炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

10節 ナナ

 アノニムは一時、作業を中断し、三階に向かった。

「何であんたがここにいるんだ。ナナ、お前はここにはこれないはずだろ? 」

「神の命よ。私だって管理者の一人、時間は限られるけどここにいることができる。で、理由よね。もちろんだけど、破壊の件よ」

 管理者のプログラムは生命体そっくりになっている。管理者が各世界に降り、生命体と会話する際に便利だからだ。そして、ナナと呼ばれた管理者には感情がない。

「だろうね。で、予定よりも三ヶ月は早いのだが、神はどういうつもりなんだ? 」

「それは、あなたに知らせる必要のないことよ。他になにか質問ある? 」

「神の目的は? 」

「メアリー・リリス・トキューバの永久凍結とその保管場所の確保。成功し次第、その他の魂も保管することよ。他になにか質問ある? 」

 魂の保存計画。神が何億年もエラーの魂を隔離し、二度と目にすることがないように破壊できない魂を閉じ込める計画を模索していたことはアノニムも知っていた。そして、そのときは従って凍結されようと覚悟していた。だが、リリスの様な一般の魂は本当に脆く、簡単に破壊できてしまう。そんな魂を凍結させるだなんて話は聞いていなかった。

「なぜリリスなんだ。他の魂でもいいだろう。それに、絶対にその他の魂の中に一般の魂も入っているだろ」

「ええ、その通りよ。神はエラーと関わりすぎた一般の魂にもエラーが生じている可能性があるから完全にその可能性が否定されるまで保管するらしいわ。そして、メアリー・リリス・トキューバは私達管理者の存在を知りすぎた。来世で何らかのエラーを生じる可能性がある。だから永久凍結。失敗し、破壊されても仕方がないとして処理する予定よ。他になにか質問ある? 」

 アノニムは少し苛ついていた。感情を持たない管理者は言葉の最後に必ず用件を聞いてくる。その証拠にナナと呼ばれる管理者はずっと「他になにか質問ある? 」という言葉を繰り返している。

「もうないよ。名無ナナ

「じゃあ、私は戻るわ。凍結されるんだったら色々と準備も必要なのだからね」

 名無、errorNo.1エラー番号1。初代エラーだ。エラー内容は『消滅せず、スキルの制限がない』。名無以前にもエラーが存在したらしいが、気づき次第、神が消滅させていたため、記録は残っていない。そんな中、名無はエラー持ちの管理者一号として生を受けたのだ。

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