「神に選ばれ、神になる」そんな俺のものがたり

竹華 彗美

第十六話 脅迫と勇気と無力と歓喜と


 朝八時。全体の九・五割が起き、朝食の準備・食事をしていた。
 昨日の一件もあり、食材は先生たちが管理することになり、配給制となる方針となった。
 これにより生徒たちの不満は三段階ぐらい高まっているようだった。
 しかし配給されている内容物を見れば、プラスマイナス0といったところだろう。
 なにしろ俺と永本が狩りまくったウルフの肉が木の実に混ざって少量ながらも配給されているからである。
 血抜きも既にしてあった肉は調理しやすかったらしく、ついさっき俺のところに山寺先生がお礼と共にその肉を俺たちに配給しに来た。
 俺的にはそっちはどうでもいいーー今日狩った分の肉がたんまりあり、食事には困る要素皆無だからーーが、もう一方のことを聞いてみるとまだ少し待ってほしいと返ってきた。
 
 それからまたまた一時間永本達も起きず、誰も訪ねて来なかったので実験を再開する。
 実験とは何をしているかって?まぁ皆さんが大方"想像している通りのことだと思いますよ?"とだけ言っておこう。
 
 そしてみんながまた退屈な一日を過ごし始めた時、二段ベットに寝ていた二人が起きた。時刻は九時少し過ぎ。
 それに加えて食事を終えた、昨日の宮下を筆頭とした男子生徒四人が俺の元に来て、修行させてくれとまた頼まれた。
 俺はまだ提案が通っていないからという理由で"できない"と断るのだが諦めようとはせず、しつこく言ってくる。
 寝起きの永本にまでお願いをする始末だ。
 俺は何故そこまで急ぐのかと聞くと、その答えは単純で。

「早く異世界を満喫したい」

 だった。同乗も求められた。

 まぁその気持ちは分からなくはないけど、今ここにいる殆どがそう思ってると思うからなぁ〜。君達だけ修行させて贔屓ひいきはできないのだよ。
 
 という感じで彼らに説明すると、今度は"みんなのために強くなる"とか言い始めた。
 これについてはみんなのために強くなったとしても"お前らだけじゃ百パーセント無理だよ"とツッコミを入れたい。
 まぁ前者が本音だろうから後者のことは嘘ということで無視し、こいつらの実力一応図ってみるか。
 
 というのも四人のステータスを見た時に一人、気になるスキルを持つやつがいた。
 最初に言っておくが、宮下ではない。まぁ宮下もそこそこ強い方ではあるが、そこまでずば抜けているわけではないので今はスルー。
 その人物は一番後ろで俺を真っ直ぐ少し暗い顔で見ている中川 大翔なかがわ ひろとである。ステータスはこんな感じ。

[名前] 中川 大翔  なかがわ ひろと
[性別] 男
[年齢] 十七歳
[種族] 人間族
[職業] 
[称号] 転生者 異世界の学生

[レベル] lv1
[体力] 250
[魔力] 320

[魔法]
水 lv1
無 lv1

[体術] lv1

[スキル]
一定範囲"魔力"増幅

 俺が持っていないスキルだから気になった。
 彼は五組の中でもおとなしい方で、話したことはない相手だが。そのくらい表情の裏にはなにか・・・があると確信した。

 実力を図るとはいえ、まず実戦からというわけにもいかない。まだ先生達の許可も取れてないわけだし、こうしてみるか。

「じゃあ俺に触れることが出来たら、このままウルフとの実戦をやってもいいことにするよ。」

 そう言った瞬間、宮下達は余裕顔を見せたが、それと対照的に寝起きでやっと脳が状況を把握した長谷川先生と永本は苦笑いする。
 それもそうだ。ウルフ一匹ともまともに戦えないであろう挑戦者が、十匹以上のウルフと戦って瞬殺し、すでに戦闘のプロと化しているいわば"化け物"に勝てるはずはないと、二人は思っていた。

「それならなんとかなりそうだな!ハンデとかいるか?」
「ん?ハンデ?……あーハンデね。じゃあこれだけは約束するわ。俺は戦闘系魔法とお前らに危害があるような技は使わない。」
「はあ?それじゃあ、お前瞬殺だぞ?いいのか?いくらあれだけのウルフを倒したって言ったって、それは自分の力を誇示しすぎじゃないかな?」

 もう二人の宮下に送る視線が痛い。"ウルフの死体の山見ただろ?お前バカなの?"という言葉が目を見るだけで聞こえる。

「たしかにさ。見たよ?昨日の昼で狩ってきた数じゃないって思ったよ?俺たちよりは絶対に強いって思ったけどさ。さすがに4対1でハンデは清水君の方、それに勝利条件は清水君に触るだけって。俺たちどんだけ舐められてんの?俺たちだって一応昨日戦闘の練習してたんだぜ?さすがに舐めすぎ〜。」
 
 宮下がそういうと他の三人も首を縦にふる。中川だけは小さい振りだったけど。
 その宮下達の反応を見てとうとう永本が口を開く。

「いいから、やってみれば?ハンデありでよかったってあとで絶対に思うから。」

 永本が冷たい言い方でそう言うと、"忠告はしたぞ"と言わんばかりには鼻を鳴らし、宮下達は従うことにした。

「じゃ、戦いは今から五分後。ここで。」
「分かった。」

 俺は少し離れた場所で準備をし始める。準備とは言ってもあまりやることはない。
 永本がこっちに来る。

「まぁ余裕だろうけど、なんであいつと戦いをすることになったんだ?」
「俺の興味と宮下達の実力を試すためかなぁ?」
「興味ってなに?」
「宮下の後ろにいるあの少し表情が暗いやつ、スキル持ちだったんだよ。」
「え!?……お前みたいなスキル持ち!?確か、レアなんじゃなかったっけ?」
「そうだな。でもその代わりと言っちゃいけないが、特性・耐性欄は空白だけどな。」
「へぇー。で?わざと負けたりなんてしないよな?」
「そんなことするわけ。ここは圧倒的力を見せつけておかないと!!というわけにもいかないけどな。まぁ俺が公表してしまった魔法だけ……まずこのステータスだけでも体に攻撃は当たらないから大丈夫だ。」
「そうか。おまえの決断だから俺は何にも言わないけど、頑張れよ!」
「おぅ!!」

 永本との会話を終え、残り二分。サポタと少し話す。

「サポタ。あのぐらいの四人の力だったら俺でもなんとかなる?」
『はい。なんとかなります。というよりも余裕です。しかし、たかし様も気になってらっしゃる通り、相手には能力上昇系スキルがあります。念には念を、無属性魔法で強化魔法をかけておきましょう。』
「そういえば無属性魔法って初めて使うな。強化魔法とかなのか。」
『はい。その通りです。』
「じゃああのスキル、俺要らなくね?」
『はい。能力上昇系スキルは魔力を必要としないという点のみで無属性魔法とは異なります。たかし様の場合、魔力が異常にありますので、必要ないと判断しました。』
「あ、そう。……じゃあ時間もないことだし、ちゃっちゃと教えてくれる?」
『はい。魔力を感じることができたら、頭のなかで"俊敏"と"魔力上昇"と唱えます。それで完了です。」
「分かった。」

 魔力を感じる。これはもう慣れたもの。アビリティーボールで何回かやったからな。
 
「できたな。あまり実感なしだが。」
『戦って見ればわかります。では頑張ってください。』
「あぁ!」


 永本と長谷川先生、サポタに応援された後、元の場所に戻りあちらも準備できたところで試合を開始する。
 俺に触れるかなゲーム……俺が勝手につけた名前だけど、ネーミングセンスがないのがバレるので自分だけ思っといて。
 
 この試合俺に触れるかなゲームは十分間となった。範囲は俺が土魔法で壁を作り済。大体四メートル四方の正方形である。
 審判は長谷川先生。壁の上にちょっとした観覧席から判定と時間を測ってもらう。
 宮下達は察しがよく、ダンジョン辺りに壁を作ったのが俺だということはわかったみたいだったが、まだ強気である。
 
 そして長谷川先生から開始の合図が出る。

「それでは開始する!……始め!!!」

 始めの合図の瞬間、中川がスキルを発動する。そして宮下を含む三人の魔力が増大した。
 そしてどんどん魔法を打ってくる。俺はその魔法を避けていく。どれも初級魔法だし、速さも遅い。

「魔法の速度遅くない?」
『それは現在たかし様にかかっている無属性魔法"俊敏"のせいだと考えられます。たかし様の現在の動体視力は魔法効果により、通常時の十倍となっており、魔法の速度も十分の一の速さに見えるということになります。相手視点から見るとたかし様の回避速度は目に見えていません。』
「ああ、なるほどね。無属性魔法のおかげね。でもこのまま避け続けてもあんま面白くないな〜。」
『魔法は避けなくても大丈夫ですよ?耐性に"初級・中級魔法無効化"がありますので。』
「あ、そっか。初級魔法だらけな今は避けなくてもいいのか。一回試しにあたってみよう。」

 俺は宮下が打った火属性魔法を体で受けてみる。すると俺に当たる寸前のところで透明な障壁に阻まれ、魔法は消え失せる。

「うわぁー。障壁システムとか、チート最強かよ。」
『障壁発動は全能神様からの加護でもあります。』
「あ、そっ。」

 宮下達は当たったことに気づかず、しばらく打ち続けていたが、俺はそれが分かったので避けずに障壁で防いでいた。
 そして魔力が三分の一になると魔法をやめ、俺の状態確認をする。
 もちろんのこと、おれのダメージは0。

 
 その姿を見て宮下達は絶句していた。


「よっ!魔法はそれだけか?」


 宮下達は何もいうことができない。俺もわかりきっている。この時点であいつらが打つ手はないことを。
 
 魔力もそこまで残っていない。というよりも今まで五分間ぐらい魔法を打ち続けたのに、ダメージを与えられないこの状況下では残りの魔力を使い果たしてもダメージを与えられないことは明白である。
 そして彼らは魔法特化型。つまりは体術や武術は低い、欄がない奴もいる。俺の体術の高さは既に学年全員に見られている。それは一番最初の田村を倒した時だ。
 生徒を力で捩じ伏せる田村あいつに勝った俺の姿は、印象に残っているはずだ。
 
 彼らの作戦は"魔法を当て続け、弱らせた俺を触る"というものだったのだろう。彼らの魔法一撃ではそこまでダメージは与えられない。俺が死ぬことはないと考えたはずだ。
 しかしその作戦も崩れ去ってしまった。

「宮下君達、降参か?」

 そう長谷川先生から声がかかる。残り時間はあと二分弱に迫っていた。

「このまま何もしなければ、降参と認めるけど……」

 その言葉を聞いた瞬間だった。宮下はハッと我に返り、後ろを向く。
 そして少し俯く中川の胸ぐらを掴み、大声で言った。

「おい!なんかできねぇのか!?もっと魔力を増やすとかできないのかよ!?」
「う、う……ご、ごめん。分からない。」
「わからないじゃねぇよ!何にもできねぇんだから!少しは俺たちの役にたてよ!」

 それに便乗して他二人も後ろを向き、中川に向かって罵声を飛ばす。

「おい!役に立て!何にもできねぇ豚が!」
「特攻でもいいからやれよ!」
「なんとかしろ!時間ないんだよ!早く!」
「のろま!気持ち悪いんだよ!なんとかしろよ!」

 何も言えない中川に言いたい放題。宮下達が本性を表した時だった。
 長谷川先生も忠告しているが、彼らは全く聞こえていない。
 俺はまだ止めには入ってなかった。確認したいこともあったし。

「清水!止めてあげろ!何やってんだよ!ボサってしてんじゃねぇ!!」

 俺はそういう永本に人差し指を鼻に押し付けた。そのあと右手を永本に向かって開く。
 それを一緒に見ていた長谷川先生は声を止め、指示に従ってくれた。

「なんか、言えよ!クズ!!」
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません……」
「おい!クソ!謝られてもなんにもなんねぇんだよ!使えねぇな!」

 宮下がひたすら謝る中川に右手を握りしめ殴りかかろうとした時

「ねぇ!ごめんね!お取り込み中。まだやるの?やらないの?どっちなの?」

 その声に宮下は右手から握力を抜き、中川に小さな声で命令した。

「特攻しろ。それで許してやる。成功したらお前の彼女にはなんにもしねぇから。でも失敗したらどうなるか分かってるんだろうな?絶対成功しろよ。」

 そう宮下が言うと中川はこちらをゆっくりと見上げる。その瞬間目が合う。彼の目は暗い。でも絶対成功するさわるという意思が見えた。

 そして全速力で走ってくる。声を上げながら。その時の中川の必死さの裏で、宮下達はケラケラと笑っていた。

 「パン!!!!」



「え?」

 

 俺はその彼の意思を攻撃を受けた。弱いグーパンチ。だけどそこにはちゃんと重みがあった。

「いい殴りだったよ。おめでとう。」
「え?」

 中川自体かなり困惑している。じっと僕の顔を見つめていた。

「おめでとう!中川君の勝ちだよ!触られちゃったしね。」
「え……」

 中川は俺の顔と手を交互に見つめる。そして理解が追いつくと、目から涙がこぼれ落ち右手を空に高く突き立て



「やったーーー!!!」


 大声で叫んだ。


 永本の方を見ると、グーサインを出され、長谷川先生も微笑む。俺も二人に向かって微笑んだ。
 


 しかしまだ問題は終わっていない。中川が喜んでいるのはいいのだが、なぜか後ろの三人も喜んでいる。

「よっしゃ〜!!ゴミの分際としては頑張ったな!これで異世界満喫ライフスタートの第一歩が踏み出せるぜ!」

 そしてこっちに歩いてくる。

「これで俺たちに修行させてくれるんだろう?俺たちの勝ちなんだから!」

 俺たちの勝ち?何言ってるんだこいつ?これは中川だけの勝ちだろ?

「いや、残念ながらそこの三人は修行させないよ。」

 その言葉を聞いた瞬間、三人の顔はたちまち曇り空、いや暗い雨雲のようになる。

「なんでだよ!約束が違うじゃないか!中川が触っただろ?俺たちの勝利じゃねぇか!」
「いや、俺たち・・・じゃない。これは中川だけの勝利だよ。」
「は?何言ってるのかわからないんだけど。中川は俺たちのペット仲間なんだから……」
「いや、俺は決して一回誰かが触れば全員が修行できるなんて言ってないけど?」
「は?そんなの言い訳じゃねぇか!?」
「言い訳じゃないさ。君達だってそれで納得したじゃないか。それに俺は君たちに教えようと教えまいとどっちでもいい。頼んできたのはそっちだ。そんな君達が俺に言い訳とか言える立場なのかな?」
「ずるいな!そんなこと後で言ってくるなんて!」
「ずるい?ずるいって言葉は君達の方がお似合いじゃないのかな?」
「なんだと!?」
「自分たちに打つ手がなくなったら、中川くんに全て押し付け、弱みまで握って脅すなんて。一番ずるいと思うけど。」
「この野郎っ!!じゃあ、こうだ!!!」

 そして俺に触ってこようとする三人。

「ストーーーッッップ!ここまで!タイムアウト!!!」

 俺に触る前に時間オーバーになってしまう。

瞬間移動テレポート
土兵創造ゴーレムクリエイト

 そして時間オーバーの声がかかった後、瞬時に後ろに回り込み、三体のゴーレムを作り出す。
 このゴーレムは朝やった実験で作り出すことに成功した、自作品である。
 土属性魔法と創造魔法の組み合わせによって完成した。
 俺の命令を伝えるとその通りに動き出す。通常、殴る蹴るの攻撃となるが、武器を備えていて命令すると右手が剣となる。
 この切れ味は木を簡単になぎ落とすことができる。武器ありゴーレム二十体いれば現在の俺といい勝負になるだろう。
 
 無論、宮下たちでは掴まれれば逃げることなど不可能になるわけで。

「ゴーレム。そこの三人を捕縛しろ。」

 動きもゴーレムだからと言って舐めてはいけない。走ればマラソン選手ぐらいにはなる。
 掴まれた宮下達は、各々叫ぶ。しかし捕縛が解かれるわけでもない。

「そのまま待機。」

「残念ながら君達三人は、先生方からの許可が取れたとしても修行はさせない。いじめなどする奴には力を持つ資格はない。」

「檻空間」

 俺は空間魔法で、小さい空間を作り出す。

「この空間はこの世界とは遮断されている。君たちにはここに入ってもらう。刑務所だと思ってくれればいい。この空間の中には俺が作ったゴーレムが何体かいるから、安心しろ。食事とかはなんとかなるだろう。」
「は?何言ってるのかわからないんだけど!こいつらっ離せ!!」

「ゴーレム。檻空間にそいつらを入れろ。そのあとはそっちの空間内でそこの三人を監視。一日ごとに報告しろ。」

 そして嫌がる三人をゴーレムは運ぶ。そして檻空間へと入っていった。


 
 

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