Not Change Days
〜暴露〜
point of view 朔夜
俺は長谷川のことが好きだ。これは、紛れもない事実である。
でも、だからといって長谷川への対応を変えるわけでもなく、またいつも通りの毎日を送っている。
テスト当日まであと3日。
勉強会のおかげか、全教科の重要箇所を理解出来るようになった。恐らく8割はかたいだろう。
「なあ朔夜、ここの問題ってどう解けばいいんだっけ」
「これはこの公式を当てはめりゃすぐに出来るぞ。ってかこれ、昨日も教えただろ?」
「あっ、そういやそうだったな、わりぃわりぃ」
大輝もそれなりに頑張っているようだ。特に苦手な数学を重点的に取り組んでいる。これは初の赤点回避を期待出来るのではないか?
後輩2人も相変わらずこの教室に通っては、勉強に精を出している。
そんな2人が可愛くてたまらないのか、講師を務める梓はとても生き生きしている。
今は日本史を取り組んでるらしい。
「ではここで問題です!!江戸時代に制定された諸法令、生類憐れみの令は徳川ーー」
「はいっ、徳川綱吉!」
「…ですがぁ!その徳川綱吉は何代目将軍?」
「はいっ、5代目です!」
「樹里ちゃん正解!葵ちゃんは問題を最後まで聞きましょう〜」
お手付きをしてしまった時野は「うわ〜」と悔しそうだ。
こういう形式での勉強の方が飽きないだろうし、ゲーム感覚で楽しいのだろう。見ていると思わず微笑んでしまう。
「梓、お前は自分の勉強しなくても大丈夫なのか?」
「うん、気にしないで。わたしは家でも勉強してるから、えらいでしょ?」
褒めなさいと言わんばかりに得意気な顔を見せてくる。梓はすぐに調子に乗るタイプだから安易に褒めてはいけない。
俺は「ハイハイソウデスネー」と言って教科書に目を落とす。
梓は「ちょっとー!?」と声を荒げる。ここまでが俺たちのテンプレだ。
*
勉強を始めてから1時間ほど経った頃、隣の大輝がググっと身体を伸ばした。
「だぁ〜疲れた!休憩にしよーぜ!」
確かに、休憩無しに背中を丸めて1時間みっちり教科書とノートとにらめっこだ。疲れるだろう。
「うん、10分ぐらい休んで残りの50分も頑張ろ!」
梓も長谷川も時野も賛成のようだ。
「みんな喉乾かねぇ?俺買ってくるから好きなの言えよ」
「お、気が利くな。俺はコーラを頼むよ」
「俺の奢りだぜ?感謝しろよな!」
1階の生徒ホールには自販機が3つ並んでいる。品揃えはとてもいいと思う。
梓はオレンジジュース、時野はお茶を注文。
長谷川は大輝の手伝いをすると言って、大輝について行った。
「ちょっとトイレ行ってくるわ〜」
梓は逆側のドアから出ていく。
教室には俺と時野が残された。こうして2人きりになるのは初めてか。
「時野もありがとな。毎日コレ勉強会に付き合ってくれてよ」
「いや〜、最初は戸惑いましたけど、なんだかんだ楽しいですよ!仲間に入れてくれてありがとうございます!」
時野はにっと笑う。
相変わらず元気で礼儀正しくて、まるで漫画に出てくるような理想的な後輩だ。
「ところで能登先輩、ひとつ聞きたいことがありまして…」
ほう、時野が俺に質問か。
1年前の勉強なんか覚えていないから答えられるかビミョーだが、とりあえず聞くことにする。
「おう、なんだ?」
「先輩って…」
俺の顔をじっと見て、ゆっくりと口を開く。
「樹里のこと好きですよね?」
時間が止まるーー。
「ーーはい?」
「いや、だから、樹里のこと好きですよね?」
ええ、そうですとも。図星ですよ。
だが、改めて言われると非常に恥ずかしい。これはまずい(?)。
 「いっ、いいいやいやいや!急に何を…!」
「あはは!さては先輩、図星ですね?すごく顔に出やすいタイプなんですねぇ」
「顔に出てるのか…ちくしょう、参ったな」
自分としてはポーカーフェイスをキメていたつもりだったが、どうやら下手くそだったようだ。
「しかも、いつもいつも、樹里のこと目で追ってますしね!」
がっつりバレてんじゃねぇかド畜生が。
どうやら時野には隠し通せないようだ。
「はぁ、そうだよ、俺は長谷川のことが好きだ…初めて会った時からな」
「おおっ!つまりは一目惚れですね!いいですねぇ〜」
時野がとても楽しそうだ。こいつも「三度の飯より他人の恋バナが好き」なタイプだな?厄介すぎる。
「確かに確かに、樹里はめちゃくちゃ可愛いから好きになっても仕方ないですね!わたしも男だったらほっとかないですよ!」
同性の時野がここまで言うのであれば、樹里がほかの女子よりも可愛いということに間違いはないようだ。
ま、それもそうか、俺が惚れたんだもん。この俺がね?
「わたし、面白そうだし先輩のはじめての恋を応援しますね!」
「面白そうは余計だろ。てかなんではじめてって分かるんだよ」
「えー?なんとなく?」
なんとなくで図星を突かれるのはとてつもなく恥ずかしい。今すぐ屋上から飛び降りてしまいたい。
「ではでは!そんな恋愛アマチュアな先輩に、恋の相手の親友ちゃんからいいことをひとつお教えしましょう!」
ノリノリでそう言い放つ時野を見て嫌な予感しかしないが、今こいつに逆らえば梓や大輝にバラされそうだから大人しく聞くことにする。
「いいことって?」
「ふっふっふ、1度しか言いませんからね?」
そう言うと時野は席を立ち俺の目の前まで来る。
そして俺の耳元に顔を近づけてこう言った。
「おめでとうございます。先輩たちは両想いです!」
俺は長谷川のことが好きだ。これは、紛れもない事実である。
でも、だからといって長谷川への対応を変えるわけでもなく、またいつも通りの毎日を送っている。
テスト当日まであと3日。
勉強会のおかげか、全教科の重要箇所を理解出来るようになった。恐らく8割はかたいだろう。
「なあ朔夜、ここの問題ってどう解けばいいんだっけ」
「これはこの公式を当てはめりゃすぐに出来るぞ。ってかこれ、昨日も教えただろ?」
「あっ、そういやそうだったな、わりぃわりぃ」
大輝もそれなりに頑張っているようだ。特に苦手な数学を重点的に取り組んでいる。これは初の赤点回避を期待出来るのではないか?
後輩2人も相変わらずこの教室に通っては、勉強に精を出している。
そんな2人が可愛くてたまらないのか、講師を務める梓はとても生き生きしている。
今は日本史を取り組んでるらしい。
「ではここで問題です!!江戸時代に制定された諸法令、生類憐れみの令は徳川ーー」
「はいっ、徳川綱吉!」
「…ですがぁ!その徳川綱吉は何代目将軍?」
「はいっ、5代目です!」
「樹里ちゃん正解!葵ちゃんは問題を最後まで聞きましょう〜」
お手付きをしてしまった時野は「うわ〜」と悔しそうだ。
こういう形式での勉強の方が飽きないだろうし、ゲーム感覚で楽しいのだろう。見ていると思わず微笑んでしまう。
「梓、お前は自分の勉強しなくても大丈夫なのか?」
「うん、気にしないで。わたしは家でも勉強してるから、えらいでしょ?」
褒めなさいと言わんばかりに得意気な顔を見せてくる。梓はすぐに調子に乗るタイプだから安易に褒めてはいけない。
俺は「ハイハイソウデスネー」と言って教科書に目を落とす。
梓は「ちょっとー!?」と声を荒げる。ここまでが俺たちのテンプレだ。
*
勉強を始めてから1時間ほど経った頃、隣の大輝がググっと身体を伸ばした。
「だぁ〜疲れた!休憩にしよーぜ!」
確かに、休憩無しに背中を丸めて1時間みっちり教科書とノートとにらめっこだ。疲れるだろう。
「うん、10分ぐらい休んで残りの50分も頑張ろ!」
梓も長谷川も時野も賛成のようだ。
「みんな喉乾かねぇ?俺買ってくるから好きなの言えよ」
「お、気が利くな。俺はコーラを頼むよ」
「俺の奢りだぜ?感謝しろよな!」
1階の生徒ホールには自販機が3つ並んでいる。品揃えはとてもいいと思う。
梓はオレンジジュース、時野はお茶を注文。
長谷川は大輝の手伝いをすると言って、大輝について行った。
「ちょっとトイレ行ってくるわ〜」
梓は逆側のドアから出ていく。
教室には俺と時野が残された。こうして2人きりになるのは初めてか。
「時野もありがとな。毎日コレ勉強会に付き合ってくれてよ」
「いや〜、最初は戸惑いましたけど、なんだかんだ楽しいですよ!仲間に入れてくれてありがとうございます!」
時野はにっと笑う。
相変わらず元気で礼儀正しくて、まるで漫画に出てくるような理想的な後輩だ。
「ところで能登先輩、ひとつ聞きたいことがありまして…」
ほう、時野が俺に質問か。
1年前の勉強なんか覚えていないから答えられるかビミョーだが、とりあえず聞くことにする。
「おう、なんだ?」
「先輩って…」
俺の顔をじっと見て、ゆっくりと口を開く。
「樹里のこと好きですよね?」
時間が止まるーー。
「ーーはい?」
「いや、だから、樹里のこと好きですよね?」
ええ、そうですとも。図星ですよ。
だが、改めて言われると非常に恥ずかしい。これはまずい(?)。
 「いっ、いいいやいやいや!急に何を…!」
「あはは!さては先輩、図星ですね?すごく顔に出やすいタイプなんですねぇ」
「顔に出てるのか…ちくしょう、参ったな」
自分としてはポーカーフェイスをキメていたつもりだったが、どうやら下手くそだったようだ。
「しかも、いつもいつも、樹里のこと目で追ってますしね!」
がっつりバレてんじゃねぇかド畜生が。
どうやら時野には隠し通せないようだ。
「はぁ、そうだよ、俺は長谷川のことが好きだ…初めて会った時からな」
「おおっ!つまりは一目惚れですね!いいですねぇ〜」
時野がとても楽しそうだ。こいつも「三度の飯より他人の恋バナが好き」なタイプだな?厄介すぎる。
「確かに確かに、樹里はめちゃくちゃ可愛いから好きになっても仕方ないですね!わたしも男だったらほっとかないですよ!」
同性の時野がここまで言うのであれば、樹里がほかの女子よりも可愛いということに間違いはないようだ。
ま、それもそうか、俺が惚れたんだもん。この俺がね?
「わたし、面白そうだし先輩のはじめての恋を応援しますね!」
「面白そうは余計だろ。てかなんではじめてって分かるんだよ」
「えー?なんとなく?」
なんとなくで図星を突かれるのはとてつもなく恥ずかしい。今すぐ屋上から飛び降りてしまいたい。
「ではでは!そんな恋愛アマチュアな先輩に、恋の相手の親友ちゃんからいいことをひとつお教えしましょう!」
ノリノリでそう言い放つ時野を見て嫌な予感しかしないが、今こいつに逆らえば梓や大輝にバラされそうだから大人しく聞くことにする。
「いいことって?」
「ふっふっふ、1度しか言いませんからね?」
そう言うと時野は席を立ち俺の目の前まで来る。
そして俺の耳元に顔を近づけてこう言った。
「おめでとうございます。先輩たちは両想いです!」
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