黒龍の傷痕 【時代を越え魂を越え彼らは物語を紡ぐ】
試験の行方
    
    アディン、ジャスミン、カイトがこのギルドに来て三日後、とうとう三人がこの《蒼の双星》に残ることができるかが決まる試験の日がやってきた。
「さぁこれで最後、これでダメだったらすぐに追い返すわよ」
「「「わかった」」」
タイミングを合わせたわけでもないくせに同時に頷く三人。その様子に私は鼻を鳴らす。
結果は見えてる。
「よし、じゃあわたしからいく!」
そう言ってジャスミンは前に出る。
「どうぞ」
ゆっくり腕を上げた。
「【ボール】!」
緑色の球体が魔法円から射出され、空中半ばで勢いを失い破裂した。
はい合格。
「やったぁ!」
たった三日で小魔法とはいえ無詠唱を成功してみせたジャスミン。確かな魔法の才能の片鱗が見える彼女を招き入れなければ、誰がこのギルドに入ることができるだろうか。
「次は?」
「じゃあ俺が」
アディンはジャスミンとすれ違いざまに高く手を叩き、アンナの前に出て強く見据える。
「ジャスミンに負けないようにしないとな───【我が声に応え我の元へ参上せよ、誇り高き竜騎士よ来たれ】──【『ドラゴンナイト』】」
竜を模した形の鎧を纏った騎士がアディンの展開した緑の魔法円から現れた。
見たところ、カテゴリーⅠのモンスターではないことは明らか。
……カテゴリーⅡか、こう易々と成功させるとはね。
カテゴリーというのは、モンスターの大体の区分だ。
Ⅰ~Ⅴまであり、Ⅴは災害ほどと言われている。
「よし!、成功した。カイト、頑張れよ!」
私の満足気な様子を合格と感じたのか、いや合格だけれど、颯爽と振り返りカイトと拳をぶつけ合った。
「わかってる、いくよ!はっ!」
カイトが手の平をこちらに向け、魔力を込めた。
すると、白の魔法円が開き一振りの片手剣がマナの集結により形作られる。
マナは魔法の元で、魔素とでも言えばいいだろうか。また魔力はマナから魔法に変換する効率などその他諸々の魔法関連の力だ。
深く息をし少しの間を置いて、突如カイトは行動を起こした。
踊るかのように指で宙に描きだす。いつの間にかもう一振りを生み出していて、驚きかける、しかし。
「───っ」
そんなことなど些事。
宙に浮いていた二振りの剣はカイトの動きに合わせその身を踊らせた。
あり得ない現象を前に空いた口が塞がらない。
「できたぁ!よしっ!」
三人がハイタッチをする。
「皆合格ね──っと」
「良かったな、お前ら」
突然大剣を手に斬りかかって来たレオを軽く往なし、見事資格を手に取った三人に賛辞を送る。
皆がにこやかな笑顔を浮かべていた。
(最初は嫌だったけど、こういうのもいいかもね)
子供達の笑顔は、凝り固まったアンナの心を溶かすには十分だった。
「でだ」
「わかってるわ 」
この三日間、かねてから話し合っていたことを今日実行する。
「お前らこっちこい」
それは模擬戦。
新人冒険者の三人にベテランである私達の戦いを見せることでこれからの糧にしてもらおうという算段で計画した。
「ここで見てろよ」
有無を言わせないその口振りに、こくこくと三人は頷いた。
私もレオに向き直り、前に手を伸ばした。
「【セントディザスター】」
紡いだ詠唱、そして現れた一振りの美杖。
この武器の名を『聖厄』、神器だ。
神器とは、神の力を宿した武器、の略。
この世界には、様々な『器』が存在する。
神器、封器、眷属器、魔器、そして──いや、これは止めておこう。
封器とは、ダンジョンを攻略した者が手にすることができる武器で、この世界にたった一振りしかないものとなる。因みにその権利を放棄することもできる。この封器は特定の文言を詠唱することでその力を解放することができる。
眷属器とは、精霊に認められ彼ら直々の贈呈により使うことができるようになる。この眷属器に込められた精霊の力を使いこなすことができるようになれば、『魔装』という精霊を自分の身で模しその力を限りなく再現する権利を手にできる力を行使できるようになる。
魔器とは、普通の武器だが特殊な力を持ったもののことを指す。この魔器以外の『器』は全て不壊属性を持ち、特定の魔法が使えなければこれを破壊することはできない。
そのうちこのことは話すつもりだけど、今は必要のないこと。
三人には私達をちゃんと見てもらわなければならないのだから。
「───行くぞ」
そしてどうやら、無駄な思考はさせてくれないようだ。
「ええ、掛かってきなさい」
アンナとレオ。
ギルド《蒼の双星》の団長と副団長が今衝突する。
    アディン、ジャスミン、カイトがこのギルドに来て三日後、とうとう三人がこの《蒼の双星》に残ることができるかが決まる試験の日がやってきた。
「さぁこれで最後、これでダメだったらすぐに追い返すわよ」
「「「わかった」」」
タイミングを合わせたわけでもないくせに同時に頷く三人。その様子に私は鼻を鳴らす。
結果は見えてる。
「よし、じゃあわたしからいく!」
そう言ってジャスミンは前に出る。
「どうぞ」
ゆっくり腕を上げた。
「【ボール】!」
緑色の球体が魔法円から射出され、空中半ばで勢いを失い破裂した。
はい合格。
「やったぁ!」
たった三日で小魔法とはいえ無詠唱を成功してみせたジャスミン。確かな魔法の才能の片鱗が見える彼女を招き入れなければ、誰がこのギルドに入ることができるだろうか。
「次は?」
「じゃあ俺が」
アディンはジャスミンとすれ違いざまに高く手を叩き、アンナの前に出て強く見据える。
「ジャスミンに負けないようにしないとな───【我が声に応え我の元へ参上せよ、誇り高き竜騎士よ来たれ】──【『ドラゴンナイト』】」
竜を模した形の鎧を纏った騎士がアディンの展開した緑の魔法円から現れた。
見たところ、カテゴリーⅠのモンスターではないことは明らか。
……カテゴリーⅡか、こう易々と成功させるとはね。
カテゴリーというのは、モンスターの大体の区分だ。
Ⅰ~Ⅴまであり、Ⅴは災害ほどと言われている。
「よし!、成功した。カイト、頑張れよ!」
私の満足気な様子を合格と感じたのか、いや合格だけれど、颯爽と振り返りカイトと拳をぶつけ合った。
「わかってる、いくよ!はっ!」
カイトが手の平をこちらに向け、魔力を込めた。
すると、白の魔法円が開き一振りの片手剣がマナの集結により形作られる。
マナは魔法の元で、魔素とでも言えばいいだろうか。また魔力はマナから魔法に変換する効率などその他諸々の魔法関連の力だ。
深く息をし少しの間を置いて、突如カイトは行動を起こした。
踊るかのように指で宙に描きだす。いつの間にかもう一振りを生み出していて、驚きかける、しかし。
「───っ」
そんなことなど些事。
宙に浮いていた二振りの剣はカイトの動きに合わせその身を踊らせた。
あり得ない現象を前に空いた口が塞がらない。
「できたぁ!よしっ!」
三人がハイタッチをする。
「皆合格ね──っと」
「良かったな、お前ら」
突然大剣を手に斬りかかって来たレオを軽く往なし、見事資格を手に取った三人に賛辞を送る。
皆がにこやかな笑顔を浮かべていた。
(最初は嫌だったけど、こういうのもいいかもね)
子供達の笑顔は、凝り固まったアンナの心を溶かすには十分だった。
「でだ」
「わかってるわ 」
この三日間、かねてから話し合っていたことを今日実行する。
「お前らこっちこい」
それは模擬戦。
新人冒険者の三人にベテランである私達の戦いを見せることでこれからの糧にしてもらおうという算段で計画した。
「ここで見てろよ」
有無を言わせないその口振りに、こくこくと三人は頷いた。
私もレオに向き直り、前に手を伸ばした。
「【セントディザスター】」
紡いだ詠唱、そして現れた一振りの美杖。
この武器の名を『聖厄』、神器だ。
神器とは、神の力を宿した武器、の略。
この世界には、様々な『器』が存在する。
神器、封器、眷属器、魔器、そして──いや、これは止めておこう。
封器とは、ダンジョンを攻略した者が手にすることができる武器で、この世界にたった一振りしかないものとなる。因みにその権利を放棄することもできる。この封器は特定の文言を詠唱することでその力を解放することができる。
眷属器とは、精霊に認められ彼ら直々の贈呈により使うことができるようになる。この眷属器に込められた精霊の力を使いこなすことができるようになれば、『魔装』という精霊を自分の身で模しその力を限りなく再現する権利を手にできる力を行使できるようになる。
魔器とは、普通の武器だが特殊な力を持ったもののことを指す。この魔器以外の『器』は全て不壊属性を持ち、特定の魔法が使えなければこれを破壊することはできない。
そのうちこのことは話すつもりだけど、今は必要のないこと。
三人には私達をちゃんと見てもらわなければならないのだから。
「───行くぞ」
そしてどうやら、無駄な思考はさせてくれないようだ。
「ええ、掛かってきなさい」
アンナとレオ。
ギルド《蒼の双星》の団長と副団長が今衝突する。
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