「神に選ばれ、神になる」そんな俺のものがたり

竹華 彗美

第九話 ゴブリン

 
 学年全員で蟻のように、一列で洞窟を歩いている。地下一階から地上までの階段を登り終わり、みんな息を切らす。
 そこまで急ではないが約三百段の階段はそこそこきついのだ。無論、俺は体力も異常なので全く問題ない。
 
 登り終えれば少し風も吹いてきてジメジメとした感覚ではなくなる。とはいえ二百人が動けば土埃が撒き散らされ、あまり下と変わらない。
 先頭にいる長谷川先生は俺が教えた通りの道を行く。俺はダンジョン内でモンスターに会うことはまずない、と言ったし、現に問題はなさそうだ。

「なぁたかし?」
「ん?なんだよ?」
「外に出たからと言って何にもなかったらどうするんだろうな。」
「まぁ、それは確かにそうだけどここの空気よりは健康的に入れそうじゃないか?」
「あ、そっか。たかしはもう外出たのか?」
「ああ。お前がグースカ寝てる時に長谷川先生と山寺先生で行ってきた。空気は美味いが確かに何にもないな。」
「そっか。」

 俺も永本と話をしながら出口を目指していた。しかしあともう少しで一組が出口に達する、という時に俺は特性を発動し、外の様子を見る。
 そして俺は走って長谷川先生のいる最前列まで急いで行く。
 俺の走りは誰一人として目で追えていないことには気づかなかった。

「長谷川先生!ストップ!!!」

 俺は長谷川先生の近くまで行った時声をかける。その声に一組、二組の人が反応し、足を止める。長谷川先生も止まった。
 そして俺は長谷川先生の耳元で外の様子を伝えた。

「先生、まずいです。出口を出た先約五十メートルに複数のモンスターの姿があります。調査スキルを使った結果、モンスターはゴブリンと見られ、武器を持っています。」
「なんだと!?それは本当か!」

 そう言うと二組を先導していた山寺先生も近寄ってきて事情を説明する。山寺先生はそれを聞くと"ゴブリン"を大きな声で言いそうになり、長谷川先生に口を押さえつけられた。
 そしてそこからしばらく三人で話し合いが始まる。

「どうすればいいと思う?」
「さすがに生徒たちに危害は与えることはできない。」
「俺が行けばすぐに倒せますが。」
「清水くん?さっきから思っていたのだがその自信はどこから?」
「まあまあ、山寺先生。清水くんのステータスはここにいる誰よりも強い。それは俺もこの目で見ましたから。それに田村先生の攻撃も避けてたでしょう?」
「確かにそれはそうだな。……ではどうする?」
「うーん。じゃあこういう作戦はどうでしょうか?先生方?」

 俺は閃いた案を先生二人に簡易的に説明し、了承を得た。
 ざわつく生徒に向かって長谷川先生は手を叩き、静かにさせる。

「みんな!先生達は一度危険がないか、近くを偵察に行くことにする!みんなはここで一時待機していてくれ。それから四組の清水くんを同行させたいと思っている。みんなも知っている通り、清水くんは田村先生を退けたり、コウモリを取ってきてくれたりと、先生達よりもこういう話には対応が早い。それは若いみんななら同じかもしれないが、現時点では何かあった時には一番頼れる存在だ!だからそんな清水くんに一緒に来てもらうようお願いし、了承を得た。なのでしばしの間ここで待機していてくれ!わかったな!」

 そう長谷川先生が言うとざわつくが、反論するものはいない。
 おそらく田村を倒したことや、最初に異世界だと主張して証明したこと、コウモリを一度にあれだけ取ってきたことを考えれば自分より強い存在だと言うことは、少なからず感じていたのだろう。
 それを先生にも認められているとなれば
何も言い返すことはない。
 ほとんどの生徒はその場で座り込み、近所同士で会話をしている。そんな中俺は先生二人と外に出たのだった。

 五十メートルはそこまで離れているわけではないが、ここは森林となっているので見通しが悪い。
 なので外に出ても確かに死角になっていて姿を捉えることはできなかった。無論俺は見えている。
 あちらは俺たちには気づいてはおらず、意味のわからない言葉で会話をしている。

「サポタ。あいつらの言っている言葉の翻訳できるか?」
『はい。だいたいの言葉で説明しますと、自分たちの住処の帰る道を忘れてしまってその口論をしています。』
「あらそうですか。で、調査スキルで見た感じ、食用にも向くって出たんだけど。」
「はい。ゴブリンの肉は脂身が少なく、ヘルシーです。この世界では冒険者達が小腹が空いた時に手軽に食べられています。また一般家庭料理でも使われるなど庶民にも愛されています。』
「でもなー。人型モンスターを食べる気にはならないよなぁー。」

 そして俺はゴブリン達の元へ行く。十メートルほどの距離まで近づけば、あちらも気がつき、貧相な武器を構える。
 数は八匹。茶色の体毛で覆われ、身長は五十センチぐらいだろうか。某妖怪アニメの"ねずみ男"の顔によく似ているが、あそこまで可愛くはない。手足の指には爪があり、武器も持っているが鉄の棒やら気を削っただけの弓矢である。
 そして一歩また足を動かすと予想外のことが起きる。
 
「ナ、ナンデスカ。」
「……!!??」

 俺はその言葉に驚く。今まで何を言っているのか分からなかったゴブリンが人間の言葉を話し始めたのだ。驚かずにはいられない。
 
「ワタシタチ……コノモリ、セイカツシテル。イマ、アナタトタタカウ……カチメナイ。コウサンシマス。……カラ、ニガシテクダサイ。」
「降参?」
「ハイ。……ワタシタチハ、アナタトタタカウ、イシハナイ。」

 そう一体のゴブリンが言うとゴブリン達は、鉄の棒やら木の棒で作った弓を捨て、手を挙げ降参の意思を示した。 
 その時、先生達はようやくこちらに来てゴブリン達の姿を見て驚いた表情をした。

「……これは。……本当にこんな生物がいるなんて……」
「たかしくん……どうするのかね、これらを……」

 俺は先生のことなど全く耳に入ってこない。それよりも衝撃的なことが起きているのに、それに反応は出来なかった。
 俺がゴブリン達が言葉を発したことに驚き、固まっているとサポタが心配したような声で話す。

『どうかしましたか?』
「いや、ゴブリン……というかモンスターが人間の言葉を話せるなんて、驚いてしまって。」
『前の世界の固定概念はこの世界では通用しないことは多いです。しかしこのゴブリン達はこの世界でもかなり珍しいと思われます。言葉を発するゴブリンはこの世界では人間の護衛・囮の時に使われます。近くに村や町がある可能性が高いです。』
「なるほど。」

 その話を聞き納得し、ゴブリン達に話しかける。

「お前らは、道に迷ったのか?」
「ハイ、ソ、ソノトオリデシ……。」

 先生達は俺がゴブリンに向かって話したことが不思議に思っていたが、ゴブリン達から返事が返ってくるとまたもや驚く。
 俺はそんな先生達は無視(視界に入っていない)し、再度尋ねる。

「俺たちも今、道に迷っててな。ここがどこさえもわからないのだ。お前達の主人は人間か?そうでなければなぜ人の言葉を話せる?答えろ。」
「ハイ……。タシカニ、ワタシタチハ……ニンゲンサマニ、シタガッテイル、ゴブリン。イマ、キノミトッテイタトコロデス。チカゴロ、モリノヌシ……キガタッテ、モリ…アンゼンデナイ。」
「なるほど。だから、お前達が食料集めに駆り出されたってことなんだな?それで迷ってしまったと。」
「ハイ、ソノトオリ……ス。」

 その言葉を聞いた俺は村のような場所があるかどうか探す。しかし反応がない。
 魔力感知だと生命の全てを感知してしまうため、人か魔物かは区別ができないのだ。なので目が利く四キロ圏内が頼りなんだが。

「四キロ圏内にはないようだが。どのくらい遠くから来たのだ?」
「ソウトウ、アルイテ……ヤクフツカカンサマヨッテイマス。」

 二日間!?そんなにか……それなら四キロ圏内にあるはずはないか。もしかしたら魔力感知圏内十一キロにあるかもわからないな。

「分かった。それなら。もう一度聞く!俺たちを襲う気は無いんだな!?」
「ハイ、モチロンデス!アナタサマニ、タタカウ、イッシュンデショウ!」
「では一緒に村を探してやる。付いて来い!」
「ハッ……ハハァ。」

 そうして俺はゴブリン達を仲間にした。隣で驚きのあまりびくともしていない先生達に"大丈夫です"と声をかけ、みんなに安全だということを知らせに行き、無事全員外に出ることが叶った。
 外に出た人達は皆、大きく深呼吸をした後、点呼が終わると休んでいる。
 久しぶりの日の光に当たり、頰が緩んでいた。

 俺は先生達と永本を呼びゴブリン達の事情を説明する。これには誰もがゴブリンという存在に絶句していたが、もう好きにしろと長谷川先生に言われた。他の先生方も同じような反応で、永本もだった。
 点呼が終わった後、三十分ほどはダンジョン入り口付近で待機となっていたが、俺が長谷川先生に三キロ内なら問題ないと伝え、俺は自由行動できるよう、周囲三キロに小さく壁を作った。
 そしてそれが確認されると、一度全員が集められ長谷川先生から壁の中なら安全だということを伝えられ、その中なら自由行動を許した。
 もちろん俺が壁を作ったなどというわけではなく、適当に説明がされた。
 またゴブリン達も紹介された。まだ言葉が通じないのであれだが、危害を加えないことを行動で示してくれたおかげで、この場を凌いだ。
 
 その後は各々の行動となり、壁の中で疲れを癒す者、魔法を試している者、グループになって話している者……様々だが、俺は全く違う行動をしていた。
 長谷川先生に許可を取り、俺・永本・言葉を発せるゴブリンを連れ壁の外へ出ていた。
 許可を取るとき夜には絶対戻ってくるという約束をしたが、先生からの反応は呆れられたような返事で返ってきた。
 そして俺たちはゴブリン達が帰る村探しをするついでに、モンスターを狩りまくっていったのだった。
 

 

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