「神に選ばれ、神になる」そんな俺のものがたり

竹華 彗美

第六話 ウルフとの戦い


 俺と永本はウルフ達が向かってくる、道を歩く。もうすでに距離は五百メートルとなっていた。
 二人が立ち上がり、道を行こうとすると当然ながら先生が止めに入る。

「何をしに行くんだい?」
「ちょっとトイレにー。」
「トイレなら仮設のものをあちらに作っただろう?そっちでしなさい。」
「いや〜。ちょっとお腹が痛くて。長くなりそうなんですよ。さすがに何十分も独り占めするのは気が向かなくて〜。」
「そうか。だがしかし、生徒だけの単独行動は認めん!俺も付いて行くぞ。」
「はーい。お願いしまーす。」

 先生も一緒についてくる。やはりすんなりは通れないよな〜。
 ウルフとの距離は残り二百五十メートル。薄暗いお陰でまだ先生と永本には見えていない。
 だが、ウルフ達は俺たちに気づいているようで警戒している。もう目と鼻の先なので俺も一応警戒していた。

「この辺でします。先生はあっち向いててくれますか?」
「ああ、わかった。」
「ほら、永本もそっち向いて。」
「あ、ああ。」

 永本と先生が反対側を向いたのを見計らって俺は先生に精神魔法の中の"睡眠スリープ"を使う。
 すると先生の瞼は閉まり、倒れて寝てしまう。
 先生が倒れた姿を見て永本は何が起きたのかと言わんばかりにこちらを見る。
 
「先生が!倒れたぞ!?たかし!」
「落ち着け、落ち着け。俺が魔法で眠らせただけだよ。」
「……あー。そうだったの。」
「それよりも、もうウルフとは目と鼻の先だ。壁作るからもう少しこっち来てくれるか?」

 そう言い、俺は手招きをする。そして先生が寝ている場所と俺たちの間に地属性魔法で地面を盛り上げ、道を閉ざすように壁を作る。
 ウルフ達の後ろにも壁を作り、退路を断つ。一応食用だ。コウモリ肉よりは腹持ちするはずだから、みんなのためにもここで狩る必要がある。
 壁と壁の間は二百メートルにする。この間が戦闘域となる。
 ウルフ達は自分達に退路が断たれたのを確認すると歩くのを止め、こちらを睨みつける。
 永本もようやくぼんやりとウルフ達の姿を捉えられるようになったようで構えている。

「少し暗いな。」

 俺は光属性魔法で光の球体を作り上げ、辺りを照らす。

「俺は視力強化あるし、あちらは夜目が利く。これで戦いやすくなっただろう?」
「ああ。よく見えるよ。ありがとう。」

 俺は土に触り、創造魔法と地属性魔法によって石の片手剣を二本作り、永本に一本渡す。

「はいよ。渡しとく。」
「有り難くもらっとくよ。ありがとう。それにしてもほんと何でもありだな。」
「まぁな。……お前は一番左の子供を任せる。魔法を打つときはイメージが必要だ。なるべく鮮明なイメージを持ってやるといいぞ。」
「わかった。」
「俺は今回、補助以外は体術や武術で戦うつもりだから、ピンチなときは名前でも呼んでくれ。」
「ああ、よろしく頼む。」

「「「「「「「「ウォオオオオオオ!!!!!!!!」」」」」」」」

 ウルフ達はこの階に響き渡る声で雄叫びを上げ始める。これが戦いの前の気合い入れか。


〜所変わって待機場所〜

「なんだ!?これは!!!」
「そっちから聞こえる。これは何か動物の雄叫び!?」
「先生!!さっきそっちに清水くんと永本くんが担任の先生と一緒に!!」
「分かった!見てくる!」


〜戻ってたかし側〜

 ウルフ達は雄叫びが終わるとこちらに向かって走ってくる。

「行くぞ!!!」
「おう!」

 俺と永本も戦闘準備をする。
 そして俺は左の子供以外のウルフ達を風魔法で向こうの壁に飛ばす。ウルフ達の足は宙に浮き、七体は反対の壁に打ち付けられる。
 左の子供は他の仲間が突然いなくなったことに驚いて、一瞬足が止まったが永本の方へ足を動かす。
 俺はそれを見計らって、走って反対の壁に打ち付けられた七体の方へ行く。

「やられないように気をつけろよ!」
「お前もな!」

 その言葉をお互い言い交わし少しの距離を移動する。

 七体は壁に打ち付けられたことで、さっきよりも弱っていた。そんなに強く吹き飛ばしたつもりはなかったのに……。
 ウルフ達は起き上がるとこっちを向き睨みつける。そして再び雄叫びをあげる。
 そして一本角を持つボスが先陣を切り、その後に俺を囲むように整列する。
 そしてだんだんと近づき一斉に飛びかかってくる。
 それを回し蹴りで抑えめに蹴り飛ばす。ウルフ達は壁に打ち付けられる。壁に打ち付けられたウルフ達は弱りながらも立ち上がり、また攻撃を仕掛けてくる。
 一匹が突撃してきたので軽く土から作った短剣を振ってみる。すると次見たとき既に胴体から首が離れ倒れている。
 赤い血がドロドロと出て生臭い匂いが周囲に広がったため気分を悪くしたが、回復魔法により良くなった。
 それにしても軽く振ったつもりだったのに、一発であんな風になるとは……。

 ウルフ達は同胞が殺されても目をそらすことはなく、こちらを睨みつける。これが野生の掟のようなものなのだろうか。
 そして陣形を整えるとまた襲ってくる。
それも軽く避けさらに二体を剣で斬る。手にも顔にも血が飛び散り、気分が悪くなるので回復魔法を使う。
 ちらっと永本の方を見てみると頑張っているようだが、致命的な攻撃は与えられていない。
 早くあっちにも行かなければいけないので、さっさと終わらせるか。
 四体になったウルフ達は少し怯えながらもまだ戦闘態勢を維持している。
 退路を断たれたウルフ達にとってどうにかして相手を倒し突破するしかないと分かっているからだ。
 また一体が突撃してくる。今度は頭にかかと落としを食らわせた。するとウルフの頭蓋骨は粉砕され死亡した。
 その後に後ろから一匹右と左から一匹ずつ襲い掛かられる。囮作戦だ。後ろのは一本角のボスだ。
 まずは左側から来たやつを左手で頭を殴り地面に叩きつけ、右から来たやつを剣で頭と胴体を切り離し、回れ右して後ろから来たボスを永本が戦う壁の方まで蹴り飛ばす。
 その俺の速さはウルフ達は感知できず、避けるとはできなかったみたいだ。三体は即死である。

ーーーーー

【永本SIDE】

 ウルフ七体がたかしの魔法によって反対の壁に打ち付けられる。一匹のウルフはそれに驚いて足を止めたがこっちに向かってきた。
 俺はこの状況をまだ受け入れずにいる。そりゃそうだ。異世界に転移したなんて「はい、そうですか。」と言えるはずがない。俺は絶対無理だ。
 それはたかしも同じだ。サポタとかいうあんなやつの説明があったとしてもあいつはまだここが夢の世界じゃないかとか思っているはずだ。
 そう。夢の中だったらどんなにいいかと思ってるはずなんだ!
 
 これが現実だということは認めたくはない。が、現実なのだ。どうあがいても現実は変わらない。それもたかしは分かっている。
 だから俺に気を遣わせないように普通に振舞ったり、こんな理不尽な環境の中でも一緒にいてくれるのだ。
 それに応えなければ!まずは自分を守れるように!強くならなければ!ここが現実なら、いや夢であってもいずれは受け入れなければならないのだから!行くぞ!!

「やられないように気をつけろよ!」
「お前もな!(たかし、俺やってやるよ!この現実を受け入れて戦う!!)」

 
 たかしが一瞬にしてあっちに行ってしまう。ほんと規格外だよな〜。あれ。
 ウルフの一体はこちらに向かって突進してくる。俺はそれを右に避けたかしからもらった剣を振る。
 当たった感触はある。しかしまだ肉に少し入っただけだった。傷は浅く効いてない。
 また襲ってくる。また横に避けようとすると噛み付いてきたのでとっさに火属性魔法を唱える。
 たかしに教えてもらった通り、火のボールをイメージして打つ。
 するとウルフの鼻に命中する。そして「熱い、熱い。」と言わんばかりに鳴き、後退する。その時、たかしの方を見れば一匹倒し終わっていた。
 俺はそれを見た後、汗を拭い、まだ熱がってるウルフに向けてもう一発火の玉をぶつける。
 すると今度は背中の方に当たり、消そうとしている。その隙を狙って突撃し、剣で斬る。
 しかし剣は全く深く刺さらず、致命傷どころか全くダメージを与えられていない。
 そのうちに火は消えこちらを睨みつけてくる。汗が滴り落ちる。
 ちらっとたかしの方を見ればあと四体となっていた。こっちは一番弱い子供をまだダメージも与えられていないことに、力の差を感じた。
 まだ魔法の方がダメージは与えられるので火の塊をイメージして突進してくるウルフに当てる。
 しかしなんども同じ手が通じるわけもなく、避けられる。剣で受け止めるが力はどう考えてもウルフの方が上手だ。
 そして押し倒されようとした時、横をものすごい勢いで吹き飛ばされてきたウルフが土の壁に打ち付けられた。


ーーーーー

【たかしSIDE】
 七匹のウルフを倒した後、俺は永本の支援に行く。さっきまでウルフに押し倒されそうになっていたが、突然飛んできた自分のボスに驚き、ウルフは後退していた。
 俺は永本の元まで行き、汗だくの姿を見て頑張って戦っていたことが伺えた。
 それに俺以外はウルフ一体倒すのにも苦労してしまうかと思うとなんとなく申し訳ない気持ちがした。が、その気持ちは言ってはならないことは分かっている。

「そっちは終わったのか?」
「ああ。お前はどんな感じだ?」
「見ての通り、全くダメージは与えられてねーよ。それに俺の体力もかなりきつい。魔力ももう残り少ない。」

 俺はそんな永本に回復魔法をかけてやり、体力・魔力・気力の面でサポートする。息を切らしていた永本はすっかり元の呼吸に戻る。

「ありがとな。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「それで、俺はどうすればいいと思う?剣は全くダメージを与えられそうにない。まだ火属性魔法で動きを止められるだけだ。」
「お前のステータスには体術はあったが武術の欄はなかった。ということは武術に関してはほぼ無力ということだろう。体術はどちらかというと自己防衛だから、魔法で攻めるしかない。俺が魔法書で探してやるからその間は適当にやっててくれ。」
「お前…適当って……。まぁ分かった。よろしく頼む。」

 俺はそうして少し離れた場所で魔法書を開き使えそうな魔法を調べる。


ーーーーー

 適当にやれって……それが凡人には一番きついんだっつーの!
 
 でもあいつは俺にこのウルフを俺に任せてくれている。これは俺が少しでも早く強くなれるようにとのことだろう。
 その想いは無駄にはしない!俺は再び襲ってくるウルフに火の玉を当て時間稼ぎをする。なんども同じ手が通用するとは思ってはいない。
 しかし最後までやり切ることを与えてくれた友へ。俺はこの戦い絶対勝ってみせる!
 

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