Not Change Days

ノベルバユーザー261624

〜準備〜

 
 point of view 樹里


 生まれつき体が弱かった私は、早退や入院を繰り返していて小学生の時も、中学生の時も友達はほぼ居なかった。でも、仕方のないことだって頭では理解していた。


 それでもやっぱり寂しかった。


 だけど、そんな私にも1人だけ友達がいた。
 時野葵ときの あおいちゃんだ。
 体調不良が続き長期間学校へ通えずにいた私は、当然授業内容が全くわからず完全に遅れをとっていた。
 その様子を見ていた葵ちゃんは、私の前に来て「教えてあげるよ!」と優しく微笑んでくれた。


 それ以来、葵ちゃんは常に私のことを気にかけてくれていた。葵ちゃんと関わるようになってから、今までの体調不良も嘘のように元気になって、いつしか私達は大の仲良しになっていた。


 たった1人だけだけど、本当に友達に恵まれたと思う。
 彼女とは今も仲良くしていて、同じ高校に通っている。


 そして今私はその高校へ行くための準備をしている。今日は気分的にポニテにしようかな。
 鏡の前でせっせと髪を結う。変なところはないか入念に確認しながら。


 高校入学してからもう1ヶ月経とうとしている。高校生活は想像以上に楽しいものだった。


 先輩とはあの日からちょくちょく一緒に帰っている。くだらない話を彼は楽しそうに聞いてくれる。


 思い出すだけで笑みがこぼれる。今日も一日頑張れそうだ。


 忘れ物なし!見た目良し!元気良し!


「それじゃ、行ってきます!」


 そう言って大きく1歩を踏み出す。
 相変わらず今日も、私の行ってきますに
 返事はなかった








 ***








 point of view 大輝


 新年度が始まってから、あっという間に1ヶ月が経っていた。2年生に進級して何かしらの変化があると思い込んでいたが、昨年とあまり変わらない生活を送っていた。


 変わったことと言えばクラスメイトぐらいか。ぐるりと教室内を見渡すと、話したことの無い同級生がちらほらいることが分かる。俺は1度話したことのある人の顔は忘れない。


 朔夜と梓は昨年も同じクラスで、今年も奇跡的に同じ2年D組に配属された。一方的かもしれないが、親友と思っているあいつが同じクラスなだけで、かなり安心感がある。


 ーただ、最近その親友くんの様子が少し変だ。


 自覚はないだろうが、朔夜はかなりモテる。
 本人は、「俺はモテねぇから」と謙遜しているがその整った顔立ちは間違いなくイケメンに分類される。男の俺でも分かることだ。決して俺はジェラシーを感じてるわけではないけどね。絶対。そう、絶対。


 同じテニス部のかわいい女子が、朔夜の彼女の有無について聞いてくることもよくあることだった。しかも1個上の先輩にも聞かれたことがあるほどに。


 俺は聞かれる度に、「あいつはぶっきらぼうで無愛想で気難しいやつだけど、実は友達思いで良い奴なんだ、頭もいいしな」と、このままだと灰色の高校生活を送ってしまいそうな親友のPRをしていた。


 そんな、ぶっきらぼうで無愛想で気難しい親友くんは最近、


 ーーやばいほどにニヤニヤしている。


 えっ?どうしたの?なんでそんなに口角上がってんの?何ちょっと顔赤くしてんの?あれ?ん?
 ぶっきらぼうは?無愛想は?気難しさは?


 俺、今まで女子達に「クールでミステリアスなカッコイイ朔夜くん」をPRしてきたのに、なんでそんなに顔面砕けてんの?


 このままではダメだ。俺は嘘つきになってしまう。俺は嘘つきが嫌いなんだ。


 ちょうど4時間目が終わり、昼休みに突入する。俺達はいつも通り朔夜の周りの机を借りて一緒に弁当を食べ始める。


「なあ、朔夜」


 名前を呼ぶと、朔夜は「ん?」と短く返事をする。本人は至って普通に反応したつもりでいるが、俺の目は誤魔化せない。やっぱり少しだけ口角が上がってる。


「お前最近めちゃくちゃニヤついてるけど、何かいいことあったのか?」


 ピタッと朔夜の動きが止まる。
 そんなに顔に出てたのか?と言いたげな顔をしている。ええ、出てますとも。


「べ、別に何もねぇよ?」
「嘘つけ、何かあるだろ」
「あー、アレだよ。そのー…この前、今ハマってるPCゲームあるって話しただろ?そのゲームで超稀少なアイテムがドロップしてよ、それがかなり嬉しくてだな…」


 完全に目が泳いでいる。うーん、これは本当なのか怪しい発言だ。9割嘘くさいが確信がないためこれ以上追求するのはやめて、俺はしばらくこいつの観察でもしよう。ふふ、楽しくなってきたな。


「それはそうと、来週からテスト期間ね」


 珍しく大人しかった梓が突然悪魔のワードを呟く。やめてくれ、俺は馬鹿なんだ。


「そっか、もう中間テストか。大輝おつかれ」
「期末テストのために今から勉強しよ?」
「なんで俺が赤点取る前提で話すんだよ」


 ま、今までのテスト、必ず2つは赤点あったけどね☆


「だけど、俺が馬鹿なのは認めるよ。そこで頼みがある」
「放課後に勉強おしえてくれ、でしょ?」
「もう恒例行事みたいなもんだしいいよ」


 やっぱり持つべきは友だな。
 テスト期間が来ると全部活が休みになるため、俺達は放課後教室に残って勉強会を開く。家で勉強しようと思っても漫画やゲームの誘惑に負けてしまうため、学校でやるのがベストだ。
 なのに赤点を2つ以上取ってしまう。面目ない。


「目標は昨年と変わらず、大輝の赤点回避だな」


 弁当を食べ終わった朔夜はググッと体を伸ばす。


 ーーよろしく頼むぜ、にやけ先生!








 ***








 point of view 朔夜


 夜、自室でスマホを操作する音だけが響く。
 連絡アプリ「レイン」で長谷川とやり取りをしていた。


『そんな訳で来週から放課後残って勉強会するんだ、だからテスト終わるまで一緒に帰れないかも』


『そうなんですね!勉強会楽しそうですね!』


『まあ、1人でやるよりは捗るよ』


 あまりこういったアプリで連絡することがないから操作が遅い。別に連絡する友達が居ないという訳では無い。決して、断じて。


 しばらくするとピコン!と通知音が聞こえた。アプリを開いてみてみると、その内容に少しだけ驚く。


『その勉強会、私も参加していいですか?』


 「……マジか」

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