炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
7節 匿名者~error~
アノニムはさらにフードを深く被った。リリスに目を見られないように配慮したのか、それはわからない。だが、何か呟いていた。
「アノニム……? 何をしているの? 」
リリスは話の途中で黙りこみ、うつむいたアノニムに疑問を持った。
アノニムがフードをはずしてリリスを見た。
「これでいいかい? 」
リリスは言葉が出なかった。目があった。その目は、この数ヵ月間、ずっとそばにあったものだった。アルゴライムの瞳そのものだった。
「君のお友だちの目をモデルにしたから簡単に作れたよ。アルゴライムだっけ、私も彼女のことは知ってるよ。会ったことはないけどな」
「まあ、この間町であんなにすごい騒ぎを起こしてしまったものね。だから知っているんでしょう? 」
アルゴライムはあのルータスとの騒ぎで、町を取り囲む壁や門を焦がし、破壊してしまった。修理費は全額負担し、修理するための人件費、元の壁の処理など全てを受け持っていた。元の壁は灰になるまで燃やしただけだが……。
「いや、その前から知っていたよ。彼女がこの世界に生まれる前からな」
「は? 」
「あ、いや。何でもない。……それより…来客だよ」
アノニムは、フードを再び被ると言った。そして、リリスがアノニムの向いた方を見ると、木の側に人が立っていた。
いや、違う。
焦げた木の側に吸血鬼が立っていた。
「ライ……ム? 」 
リリスが呼び掛けると、アルゴライムはゆっくりと口を開いた。
「帰りが遅いので、何かあったんじゃないかと思いましたよ。リース」
気が付くと、さっきまで明るかったはずの空が、夜ではない、何か別の闇で覆われていた。夜のように澄んでいる暗さではない。奥の見えない、生物の扱っていい闇ではなかった。
「はじめまして、アルゴライム・クローバー。こんなことしてくるなんて思わなかったよ」
アノニムはアルゴライムに手を差し出した。アルゴライムはその手を払って答えた。
「貴女、何者ですか? まず、名乗るのが常識では? 」 
「それは失礼。私はアノニムを名乗っているものです」
アルゴライムは少し黙って考えた後、答えた。
「私の考えすぎならば良いのですが、それは貴女の名前ではないですよね? 匿名さん」
アルゴライムが言うと、アノニムは笑った。今日はよく笑う。リリスはそう思った。
「流石だなerrorNo.3。私の名前はerrorNo.20だ。e20と呼んでもらおうか。だがな、言葉遣いには気を付けることだ。この程度の呪術、簡単に解除することができるぞ」
アノニムは黒い空を指差しながら脅すようにそう言った。しかし、アルゴライムには、その脅しなど通用しなかった。
「別に解除していただいて構いませんよ。リースがもういるので」
アルゴライムにそう言われたアノニムは少し悲しそうにも見えた。が、また笑っていた。
「あっそ、まあ、今君を殺すと怒られちゃうからやめとくか」
アノニムは腕を下ろして再び、アルゴライムに手を差し出した。
「まあ、アノニムでも、e20でも、好きな方で呼んでくれ。アルゴライム」
「私は貴女と握手する義理などないのですが、貴女が謎の声さんと関わりがあることはわかりました。一度家に来てください。そちらの方がゆっくりとお話ができると思いますので」
アルゴライムはもう一度手を払って答えた。アノニムは手を下ろし、答えた。
「ああ、そうだね。君の言っている謎の声はe16のことだろうし、行ってみるとするか」
リリスは話についていけなかった。が、二人が屋敷に戻ろうとしているので、何となくついていった。そして、一言だけアルゴライムに言った。
「ライムは、調節ができるようになるまでは、飛ばないでちょうだいね。この森が焼け野原になってしまうわ。そうなったら、困るでしょう? 」
「アノニム……? 何をしているの? 」
リリスは話の途中で黙りこみ、うつむいたアノニムに疑問を持った。
アノニムがフードをはずしてリリスを見た。
「これでいいかい? 」
リリスは言葉が出なかった。目があった。その目は、この数ヵ月間、ずっとそばにあったものだった。アルゴライムの瞳そのものだった。
「君のお友だちの目をモデルにしたから簡単に作れたよ。アルゴライムだっけ、私も彼女のことは知ってるよ。会ったことはないけどな」
「まあ、この間町であんなにすごい騒ぎを起こしてしまったものね。だから知っているんでしょう? 」
アルゴライムはあのルータスとの騒ぎで、町を取り囲む壁や門を焦がし、破壊してしまった。修理費は全額負担し、修理するための人件費、元の壁の処理など全てを受け持っていた。元の壁は灰になるまで燃やしただけだが……。
「いや、その前から知っていたよ。彼女がこの世界に生まれる前からな」
「は? 」
「あ、いや。何でもない。……それより…来客だよ」
アノニムは、フードを再び被ると言った。そして、リリスがアノニムの向いた方を見ると、木の側に人が立っていた。
いや、違う。
焦げた木の側に吸血鬼が立っていた。
「ライ……ム? 」 
リリスが呼び掛けると、アルゴライムはゆっくりと口を開いた。
「帰りが遅いので、何かあったんじゃないかと思いましたよ。リース」
気が付くと、さっきまで明るかったはずの空が、夜ではない、何か別の闇で覆われていた。夜のように澄んでいる暗さではない。奥の見えない、生物の扱っていい闇ではなかった。
「はじめまして、アルゴライム・クローバー。こんなことしてくるなんて思わなかったよ」
アノニムはアルゴライムに手を差し出した。アルゴライムはその手を払って答えた。
「貴女、何者ですか? まず、名乗るのが常識では? 」 
「それは失礼。私はアノニムを名乗っているものです」
アルゴライムは少し黙って考えた後、答えた。
「私の考えすぎならば良いのですが、それは貴女の名前ではないですよね? 匿名さん」
アルゴライムが言うと、アノニムは笑った。今日はよく笑う。リリスはそう思った。
「流石だなerrorNo.3。私の名前はerrorNo.20だ。e20と呼んでもらおうか。だがな、言葉遣いには気を付けることだ。この程度の呪術、簡単に解除することができるぞ」
アノニムは黒い空を指差しながら脅すようにそう言った。しかし、アルゴライムには、その脅しなど通用しなかった。
「別に解除していただいて構いませんよ。リースがもういるので」
アルゴライムにそう言われたアノニムは少し悲しそうにも見えた。が、また笑っていた。
「あっそ、まあ、今君を殺すと怒られちゃうからやめとくか」
アノニムは腕を下ろして再び、アルゴライムに手を差し出した。
「まあ、アノニムでも、e20でも、好きな方で呼んでくれ。アルゴライム」
「私は貴女と握手する義理などないのですが、貴女が謎の声さんと関わりがあることはわかりました。一度家に来てください。そちらの方がゆっくりとお話ができると思いますので」
アルゴライムはもう一度手を払って答えた。アノニムは手を下ろし、答えた。
「ああ、そうだね。君の言っている謎の声はe16のことだろうし、行ってみるとするか」
リリスは話についていけなかった。が、二人が屋敷に戻ろうとしているので、何となくついていった。そして、一言だけアルゴライムに言った。
「ライムは、調節ができるようになるまでは、飛ばないでちょうだいね。この森が焼け野原になってしまうわ。そうなったら、困るでしょう? 」
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