競奏のリアニメイト~異世界の果てに何を得るのか~

柴田

第9話 終わらない結末

ひとりの人間の死とともに、未知の世界がひとつ失われる。

フランスの作家、操縦士 サン=テグジュペリ

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凄まじいほどの透明度を持った美しい糸。それが丁寧に編まれ、織られて製造された純白のワンピース。

 「アリドュネスの糸繭から織った服をお嬢さん用に作ってみたんだが、着てみてくれないかい?」

俺がここに来て早いもので一ヶ月が過ぎようとしていた。
そんな今日、おじいさんは俺に小さなサプライズをしてくれた。俺の為に服を織ってくれたのだ。

「ありがとうございます」

一週間前、おじいさんは唐突に俺の体を測定し始めた。最初はおじいさんの性癖を疑ったが、夜に何か物音がするので覗いて見たら件の服を織っていた。

アリドゥネスというのは元の世界でいう所の蚕に似た芋虫で変態する時に美しい糸繭で体を包み込む。
そして変態して白い蝶となる。この蝶になると名前がアリドゥネスからネスフィレと呼称が変化する。
アリドゥネスの糸は蚕よりも透明度が高く、丈夫なのが特徴だ。俺もたまに狩りで繭を見かけるがかなり綺麗だった。
おじいさんはその虫を沢山集め、服を織ったのだ。これは地味に大変な作業であり、服を作るとなると数百のアリドゥネスが必要となる。さらに俺もたまにしか見かけない為、その苦労は考えるまでもない。素晴らしいプレゼントだ。

ちなみに覗いてもおじいさんは鶴になって飛んでいったりはしなかった。

そんな事があり、今おじいさんは俺に新しい服をプレゼントしてくれた。
俺はそれを受け取る。

俺にある服はこの体が身につけていた時の服だけ、洗濯する時は恥ずかしいがタオルケットを巻き付け生活することになっている。
着の身着のままなのは最初と変わっていない。

だが、今の俺には前とは違う決定的に何かがあった。
優しき保護者友人、静かな森、悠々自適な生活、そして……罪の意識。
この体になってから安全とは常にそこにある•••物になっている。

一ヶ月経っても罪の意識は薄れることは無い。
あの子の亡骸を探す勇気さえ俺にはない。
怖いのだ、見つけるためには目の前の老人の力を必要とする。
そのためには俺は、自分が犯した罪の事を告白しなければならない。
その勇気がないのだ。

一人では道に迷い今度こそ餓死する未来が見えている。
結局、俺は愚かな人間だったのだ。

「さぁ、着てごらん?」
「分かりました」

俺はプレゼントを片手に風呂場に入り、服を脱ぐ。
そして純白ワンピースを着ながら頬を濡らした。
ほんの数分だけ……。
自分の気持ちを整理したかった。

恐らくこの意識は次に死ぬまで消えないと確信しながら……。

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