夜と朝のあいだに。

自他

プロローグ

 「夜と朝のあいだ」。
 それは、昨今の国民の不眠の原因とされているある空間のこと。夜、日付が変わる頃から朝方、みんなが起き始める頃までの間、勝手に目覚め勝手に動けるようになるのだ。
 私、文(ふみ)と夫の明(あきら)は毎日夜と朝のあいだになると、昼間とは少し異質な街へ繰り出す。毎日毎日夫と歩いてみると、見慣れた若者から見慣れない若者まで、実にたくさんの人がこの空間で夜を過ごしている。
 それが良くないことというのは、私と明が1番分かっていると思う。
 でも、この空間に訪れる若者は増える一方だし、私達は呪いにかかったみたいに毎晩この空間で朝までの時間を過ごす。
 何故こんな空間ができてしまい、若者が入り込んでしまっているのか、それは誰にもわからない。もちろん、わたしにも…。

 こんな世界、いつまで続くのだろう。

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