炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
2章 1節 名を捨てる覚悟
「は? リース、貴女家を出るって言いました? 」
アルゴライムが大声を出してそう言ったのと同時に店主は少し驚いたようだが、すぐにかしこまりました、と言い、店の奥に入っていった。
「え、私はクローバー家の方が資産もあるし、トキューバ家にはまだ跡取りがいるし、ライムとも一緒にいたいだけよ? 」
メアリーは普通の話をするのと同じ顔で、同じトーンで話した。
「そういう問題じゃないですよね? お父様やお母様が怒るでしょう? 」
「んー、そうねぇ。喧嘩売られても両親はあの屋敷には近づきたがらないわよ」
大声で話すアルゴライムと静かにいつも通り話すメアリーは対称的だった。
「え? なんでですか? 」
「あの近くに霧の泉があるのだけどあそこは時間の流れに置いていかれて呪われているらしいから」
「ああ、地図と歴史書を読んで見ました。そんなこともあるんですよね。でもそれで近づきたがらないのですか……」
二人の会話が静かに戻った。アルゴライムがふと店の外を覗くと、怪しんだのか興味があったのか、市民がこの店の方をジロジロと見ていた。
「ここでは少しあれなので、買い物を済ませて家でお話しませんか?」
メアリーも外の様子を見て同感した。
服を買った。無駄に少女趣味すぎで逆に動きにくかった服しかなかったアルゴライムは十着以上買った。それでも十$かからなかった。その後も食料や、日用品、また別の店で衣類を買って合計で十七$。全てトキューバ家の御用達でもあるほどの高級店での買い物だったが、この世界の物価が安すぎてアルゴライムにとってはとても安く思えた。
「さ、帰りましょうか」
メアリーがアルゴライムと荷物を半分に分けて言った。時間は夕暮れ。そろそろ門がしまって、飛ばなければこの街から出ることが出来なくなる。メアリーはそれでも構わないが、アルゴライムが吸血鬼であるとバレる訳には行かないから帰らなければいけない。
「はい、さっきの続きも話さなければですしね」
アルゴライムは威圧的な笑みを浮かべた。その笑みは黒い呪いのオーラを纏っているようにも見えた。
「ま、まあ早く帰りましょ、門が閉まったら帰れなくなるわ」
「……」
その後は少し沈黙が続いた。暗い森の中、普通に恐怖に思える。そんな静寂だった。
「遠いわね」
「二十分はかかりますからね」
「飛ばない?」
「飛び方知りません」
沈黙に痺れを切らしたメアリーが話しかけたが、ほとんど会話が続かず、途切れた。
「ねえ、ライム……私、ふざけたつもりは無いからね」
「はい? いきなりなんですか? 」
アルゴライムよりも少し前を歩いていたメアリーが振り向くと、その顔は何かを決心していた。
「私はトキューバを出たわ。もうこの名前を名乗ることは出来ないの。……だからね、私のあの言葉にはね、名前を捨てる覚悟があるのよ」
そう言ったメアリーの目は、森の暗闇と月の光に照らされて、海のように澄んだ碧は、透明感を増していた。そして、穏やかだったその目付きは、アルゴライムに厳しい目を向けていた。
「……そうですか。では……、名前をどうするつもりですか?」
ちょうど屋敷と街の中間地点。二人は紅と碧の瞳を厳しく見つめた。
そして……元、トキューバ家跡取り。
元、メアリー・リリス・トキューバは、名前を捨てた─────────────
二章に入りました!あの、コメント、ありましたら是非、よろしくお願いします。
アルゴライムが大声を出してそう言ったのと同時に店主は少し驚いたようだが、すぐにかしこまりました、と言い、店の奥に入っていった。
「え、私はクローバー家の方が資産もあるし、トキューバ家にはまだ跡取りがいるし、ライムとも一緒にいたいだけよ? 」
メアリーは普通の話をするのと同じ顔で、同じトーンで話した。
「そういう問題じゃないですよね? お父様やお母様が怒るでしょう? 」
「んー、そうねぇ。喧嘩売られても両親はあの屋敷には近づきたがらないわよ」
大声で話すアルゴライムと静かにいつも通り話すメアリーは対称的だった。
「え? なんでですか? 」
「あの近くに霧の泉があるのだけどあそこは時間の流れに置いていかれて呪われているらしいから」
「ああ、地図と歴史書を読んで見ました。そんなこともあるんですよね。でもそれで近づきたがらないのですか……」
二人の会話が静かに戻った。アルゴライムがふと店の外を覗くと、怪しんだのか興味があったのか、市民がこの店の方をジロジロと見ていた。
「ここでは少しあれなので、買い物を済ませて家でお話しませんか?」
メアリーも外の様子を見て同感した。
服を買った。無駄に少女趣味すぎで逆に動きにくかった服しかなかったアルゴライムは十着以上買った。それでも十$かからなかった。その後も食料や、日用品、また別の店で衣類を買って合計で十七$。全てトキューバ家の御用達でもあるほどの高級店での買い物だったが、この世界の物価が安すぎてアルゴライムにとってはとても安く思えた。
「さ、帰りましょうか」
メアリーがアルゴライムと荷物を半分に分けて言った。時間は夕暮れ。そろそろ門がしまって、飛ばなければこの街から出ることが出来なくなる。メアリーはそれでも構わないが、アルゴライムが吸血鬼であるとバレる訳には行かないから帰らなければいけない。
「はい、さっきの続きも話さなければですしね」
アルゴライムは威圧的な笑みを浮かべた。その笑みは黒い呪いのオーラを纏っているようにも見えた。
「ま、まあ早く帰りましょ、門が閉まったら帰れなくなるわ」
「……」
その後は少し沈黙が続いた。暗い森の中、普通に恐怖に思える。そんな静寂だった。
「遠いわね」
「二十分はかかりますからね」
「飛ばない?」
「飛び方知りません」
沈黙に痺れを切らしたメアリーが話しかけたが、ほとんど会話が続かず、途切れた。
「ねえ、ライム……私、ふざけたつもりは無いからね」
「はい? いきなりなんですか? 」
アルゴライムよりも少し前を歩いていたメアリーが振り向くと、その顔は何かを決心していた。
「私はトキューバを出たわ。もうこの名前を名乗ることは出来ないの。……だからね、私のあの言葉にはね、名前を捨てる覚悟があるのよ」
そう言ったメアリーの目は、森の暗闇と月の光に照らされて、海のように澄んだ碧は、透明感を増していた。そして、穏やかだったその目付きは、アルゴライムに厳しい目を向けていた。
「……そうですか。では……、名前をどうするつもりですか?」
ちょうど屋敷と街の中間地点。二人は紅と碧の瞳を厳しく見つめた。
そして……元、トキューバ家跡取り。
元、メアリー・リリス・トキューバは、名前を捨てた─────────────
二章に入りました!あの、コメント、ありましたら是非、よろしくお願いします。
コメント
たらもーど
面白いです!(語彙がないコメント