【完結】女装男子のインビジブルな恋愛事情。

瀬野 或

■【一十四章 The Sanctuary of you and me,】■


 三日間の短縮授業が終わり、春休みが訪れた。

 高校生になって初めての春休み。この休みが終わればビギナーと言えなくなる。勉強も更に難しくなるだろう。そのための準備期間として春休みが設けられているわけで、決して『遊び呆けていいフリーダム期間ヒャッホーウ!』というわけじゃない。学生の本分は勉強にある。だけど、僕はなんのために勉強をしているんだろう? と、不意に思うときがあったりする。

 いい大学に入って、就職を有利にするため? それなら、小学校から大学までの道のりは、『いい大学に入るため』と定められるのだが……ううん、僕は別にいい大学に進学して、一流企業に就職して、その会社に骨を埋めるまでを美徳とした企業戦士ではない。そういう生き方もあるんだろうけど、僕はそういう生き方がどうも堅苦しく感じてしまう。

 いい就職先に巡り会えれば、そこでやり甲斐を見出すこともあるだろう。給金も弾むし、肩書きでマウントを取れば恋愛も有利に働くのかもしれない。でも、その先にある物は幸せと言えるんだろうか──いや、僕は幸せになりたいわけでもない。だからと言ってインドに出向き、人生観を180度変えようとも思わないんだよなぁ。そういうのは、カフェで珈琲を飲みながら、我が物顔でノートパソコンのキーボードを、カタカタ、ターン! としている人たちに任せたい。エンターキーを強く押したくなる気持ちだけは、わからなくもないけどね。



「【完結】女装男子のインビジブルな恋愛事情。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く