ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました
第38話ーNegligence
甘かった。
入り口前で油断するなと自分で言ったのに。
油断した。
リュミナはAランクだ。だから、大丈夫だと思った。…思ってしまった。
そもそもリュミナは魔法使いであって遠距離戦は得意だが、接近戦は苦手だ。遠距離戦ならば、リュミナはそこらには負けるとは思わない。
だが、王都のなかで遠距離戦なんて出来るだろうか。…いや、できない。できるはずがない。一歩でも間違えれば一般市民に当たってしまうのに。
これはリュミナが悪い訳じゃない。悪いのは私だ。私のミスだ。
「くそっ! …あの…クソ勇者!」
家に帰っているリュミナとユウが襲われた。しかも…城の暗殺部隊を使って…! 暗殺部隊を動かせるのは王様の命令のみのはず。だけど、リュミナは言った。暗殺部隊と。
だけど、あの王様がクソ勇者につくとは思えない。たぶん、何かしらの魔法か魔道具を使って無理やり従えさせている可能性がある。
それに、
『…ユウの様子がおかしい。怯えてた。推測になるけど、人が怖いんだと思う』
リュミナが言っていたユウが人を怖がっているということが本当なら、ユウは……人相手には本来の力を出せないのではないか。
でも、どうすればいい…!? 王様が勇者についたなら私を城に入れるわけがない。かといって、勝手に入れば不法侵入扱いで犯罪者となる。
『回復阻害の魔法なんて聞いたことないわよ。悪いけど、私はここでリュミナを見てるわ。リリィ任せたわよ。…たとえどんな結果になっても、私ははあなたについていくから』
『お願い。ユウを助けて。私ならなんでもするから。だから…お願い』
ふと、2人の言葉を思いだす。
…本当にいいの? どんな理由であれ、王様が敵に回っているとしたら、私達の指名手配は確実。
でも…でも……もしユウを見捨てたら? そうしたら、いつもどおりの日常が戻ってくるんじゃないの?
「…っわったし…はぁ!」
何を考えてる! なぜ考えた! 約束…したのに!!
『…私は…みなさんが強いことは知ってます。いろんな人が言ってるのを聞きましたから。でも…それでも……私といると迷惑かけてしまいます』
『こほん…とにかく、10歳でも、14歳でも子供は子供よ! だから迷惑なんてたくさんかければいい! 全部、ぶっとばしてあげるから』
…あのときのあの言葉が一字一句よみがえる。
私は約束した。迷惑なんてたくさんかけろ。そのたびに全部ぶっとばしてあげるから…って!
この約束を果たすのは…今でしょうが!!!
ユウは絶対に助ける! たとえ全てを敵に回したとしても! ユウを助ける!
「待ってなさい…! ユウ! 絶対に助けてあげるから」
目標は、王都の王がいる城。
☆ ★ ☆ ★
時は少し前に遡る。
ユウと2人きり。すごくうれしい。ユウはとてもいいこ。だからついつい甘くなる。
ユウと出会ってから私は少し変わったと思う。それはよく笑うようになった。微笑み、みたいな感じだけど。シエルとリリィに会っても全然変わらなかったのに、どうしてユウと会ったらこんなにも変わったんだろう?
やっぱり、ユウは他の人とは違うからだろうか。ステータスのことはもちろんだけど、それよりも、ユウの存在が他の人とは何か違うような気がする。
でも、別に悪い意味じゃない。良い意味で存在が違う。
ユウとこれからも一緒にいたい。だけど、ユウはどう思っているんだろうか。一緒にいたいって思ってくれているからだろうか。
「…ん。リュミナ?」
「よしよし」
「…えへへ」
かわいい。すごくかわいい。本当に天使みたい。ずっと撫でていたい。甘やかしていたい。堕落させてあげたい。…私、
……私なしでは生きていけない体にしたい。
…………? 私は今、なんでそんなことを思ったのだろう。よくわからない。私はただユウとこれからも一緒に入られればそれでいい。もちろんリリィもシエルも一緒だとなお嬉しい。
シエルとリリィはこんな私を受け入れてくれた大切な親友だ。絶対に大切にしたい。
今もユウは私に頭を撫でられている。とてもかわいい。
「…あ、リュミナってどんな本をよむの?」
「魔法が色々と書かれている本。魔道書と言う」
ふと気づいたようにユウが聞いてきたので、答える。
「魔道書!? 見る! 魔道書見る!」
「うん。見せてあげる」
子供のように目をキラキラさせて言ってくるユウにおもわずほっこりする。
やっぱりユウはかわいいし、すごい。これもユウの力なのかな。
「いいこいいこ……ん?」
「……ん~! …リュミナ?」
何かいる。5人? 私達の後をつけてる。…ユウが狙いかな。…でも、大通りなら手を出しては来ないはず。とりあえず、リリィ達に連絡。
…………あれ? 繋がらない。どうして。もう一回。…………駄目だ。やっぱり繋がらない。何かしらの遮断系の魔法? でも、魔力は感じないから、違う。じゃあ、どうして。
「ユウ。リリィ達のところに行く。ついてきて」
「え…どうして」
ユウの手を掴み、歩き出す。理由は後で話せば良い。とりあえずは2人と合流しないと。
リリィ達は買い物だから、たぶん市場。そこなら色んな物置いてある。
「…リュミナ……手、いたい」
「ご、ごめん」
リリィと合流するのに思考をとられ、無意識にユウの手を強くつかんでしまったみたいだ。
「…ユウ? 大丈夫? ちょっとふらついてる」
目をつむりふらふらとしてるユウを呼ぶ。だけど、返事がこない。どうしたんだろう。どこか具合でも悪いのかな。
「ユウ?」
「……ねぇ、リュミナ。…………こっち行こ?」
「ユウ? 待って。そっちはダメ」
動かない。ユウの手が私の手をつかんで離さない。動かない。動かない。
……体が、うごかせない。
「…大丈夫ですよリュミナさん」
ユウは安心させるように言う。ユウ? ゆう? ゆ…う…?
……今のユウは、本当にユウなの?
ユウはさっきなんて私に話しかけた? …だめ。思い出せない。記憶力は良い方なのに。
「リュミナさん。大丈夫ですか?」
「…ゆ…う?」
なんだろう。ゆうに話しかけられるとぽわぽわする。疲れてるのかな?
「一緒にここから…リリィさんとシエルさんを置いて逃げませんか?」
「にげ…る…?」
なにを…いってるんだろう…ゆう…は。
「だって、私達が狙われているのも元はと言えばリリィさんが原因んですよ?」
「リリィさんが勇者様の言葉に従わないからですよ?」
「だから…ね? 逃げましょう?」
「2人きりですよ?」
2人きり。2人きり。頭の中で何度もその言葉が響き渡る。そう…だね。私が微笑むようになったのは、ゆうがきてから。ゆうがいたからこそ、私は少しずつ変わることができた。
だから、リリィとシエルを見捨てて、ゆうと2人きりで暮らすのも悪くない。…そう。悪くない……
「…1つだけ答えてほしい」
「なんですか?」
…今のでわかった。私はゆうと2人きりになるのが一番嬉しいって。ゆうと2人きりになりたいって。……でもね…違う。
「……あなたは…だれ?」
私が好きなのはユウであって、あなたじゃない。そして、私は2人を絶対に見捨てない。…だってリリィとシエルは……親友だから!
「…なにかしら魔法かけたみたいだけど、残念。もう大丈夫」
「…どうして? どうして帰ってきたのですか? あなたが好きなのはユウでしょう?」
たしかにユウのことは好きだ。さっきの話も魅力的だ。でも…違う。そうじゃない。
「…私はユウの…本当のユウの意思がききたい」
私がユウと2人きりで暮らしたいといってもユウが暮らしたいかはわからない。私がユウが好きだと言っても、ユウが好きなのかはわからない。
「ユウの体を返して」
「…はぁ…失敗ですかぁ。やっぱり難しいですね」
パチンッと、ユウが指をならした。
「…これは、王様直属の暗殺部隊?」
「正解です。私達をつけていたのはこの人達ですから」
どうして暗殺部隊が。あれは王様の命令じゃなきゃ動かないはず。
「……まさか、王様が敵になった?」
「正解♪」
なんで? どうして? 王様は勇者の事をよく思ってないはず。それなのになぜ、
「あ、勇者の件は私は関与してないですよ。王様が勇者サイドに入った理由は自分達で考えなさい。私はもう帰ります」
「…っ!? まって!」
「待ちません。それとあなたの私に関する記憶は消します」
記憶を消す…! そんなことは、
「…っまた、体が」
「ふふ…それでは消させてもらいますよ。…"対象の記憶を一部消去"」
ユウが手を私の頭の上にのせる。
「…う…ぁ……」
「あなたには新しい記憶をいれます。暗殺部隊との戦闘で無惨にも敗れ、怯えているユウをさらわれてしまった、という記憶を」
…駄目。こんなところで…まけちゃ…だ…め……
「…敗れたのですから、それらしい演出もしておかないとですね」
そうユウが言った瞬間私の体に無数の切り傷が生まれ、大量の血が吹き出す。
ドサッ、と後ろに倒れ、意識が遠退いていく。
…あぁ…私…ここで死んじゃうのかな……
「ふふ…じょう…すよ? あな…ちゃんと……されますから」
もう…ユウが…あの子が…なんて言ってるのかも聞こえない
「…た…あい…しょう」
私の意識はそこで途切れた。
だるい。すごくだるい。何かすごく大事な夢を見ていたような気がする。でも、何だったのか全然思い出せない。
もしかしたら、そこまで大事じゃないのかもしれない。
今日は何をしようか。やっぱり依頼だろうか。最近高ランクの依頼をやっていないから腕がなまらないように今日は高ランクの依頼をやろうか。
…あれ? でも、どうして私は高ランクの依頼をやっていないんだろう。
リリィはSランクでシエルはAランク、それなのに…どうして?
…そうだ。新しく1人加わった。
とても可愛くて、暖かくて、一緒にいると安心する。そんな天使のような子が。
…名前は……たしか…………
「………ユウ」
目が覚めた。ここは…私の部屋?
「リュミナ!」
「…ぁ……リリィ」
「良かったわ。本当に」
すぐ横に泣いているリリィとシエルがいた。どうして、泣いてるんだろう。…ううん。知ってる。私のせいだ。
「…ごめん」
私の…せいだ。私が弱いから……だから…
……ユウがさらわれてしまった
「…ユウがさらわれた」
「…わかってる。あとは任せなさい、ね?」
リリィの手が私の頭を撫でる。いつものリリィは変な事をしたりちょっとふざけているけれど、こう言うときのリリィはすごく頼りになる。…あの時だって……
「お願い。リリィ。ユウを助けて」
「…任せなさい。絶対に助けるから」
入り口前で油断するなと自分で言ったのに。
油断した。
リュミナはAランクだ。だから、大丈夫だと思った。…思ってしまった。
そもそもリュミナは魔法使いであって遠距離戦は得意だが、接近戦は苦手だ。遠距離戦ならば、リュミナはそこらには負けるとは思わない。
だが、王都のなかで遠距離戦なんて出来るだろうか。…いや、できない。できるはずがない。一歩でも間違えれば一般市民に当たってしまうのに。
これはリュミナが悪い訳じゃない。悪いのは私だ。私のミスだ。
「くそっ! …あの…クソ勇者!」
家に帰っているリュミナとユウが襲われた。しかも…城の暗殺部隊を使って…! 暗殺部隊を動かせるのは王様の命令のみのはず。だけど、リュミナは言った。暗殺部隊と。
だけど、あの王様がクソ勇者につくとは思えない。たぶん、何かしらの魔法か魔道具を使って無理やり従えさせている可能性がある。
それに、
『…ユウの様子がおかしい。怯えてた。推測になるけど、人が怖いんだと思う』
リュミナが言っていたユウが人を怖がっているということが本当なら、ユウは……人相手には本来の力を出せないのではないか。
でも、どうすればいい…!? 王様が勇者についたなら私を城に入れるわけがない。かといって、勝手に入れば不法侵入扱いで犯罪者となる。
『回復阻害の魔法なんて聞いたことないわよ。悪いけど、私はここでリュミナを見てるわ。リリィ任せたわよ。…たとえどんな結果になっても、私ははあなたについていくから』
『お願い。ユウを助けて。私ならなんでもするから。だから…お願い』
ふと、2人の言葉を思いだす。
…本当にいいの? どんな理由であれ、王様が敵に回っているとしたら、私達の指名手配は確実。
でも…でも……もしユウを見捨てたら? そうしたら、いつもどおりの日常が戻ってくるんじゃないの?
「…っわったし…はぁ!」
何を考えてる! なぜ考えた! 約束…したのに!!
『…私は…みなさんが強いことは知ってます。いろんな人が言ってるのを聞きましたから。でも…それでも……私といると迷惑かけてしまいます』
『こほん…とにかく、10歳でも、14歳でも子供は子供よ! だから迷惑なんてたくさんかければいい! 全部、ぶっとばしてあげるから』
…あのときのあの言葉が一字一句よみがえる。
私は約束した。迷惑なんてたくさんかけろ。そのたびに全部ぶっとばしてあげるから…って!
この約束を果たすのは…今でしょうが!!!
ユウは絶対に助ける! たとえ全てを敵に回したとしても! ユウを助ける!
「待ってなさい…! ユウ! 絶対に助けてあげるから」
目標は、王都の王がいる城。
☆ ★ ☆ ★
時は少し前に遡る。
ユウと2人きり。すごくうれしい。ユウはとてもいいこ。だからついつい甘くなる。
ユウと出会ってから私は少し変わったと思う。それはよく笑うようになった。微笑み、みたいな感じだけど。シエルとリリィに会っても全然変わらなかったのに、どうしてユウと会ったらこんなにも変わったんだろう?
やっぱり、ユウは他の人とは違うからだろうか。ステータスのことはもちろんだけど、それよりも、ユウの存在が他の人とは何か違うような気がする。
でも、別に悪い意味じゃない。良い意味で存在が違う。
ユウとこれからも一緒にいたい。だけど、ユウはどう思っているんだろうか。一緒にいたいって思ってくれているからだろうか。
「…ん。リュミナ?」
「よしよし」
「…えへへ」
かわいい。すごくかわいい。本当に天使みたい。ずっと撫でていたい。甘やかしていたい。堕落させてあげたい。…私、
……私なしでは生きていけない体にしたい。
…………? 私は今、なんでそんなことを思ったのだろう。よくわからない。私はただユウとこれからも一緒に入られればそれでいい。もちろんリリィもシエルも一緒だとなお嬉しい。
シエルとリリィはこんな私を受け入れてくれた大切な親友だ。絶対に大切にしたい。
今もユウは私に頭を撫でられている。とてもかわいい。
「…あ、リュミナってどんな本をよむの?」
「魔法が色々と書かれている本。魔道書と言う」
ふと気づいたようにユウが聞いてきたので、答える。
「魔道書!? 見る! 魔道書見る!」
「うん。見せてあげる」
子供のように目をキラキラさせて言ってくるユウにおもわずほっこりする。
やっぱりユウはかわいいし、すごい。これもユウの力なのかな。
「いいこいいこ……ん?」
「……ん~! …リュミナ?」
何かいる。5人? 私達の後をつけてる。…ユウが狙いかな。…でも、大通りなら手を出しては来ないはず。とりあえず、リリィ達に連絡。
…………あれ? 繋がらない。どうして。もう一回。…………駄目だ。やっぱり繋がらない。何かしらの遮断系の魔法? でも、魔力は感じないから、違う。じゃあ、どうして。
「ユウ。リリィ達のところに行く。ついてきて」
「え…どうして」
ユウの手を掴み、歩き出す。理由は後で話せば良い。とりあえずは2人と合流しないと。
リリィ達は買い物だから、たぶん市場。そこなら色んな物置いてある。
「…リュミナ……手、いたい」
「ご、ごめん」
リリィと合流するのに思考をとられ、無意識にユウの手を強くつかんでしまったみたいだ。
「…ユウ? 大丈夫? ちょっとふらついてる」
目をつむりふらふらとしてるユウを呼ぶ。だけど、返事がこない。どうしたんだろう。どこか具合でも悪いのかな。
「ユウ?」
「……ねぇ、リュミナ。…………こっち行こ?」
「ユウ? 待って。そっちはダメ」
動かない。ユウの手が私の手をつかんで離さない。動かない。動かない。
……体が、うごかせない。
「…大丈夫ですよリュミナさん」
ユウは安心させるように言う。ユウ? ゆう? ゆ…う…?
……今のユウは、本当にユウなの?
ユウはさっきなんて私に話しかけた? …だめ。思い出せない。記憶力は良い方なのに。
「リュミナさん。大丈夫ですか?」
「…ゆ…う?」
なんだろう。ゆうに話しかけられるとぽわぽわする。疲れてるのかな?
「一緒にここから…リリィさんとシエルさんを置いて逃げませんか?」
「にげ…る…?」
なにを…いってるんだろう…ゆう…は。
「だって、私達が狙われているのも元はと言えばリリィさんが原因んですよ?」
「リリィさんが勇者様の言葉に従わないからですよ?」
「だから…ね? 逃げましょう?」
「2人きりですよ?」
2人きり。2人きり。頭の中で何度もその言葉が響き渡る。そう…だね。私が微笑むようになったのは、ゆうがきてから。ゆうがいたからこそ、私は少しずつ変わることができた。
だから、リリィとシエルを見捨てて、ゆうと2人きりで暮らすのも悪くない。…そう。悪くない……
「…1つだけ答えてほしい」
「なんですか?」
…今のでわかった。私はゆうと2人きりになるのが一番嬉しいって。ゆうと2人きりになりたいって。……でもね…違う。
「……あなたは…だれ?」
私が好きなのはユウであって、あなたじゃない。そして、私は2人を絶対に見捨てない。…だってリリィとシエルは……親友だから!
「…なにかしら魔法かけたみたいだけど、残念。もう大丈夫」
「…どうして? どうして帰ってきたのですか? あなたが好きなのはユウでしょう?」
たしかにユウのことは好きだ。さっきの話も魅力的だ。でも…違う。そうじゃない。
「…私はユウの…本当のユウの意思がききたい」
私がユウと2人きりで暮らしたいといってもユウが暮らしたいかはわからない。私がユウが好きだと言っても、ユウが好きなのかはわからない。
「ユウの体を返して」
「…はぁ…失敗ですかぁ。やっぱり難しいですね」
パチンッと、ユウが指をならした。
「…これは、王様直属の暗殺部隊?」
「正解です。私達をつけていたのはこの人達ですから」
どうして暗殺部隊が。あれは王様の命令じゃなきゃ動かないはず。
「……まさか、王様が敵になった?」
「正解♪」
なんで? どうして? 王様は勇者の事をよく思ってないはず。それなのになぜ、
「あ、勇者の件は私は関与してないですよ。王様が勇者サイドに入った理由は自分達で考えなさい。私はもう帰ります」
「…っ!? まって!」
「待ちません。それとあなたの私に関する記憶は消します」
記憶を消す…! そんなことは、
「…っまた、体が」
「ふふ…それでは消させてもらいますよ。…"対象の記憶を一部消去"」
ユウが手を私の頭の上にのせる。
「…う…ぁ……」
「あなたには新しい記憶をいれます。暗殺部隊との戦闘で無惨にも敗れ、怯えているユウをさらわれてしまった、という記憶を」
…駄目。こんなところで…まけちゃ…だ…め……
「…敗れたのですから、それらしい演出もしておかないとですね」
そうユウが言った瞬間私の体に無数の切り傷が生まれ、大量の血が吹き出す。
ドサッ、と後ろに倒れ、意識が遠退いていく。
…あぁ…私…ここで死んじゃうのかな……
「ふふ…じょう…すよ? あな…ちゃんと……されますから」
もう…ユウが…あの子が…なんて言ってるのかも聞こえない
「…た…あい…しょう」
私の意識はそこで途切れた。
だるい。すごくだるい。何かすごく大事な夢を見ていたような気がする。でも、何だったのか全然思い出せない。
もしかしたら、そこまで大事じゃないのかもしれない。
今日は何をしようか。やっぱり依頼だろうか。最近高ランクの依頼をやっていないから腕がなまらないように今日は高ランクの依頼をやろうか。
…あれ? でも、どうして私は高ランクの依頼をやっていないんだろう。
リリィはSランクでシエルはAランク、それなのに…どうして?
…そうだ。新しく1人加わった。
とても可愛くて、暖かくて、一緒にいると安心する。そんな天使のような子が。
…名前は……たしか…………
「………ユウ」
目が覚めた。ここは…私の部屋?
「リュミナ!」
「…ぁ……リリィ」
「良かったわ。本当に」
すぐ横に泣いているリリィとシエルがいた。どうして、泣いてるんだろう。…ううん。知ってる。私のせいだ。
「…ごめん」
私の…せいだ。私が弱いから……だから…
……ユウがさらわれてしまった
「…ユウがさらわれた」
「…わかってる。あとは任せなさい、ね?」
リリィの手が私の頭を撫でる。いつものリリィは変な事をしたりちょっとふざけているけれど、こう言うときのリリィはすごく頼りになる。…あの時だって……
「お願い。リリィ。ユウを助けて」
「…任せなさい。絶対に助けるから」
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