「神に選ばれ、神になる」そんな俺のものがたり

竹華 彗美

第八話 サポタの平然とした説明


 俺は先生と共にこのダンジョンの出口を目指す。このままいけばモンスターにも出会わず、あと五分ほど歩けば外に出られそうである。
 つい先程サポタからも連絡が入り、起きたみたいだ。
 先生二人は黙ってついてくる。何事も発さずにだ。緊張しているのだろうか、はたまた俺の目を盗んで逃げるタイミングを模索しているのか。
 俺の頭には今はネガティブな考えしか浮かんではいない。

 少しずつ出口に近づいていくと光が漏れ、明るくなっていく。また風の流れも向かい風となる。
 吹き込む風は暖かいもので、自然と自分の体を包み込む。
 そして次の曲がり角を曲がると、光が見える!出口である!

「長谷川先生、山寺先生。出口です!少し外を見てきますからここでお待ちください。」
「ああ。」
「ん?……ああ。」

 山寺先生は少し気にする素振りを見せたが、長谷川先生の顔を見て悟ったのか承諾した。
 これにより俺は"見回り"から"最初に空気を味わえる"状況を作り出す。なんせ近くに生物の反応はないのだから。
 俺は出口に向かってゆっくりと歩き、外に出る。

 木々が生い茂り、色とりどりの花が咲き誇る。そして澄んだ空気に川の水の流れる音が聞こえる。コオロギの鳴き声がする。
 空は夜だから暗いが、星は満点に光り輝き、月明かりが木漏れ日から溢れる。
 俺は大きく息を吸い深呼吸をする。ダンジョンの中のジメジメとした微かに獣臭がする空気とは違い、新鮮なものだった。
 美味しい空気を一人堪能していると後ろから声がかかる。

「清水〜!?どうだ?大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよー!先生達も来てみてください!とっても気持ちいです!!」

 俺は後ろを振り返り返事をする。
 ダンジョンは外から見れば洞窟だ。まぁ中も洞窟だし、驚くことはない。
 先生達は外に出るやいなや、俺と同じように深呼吸をし始める。そして俺と同じようなことを呟く。そして周りを見渡し終わったあと、洞窟内に戻る。

「早くみんなをここに連れてきてやんなきゃな!こんなに綺麗な空気なんだ!早く吸わせてあげたいな!!」
「そうですねぇ!長谷川先生!超特急で皆さんのところへ!!」
「ああ、そうだな!」

 こうして先生達は洞窟の奥へとどんどん歩いていく。これによって俺のネガティブ思考は簡単に破られたのであった。
 俺は先生二人を追いかけ転移魔法で戻らないかと提案する。すると長谷川先生は俺がいいのならと賛成してくれた。
 俺は二人とで繋ぎ、転移魔法で地下一階から地上までの階段までワープする。階段を下り、左に真っ直ぐ行けばみんなのいる場所に行ける。
 それを改めて先生二人に説明し、モンスターも遠くだったことから安心して帰ればいいと言った。
 俺は先生達と行くと他の先生から疑念の目を向けられるのは三人分かっていたので、日が明けたらみんなを外に連れて行くという約束で、別れることにする。
 俺はそのまま永本の元へワープした。


 みんなは九割が寝ており、起きている者もうとうととしていた。
 俺は何事もなかったかのように永本の隣へと転移し、サポタと話をする。

「サポタ?」
『はい、なんでしょうか?』
「お前、この世界のことってどのくらいわかってるんだ?」
『はい。それは大体の知識はプログラムされています。』
「じゃあ、この世界はどんな世界なのか、分かるのか?」
『はい。ーーこの世界は大きく五つの大陸に分かれており、大陸毎独自の文化を築いています。まず西に円状に広がる大陸が"タールナーレプレート"。ここは大陸の中心に火山があり西の民にとってはその山は聖地となっています。しかし近年その山の神の象徴であった山の主のドラゴンが姿を消したことで混乱が生じ、それにより情勢は不安定になっています。また北の国"ブラガルンプレート"との関係も悪化しています。
北の大陸"ブラガルンプレート"はこの世界では最も小さな大陸で一つ大陸に一つの国が形成されています。この国は武力国家で近年は領土拡大の為、西の民・東の民と衝突しています。
東には"フリーヌープレート"があり、その中で北部は軍事、東部では工業、西部では農業、南部では観光業をしています。その中で主にご種族が集まり団結し暮らしています。北の民からの攻撃はその団結力によって防いでいます。
南には"ギルガードプレート"が広がり、魔族が主に住んでいます、魔族とはこの世界では差別の対象とみられることが多く、奴隷にされたり見世物とされたりしています。ですが少なくとも南の民は魔族で有ろうと無かろうとお互いに理解しあい住んでいます。
そしてその四方の大陸の中心にある大陸が"サンフュールプレート"です。五つの大陸の中で最も大きくこの世界の中心となっています。いくつもの村・町・国が点在しその中で中心の中心、いわば世界の中心には時計台があります。その時計台の中にこの世界のコアがあり、それを守るのは現在の勇者です。コアとは一つの世界に必ず存在する核。それが壊されるとその世界は無くなり、灰と化します。これはその世界を作った神の心臓であり、壊されればこの世界を作り、育て、見守る神が死ぬわけですから、この世界は形を留めることができなくなり、結果灰となるのです。そしてその核はただのこの世界で認めた勇者などという弱き存在ではなく、神の子・・・である転生者、その中でも選ばれた者が守るということになっているのです。』
「おいおいおいおいおい!!!ちょっとまてちょとまて!その話を聞く限り、俺はそのコアを守るために選ばれたってことか!?」
『いいえ。義務というわけではないので絶対ではありません。』
「なんだよ。はぁ。びっくりした〜。」
『ですが……』
「ですが!?」
『この世界はまだできたばかりなので、まだ何も大きな事件はありません。ですが、たかし様が来られた世界では何か世界規模での大きな事件があったのではないですか?』
「……あ、ああ。……確かに戦争があった。」
『あの球体の中にはコアがなく、違う場所に保管されていたのですが、もしあのような危険な場所に……いやもしこの世界があのようなことになればコアは破壊される可能性は非常に高い。それを止め守ることができるのは神に選ばれた者の宿命なのです。もしコアが破壊されればここにいる全ての生命はなかったことになり、二度と循環は起こらず、闇に落とされます。それは転生者も同様。永久に生き返ることはありません。現在世界は二百六十八存在していますがその中で二百二十の世界は"神々に認められし者"の称号を与えられています。その中でコアを自分の手で守っている者は二百八名となっています。』
「はぁ。……義務となっていないにしても俺がやるしかねぇのか〜。」
『それが一番安全だと思われます。ーそして最後にそのコアを守りきり、神が正式に認められれば、あなたは"神"となれるのです。ーーそれがこの世界の説明兼コアの説明となります。』

 ……ん?……ちょっと待てよ?今サポタさんさらっと流したけど、聞き逃してないから!。
 今まで口に出さず会話していたが、無意識に小声で言う。

「……神になれるってどういうこと?」
『そのままの意味です。認めるのはコアを守ることだけではなく、レベルなども関係しますが……』
「いやそこでなく……」

 次第に声が大きくなっていく。

『神になったらまずは下級からスタートですが……』
「いやいや、違うって!神になれるって……どういう?」
「どうした?何かあったか?」
 
 その言葉で永本が起きる。しかし俺は気づかない。

『神というのは一つの世界を作ることができる……』
「いや、だから!そこじゃなくて!!!神になれるってどういうことだよ!?」

 その声に反応して周りの人が起きだす。

『それは、全知全能・不老不死の神様になれるということですが?それがなにか?』

 それをサポタが言うと俺はこのダンジョンに響き渡るような大きな声で言った!!無意識に声が出てしまったのだ。

「はー!!!???なんだと!!!神になれるなど、なんてことだ!!!!!!」

 その声に寝ていた者は全員起きるどころか飛び起き、こちらを見てくる。先生たちもこちらに慌てて来て声を上げる。
 しかし先生たちの声は俺の放った声の余韻によって見事に掻き消され、余韻が消えた頃には俺もその状況に気づき、シーンとなった。
 そしてしばらく沈黙が続いた後、誰かが声を出したことで一気にざわつき始める。

「どうしたんだ?あいつ?腹空きすぎておかしくなったんじゃ?」
「すげぇでっかい声だったな。あいつのスキル実は大声を出せるとか?」
「変な夢でも見たか?ハハハハハ!」

「どうしたんだよ?たかし!」
「……すまん。サボタの話があまりにも冗談だろ?案件だったから、思わず大声で言ってしまった。」
『冗談ではありません。事実で……』
「はいはい、わかった。」

 その時、先生が静かにするようにと手を叩く。

「はい!みんな静かに〜!今大声を発したのは清水くんかな?こっちに来てもらえるかな?なんて大声を出したのか、こちらに来て話してくれ。」

 そう言ったのは長谷川先生だった。少し怖い顔で言ってきたので、俺はそれに従うしかなかった。

 その後、何分間か二人で話をし(いや怒られ)その後解放される。
 みんなはまだ俺のことで変な想像をしたりしてざわついていた。
 
「はい、みんな!聞いてくれ!!!清水くんは悪夢を見たみたいなんだ。それで大声を出してしまったようだ。」
「皆さん。寝ていたところ起こさせてしまってすみません。」

 僕は謝る。頭を下げてだ。しばらくはこれでいじられそうだと思ったのだった。


 そしてその後目が覚めてしまったみんなは俺のことで笑いあったりしていた。
 俺は俺で永本にその話をすると"それならしょうがない"と慰められた。とはいえ自分の仕出かしたことで笑われるのも恥ずかしいもので顔は見ずしても赤かったに違いない。
 
 そして朝になり、長谷川先生が全員を静かにする。

「みんな、大事なことだからよく聞いてくれ!!ここを出る道が見つかった!あと三十分後に出発する。クラスごとに並び、クラス長は点呼を頼む!では行動を開始してくれ!!」

 俺のお願い通り先生は上手く立ち回ったようで、ここを出る準備が整う。
 各クラスの点呼が終わり、先生達が前に立つ。長谷川先生が長らしい。

「ではここから出る。道中危ない場所もあるので落ち着いて一列で行動すること!では一組から俺の後についてきてくれ!」

 一組から一列で歩き始める。みんな前後と話をしながらである。一組一組の間に先生が入り最後尾にも先生がつく。
 そして俺たちも出発をした。
 ちなみに問題の田村先生は俺が先に誰にも気づかれないように外に転送しておいた。そしてそれをしなかったらおそらく忘れられていた。



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