競奏のリアニメイト~異世界の果てに何を得るのか~

柴田

第7話 暖かな太陽が照らしていた

人生はどちらかです。勇気を持って挑むか、棒にふるか。

アメリカの教育家、社会福祉活動家 ヘレン・ケラー

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森の中で静かに佇むログハウスの中、椅子に座りテーブルにある焼肉に手を伸ばしながら泣くように呟く俺がいた。

「うぅ、美味しい……」

分厚いステーキのようにカットされた鼠の肉をフォークのような食器で食べながら俺は悲しげに呟いた。確かにこの肉は上手い。脂は少なめだが、噛みごたえがとても良く臭みが少ない。鶏肉と豚肉の中間と言えばいいだろうか?とにかくご馳走並に美味しい。

だが、ここで俺の精神が泣き叫ぶ、「鼠なんか食べたくない」と。ここで認めてしまったら俺は人間とは同じなようで別の物に成り下がってしまいそうで憂鬱だった。

なんと言えばいいのだろうか?元の世界とこの世界の肉の概念が大きくかけ離れていることが原因かもしれない。

要は気持ちの問題だが割り切れない。しかし、俺の食欲は俺の精神など、気に求めず鼠肉へ伸ばす手をやめようとしない。この世界に来てから口に入れたものなど、水とスープだけ。それはお腹も減るだろう。

「お嬢さんのお陰で沢山捕れたから一杯お食べ?」

おじいさんは微笑みながら鼠肉を頬張っている。

ちょっとしたカピバラ並の鼠が全部で五匹。それだけあれば二人が食べるのに困ることは無い。

俺の腹はさっきから食べ続けているにも関わらずひっきりなしになり続けて、俺の理性と精神の嘆きを吹き飛ばそうとする。

ここで残したら糧となったカピバラ(仮名)にも失礼だ。ここは美味しく食すことを覚悟しよう。俺は食欲の虜になることを享受することを決めた。

だが、そこでふとした感触が俺の下腹部を襲った。

空腹とは違う感じ。下腹部に急激に力が入り、ムズムズとした痒さを覚える。

これに近い感触を前の世界で何度も味わった事がある。しかし、体が前と違っている今、男女でこれ程までに感触の差があるとは想像しなかった。

これはかなりやばい。

俺は急いで立ち上がり、下腹部を抑えながら半泣きになり、上ずった声をあげながら叫ぶ。

「お、お手洗いはどこですか?」

「そ、外、裏手の井戸の傍に小屋の中にあるよ?は、早く行っておいで」

おじいさんは慌てながら察してくれた。

いくら小さくても女の子に『そこで何を?』という野暮はしない。

俺はその言葉を聞き終える前に爆発しないように最低限の速度で、尚且つ急いで外へ出た。

ログハウスの裏手にある井戸へ行くために薪割り場を通過し、そのまま家の角を曲がると確かに井戸の傍に人が二人ぐらい入れそうな仮設小屋があった。俺はそれを確認すると一目散に向かい、やや立て付けの悪い扉を力の限り開けると、そのまま扉を閉める余裕なくワンピースの裾を捲ると、下半身の下着を脱ぎさり、川のような音が流れる小屋の穴の前に座りこむ。

(すみません。不可抗力、不可抗力、不可抗力!!)

心の中で大絶叫しながら元の世界同様下腹部に力を緩めた。

元の世界で女性はあれほどの感触をよく長時間我慢できるものだと感服した。

性別の差は驚くほどに深いものがあった。

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「ふぅ……」

俺は下腹部を服の上から擦りながら、小屋を後にする。備え付けの粗め紙がありそれによって拭うことが出来た。

しかし、男女の障害の大きさに絶望した。これから元に戻れるまであの感触を味合わなければならないと考えると酷く頭が痛くなる。

そう思いつつ、俺はログハウスに戻った。

すると、おじいさんは相変わらず、皿に載った鼠肉に舌鼓を打っていた。

俺が戻るとおじいさんは何も言わずに「おかえり」といい、再び俺に肉を食べる事を促してくる。

若干心の中で泣きながら俺は再び食欲に身を任せ、手をすすめる。

そうしてどのくらいたっただろうか?

ようやく、腹が膨れ、貧相な……もとい、年相応の胸と腹が同じ大きさになった時、急に眠気が襲ってきた。

やはり、体力など諸々は見た目相応になっているみたいだ。鼠を追っかけただけでこの眠気とは……。

「ふぁ……」

小さな欠伸を一つ零す。

すると、おじいさんは微笑みながらベットで寝るように促してくる。

俺にその提案を断ったり、眠気に抗う理由はない。俺は就寝するべく、二階のベットへ潜り込む。

おじいさんもそんな俺を枕元に立ちながら見届ける。

「良かったら、明日は私の工房を見せてあげるよ」

「剣とか、色々あるんですか?」

「勿論!!」

「それは……たのしみ……で、す」

意識が虚ろになり、暗転する。

心地よい眠りだ。元の世界では勉強やら何やらで味わったことが最近ほとんどなかった快楽。

よく眠れそうだ。

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「おやすみ」

老人はそう言いながらゆっくりと眠った少女の額を撫でる。

そこには年相応の触り心地の良い肌と、珍しい髪色___白髪の感触が入り交じった。

その感触は老人の心を優しく温めた。若い頃老人は息子しか欲しがらなかったが、今にして思えば娘が欲しくなってくる。可憐で、優しく、何よりも太陽の様に温めてくれるこの寝顔とあの笑顔を見たら若い頃の自分もきっと考えを変えたに違いないと老人は考えた。

「まるで太陽みたいな子だよ……」

老人ははそう言いながらゆっくりと枕元から立ち去る。

「もう少し見極めさせてもらうが、君には黒い方より白い方がいいかもしれない。明るく照らすその太陽になぞらえてね」

老人はの独り言は少女には聞こえなかった。

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