パーガトリー
プロローグ 煉獄
「ついたぞ」
2時間に渡るドライブをし、当初の目的を忘れつつあったころ、複雑な山道を抜けとうとうついたのがここ、三猿トンネル。
ここ千葉県北部にあるトンネルは、あることをきっかけに廃止された。理由は、トンネルの建設工事中での人身事故によるものだった。それが起こったのが、建設業者の計算ミスとわかり、マスコミからの苦情の嵐。業界からの追放。そして、経営ができずに数ヶ月後には倒産。
そして、彼らの多くはそこで自殺をした。
そして、ついた名前が三猿トンネル。ーー見ざる聞かざる喋らざる。彼ら経営理念、テキトウな仕事ぶりへの皮肉である。そして、そのトンネルには彼らの怨念が宿っているという噂も聞く。
自動車が通れなくなる山道にあたり、僕たちは降りた。トンネルの建設と平行にある程度の山道を補強しており、車でここまでこれたのは予想外だった。もうすぐ例のトンネルにつくだろう。懐中電灯を持ちトンネルへと向かう。
「行方不明者数 35人ー… マジかよぉ!?」
「な、なんですか。急に。」
東谷先輩のいきなりの驚嘆の声に、反応した僕と同じ一年の茉莉
「俺達以外にも何人もここに来てんだけどよ。ここに来たひと全員が行方不明になってるらしい。そして、時は流れて三年…未だ何一つ情報は得られていない…」
知ってるなぁ…
「そんな…行方不明って言ってもなにも情報が得られないなんてことあるんですか?死体もなければ、彼らに関する物もなにも?」
行方不明なら、そういうもんだよな。
でも、なんの手掛かりもないってのも、不可解だよな。
「彼らに関する情報は1つも公表されてないな。政府の隠蔽工作とか。死者達の呪いだとか。そんなふうに解釈してる人もたくさんいるな」
茉莉は小さく身震いした。たぶん、心境はもっと怯えてるだろう。
「東谷くん。。怖がらせるのはだめだよ。茉莉ちゃん、こういうの苦手だからさぁ。
この前の遊園地のお化け屋敷だって、あんなに…」
「……!? わァァああ!!」
「な、何言ってるんですか。吉岡先輩!
……そんな遊園地の娯楽程度に、一々感情を揺さぶられるような私じゃありません!」
「まだなにも言ってないんだけどね(笑)」
茉莉の子供じみたプライドは、多少の好感がもてる。そんな茉莉のこともっといじめてやりたいとすら思えてくる。
そして、山道を歩きはじめてから、すでに一時間が経過しようとしていた。トンネル自体は完成してないのでGoogleMapなどには、載ってない。この地図だけがたよりなんだが…ほんとにあってるんのだろうか…
ネットで拾った噂のトンネルへの地図なんだけどな。そもそもこれを流したやつはなぜここだと知ってるのか。
結局、トンネルは見つからず諦めることになった。
雨が降ってきた。降水確率60%が的中したようだった。まさかこんなに予定時間をすぎるとは思わず、傘は車の中。
雨が次第に強くなり、雨宿りできる場所を探す。しかし、もちろん、ここは心霊スポット。こんなところに建てるような建物なんてあるはずもなく、途方にくれていたとき…
「(あそこに見えるのって……いや…)取り敢えず、皆さんは僕が電灯で照らしてる先にある場所で雨宿りしてください。」
たしかにあれは、トンネルだった。
全員が雨宿り出来る場をみつけてほっとする。しかし、それもつかの間、トンネルの入り口においてある縦看板を見てひどい寒気に襲われた…
「三猿…トンネル…」
かつて、人身事故が起きたトンネル。建設工事が途中でやめられたトンネル。そして、行方不明者があとをたたないトンネル。
「せっかくついんだし、どこまでトンネルできてるか見てみたいかも。奥に何かあるかもだしさ。」
有嘉の提案に乗る者と乗らない者。まとまらない意見だったが、有嘉が進んだのを見て、心配になった僕と吉岡先輩はついていった。
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僕たちの持つ懐中電灯は
辺り一面を照らし、暗くて見えずにいたトンネル内部もよく把握できた。
「もっと、奥まで進もうよ。」
数少ない女友達の有嘉は、心霊スポットを誰よりも楽しみにしている…女の子だ。今どきめずらしい。
ここで、行き止まりか…
グラッ
その直後、突如地震に見舞われる。
「は……早く!元来た出口に戻ってくれ!」
地震で最も恐れべきなのは建造物の倒壊だ。
付近にいたらひとたまりもない。特に建設途中のトンネルで、老朽化が進んでるとなれば、なおさらだ。
精神的にたまる恐怖と言う名の、重圧がのしかかり、冷静な判断力も行動力も欠如していた。
入り口に残っていたみんなの声が聞こえる…
駆けつけてきてくれたのか…
しかし、カラダはもうすでに淡い色に染まっていた。
お風呂に入っているような。生暖かいーそんな感じがした。
人はいつか死ぬ。それがいつ起こるかはわからない。だから、昨日よりも楽しい今日にしたい。そんな思いで入った「廃墟巡りサークル」
でも、それももう終わり…
有嘉。吉岡先輩。茉莉さん。東谷先輩。もっと、みんなといたかった、かな。高校生活よりかは、ちょっとはマシだな、なんて思えたんだけどな
2018・8/29  23:58
夏休み最後の日。それは、人生最後の日となったのだ。
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