お姉さま大好きなんだ! 」
「きっと、キューバル様もヨルカ様のことが大好きなのでしょうね」
ヨルカはその言葉を聞くと、少しだけ暗い表情を浮かべた。普段ならば、このままもう一度笑顔を作り、何事もなかったかのように話すのだが、今はそうしなかった。
「ううん。ヨルカ、スキルが強いってだけで、他は、すっごく弱いもん。だから、お姉さまかヨルカのこと嫌いだよ……」
「そんなことはありませんよ。ヨルカ様はご自分を弱いと仰有られますが、私はその千分の一の力もありません。ヨルカ様はお強いです。そして、例えヨルカ様が弱いとしても、キューバル様はそんなことで嫌いになんてなりませんよ」
「……ルーちゃん。じゃあ、お姉さまはどうして私と会ってくれないの? 」
「それは……」
言いかけたその時だった。廊下から物凄い怒鳴り声が聞こえてきた。
「ルイッ! ルイはどこっ! 掃除が終わったからってサボってるんじゃないっ! 今すぐに仕事に戻れ! 」
「……リサさんが呼んでいるので失礼します」
ルイが扉に手をかけようとした時だった。ヨルカがルイの服を後ろから引っ張った。
「ヨルカ様、どうかなされましたか? 」
「ヨルカ、リサ嫌い。だから行っちゃダメ」
ヨルカの顔は、泣くのを我慢しているようにも見えた。ルイはそれを見て、笑顔をつくって言った。
「そんなこと言わないでください。リサさんは良い人ですよ」
「嘘。ヨルカとお姉さまの前では笑顔で優しいけどヨルカ知ってるよ、ヨルカたちがいないところでみんなにあんな風に怒鳴ってるの知ってるよ。ルーちゃん悪くないのに怒られちゃうもん」
「……」
ルイは何も言うことができなかった。事実だったからだ。リサは、ヨルカのような上の立場の者には笑顔で優しかったが、ルイのような下の立場の者には厳しく、キツい表情で見ていた。
コンコンコンッ
「ヨルカ様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか? 」
ノックの音と共にリサの優しい声が聞こえた。ルイがこの部屋にいることがバレてしまったのかもしれない。
「うん。いいよ」
ヨルカは、答えた。そして、ルイを守るようにリサとルイの間に立った。
「どうかなさったのですか? ヨルカ様」
部屋に入ったリサは、少し驚いたようにも見えたが、笑顔で言った。
「ルイは悪くないもん」
約四千二百年前、アルゴライムは『ヨルカ』という名の吸血鬼としてこの世界に生まれた。
なんの不具合か、記憶が消えてしまっていて、キューバルが麗菜だということに気づいていなかった。が、「どこか懐かしい感じがする」とキューバルが言ったことにより、ヨルカはキューバルの妹となった。
「ヨルカ様。どうしたのですか? キューバル様はただいま会議に出席されておりますが」
大きな扉の前、地下図書室への扉の前で大きな吸血鬼の男がヨルカに言った。
「そうか……。じゃあ、あとでいいや! 」
今開かれている会議は、吸血鬼、狼、人間の代表で開かれている平和のための会議だ。ヨルカはそれを知っていたため、走って二階にある自室へと戻った。
「そっか~お姉さま会議か……」
ヨルカは今年で丁度四百才になる。吸血鬼では大人の振りがしたい年頃だ。姉と話したくても最近は会議が多く、話せていない。それを悲しく見せないようにしているのだ。
コンコンコンッ
「ヨルカ様、失礼します」
ノックの音と共に女の子が聞こえた。使用人として屋敷に支えている人間だ。僅か十七才の少女だったが、素晴らしい働きを見せていた。
「ルーちゃん……どうしたの? 」
「ヨルカ様、私とお話ししませんか?」
「お話……? する! ルーちゃんとお話ししたいな」
ヨルカの表情は明るくなった。吸血鬼の四百才は、人間では十才ほどの幼い子なのだ。(吸血鬼は八百才で成人。狼の平均寿命は三十年。鬼狼は四百才で成人。キューバルは六百五十八才の若さで富を築いた)
「ヨルカ様、何のお話をいたしましょうか」
「えっとね、お姉さまのお話がしたい! 」
「ヨルカ様は本当にキューバル様のことがお好きですね、羨ましい限りです」
ヨルカにとって、記憶を失ってもなお変わらなかったものは、姉に対する妹としての尊敬と愛情だった。若菜としても、麗菜を尊敬し、アルゴライムとしても、会えぬ姉に対して愛を送っていた。
「お姉さまは強くて、頭もよくて、優しいから! だからね、ヨルカ、お姉さま大好きなんだ! 」
「きっと、キューバル様もヨルカ様のことが大好きなのでしょうね」
ヨルカはその言葉を聞くと、少しだけ暗い表情を浮かべた。普段ならば、このままもう一度笑顔を作り、何事もなかったかのように話すのだが、今はそうしなかった。
「ううん。ヨルカ、スキルが強いってだけで、他は、すっごく弱いもん。だから、お姉さまかヨルカのこと嫌いだよ……」
「そんなことはありませんよ。ヨルカ様はご自分を弱いと仰有られますが、私はその千分の一の力もありません。ヨルカ様はお強いです。そして、例えヨルカ様が弱いとしても、キューバル様はそんなことで嫌いになんてなりませんよ」
「……ルーちゃん。じゃあ、お姉さまはどうして私と会ってくれないの? 」
「それは……」
言いかけたその時だった。廊下から物凄い怒鳴り声が聞こえてきた。
「ルイッ! ルイはどこっ! 掃除が終わったからってサボってるんじゃないっ! 今すぐに仕事に戻れ! 」
「……リサさんが呼んでいるので失礼します」
ルイが扉に手をかけようとした時だった。ヨルカがルイの服を後ろから引っ張った。
「ヨルカ様、どうかなされましたか? 」
「ヨルカ、リサ嫌い。だから行っちゃダメ」
ヨルカの顔は、泣くのを我慢しているようにも見えた。ルイはそれを見て、笑顔をつくって言った。
「そんなこと言わないでください。リサさんは良い人ですよ」
「嘘。ヨルカとお姉さまの前では笑顔で優しいけどヨルカ知ってるよ、ヨルカたちがいないところでみんなにあんな風に怒鳴ってるの知ってるよ。ルーちゃん悪くないのに怒られちゃうもん」
「……」
ルイは何も言うことができなかった。事実だったからだ。リサは、ヨルカのような上の立場の者には笑顔で優しかったが、ルイのような下の立場の者には厳しく、キツい表情で見ていた。
コンコンコンッ
「ヨルカ様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか? 」
ノックの音と共にリサの優しい声が聞こえた。ルイがこの部屋にいることがバレてしまったのかもしれない。
「うん。いいよ」
ヨルカは、答えた。そして、ルイを守るようにリサとルイの間に立った。
「どうかなさったのですか? ヨルカ様」
部屋に入ったリサは、少し驚いたようにも見えたが、笑顔で言った。
「ルイは悪くないもん」
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