ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第35話ー危険人物。

 ギルドカード~サタイル支部発行~


 ランク:D
 名前:ユウ
 性別:女
 年齢:14
 種族:人間
 達成依頼 E:10 D:5


 ユウの達成数は半分の5個までやってきた。このスピードならあと、2、3日ってところかしら。はぁ、討伐と採取半々でやらなくちゃいけないのは面倒よね。なんでもいいから依頼10個に直してくれないかしら。


 「…もう折り返し…!」


 ユウがギルドカードを見て、キラキラと目を輝かせながら、感動している。


 正直、私達はただついていってるだけで、ほとんど何もやってないし、本当にユウはすごいと思う。普通Dランクの依頼なんてよくて2日1回のペースなのに。…まぁ、私達が連れ出してるっていうのもあるけれど。


 「ユウ。それじゃ家に帰りましょうか」


 「うん!」


 手を差し伸べ、ユウは笑顔でそれを握ってくれる。…かわいい。


 「ああ、もう! ユウは本当にかわ「リリィ!」…ん?」


 …誰かしら。人のせっかくの幸せ空間をぶち壊しに来てくれた無粋な人は。……って、うわぁ


 「…なんの用かしら。リュウト」


 やってきた人物に対し最大限警戒心をあげると、ユウを私の後ろに隠す。


 「なぜ、来ないんだ。お前は俺の女だろう」


 …何を言ってるのかしらこいつは。本当にこれだから……今回の勇者は。


 「私の仕事はあの1週間で終わったわ。…それに、なぜあなたが私のところに来ているの? あの人との約束は?」


 「…っそ、それは……!」


 彼はリュウト。今回召喚されたリュウト・イシザワ。少し前に私が訓練をつけていた勇者だ。会うたびに、俺の女になれとか、クソふざけたことを抜かす最低な勇者。しまいには、スキンシップとか言って、セクハラじみた行為をしてくる。


 さすがにガン切れし、王様に言って勇者をぼこぼこにする約束をとりつかせた。あくまで、非公式にだけど。


 そして訓練最終日、勇者をぼこぼこにした。その時に、王様も様子見ということでやってきたので、ある2つの約束をさせた。


 二度と私達には近づかないこと。そして、話しかけないこと。


 それなのに、こいつと来たら、王様との約束を反故して話しかけてきたのだ。


 「…今日来たことはなかったことにしてあげる。だから……帰りなさい」


 「…っくっそ……! ……その子は?」


 せっかくいい感じで終わるかと思ったけど、勇者はユウの存在に気づいてしまった。


 「なんでもいいでしょう? …それとも、報告…されたいのかしら?」


 「……っ帰る」


 そして、勇者はギルドから出ていった。…本当勇者とは思えない性格ね。


 「えっと…今の人は……」


 「家に…帰ったら、ね?」


 こくこくとユウは頷く。


 ユウの方がよっぽど勇者に向いてるわよ。本当に。










 2階建ての普通の民家よりは少し広めの家。そこに私達は住んでいる。元々私はソロ活動だったから、宿屋過ごしだったのだけれど、シエルとリュミナが仲間になってから、今までほとんど使い道のなかったお金で家を購入したのだ。


 なぜ、こんな広い家にしたのかというとこれといって意味はない。


 「ただいまー」


 「おかえりなさい」


 「リリィは一緒に帰ったんだよね!?」


 こんなやり取りをしていると、奥からシエルとリュミナがやってきた。


 「2人ともおかえりなさい」


 「おかえり」


 2人にただいまと返し中にあがる。


 「あ、2人は今から時間ある?」


 「ええ、大丈夫よ」


 「ばっちり」


 「それじゃリビングに行きましょう」


 全員でリビングに向かう。内容は、さっきの勇者について。ユウが知りたがってたから教えるのと同時に今後何かしら仕掛けてくる可能性がある。かもしれない件だ。


 「とりあえず、依頼は無事に成功したわ。」


 リビングのソファーにそれぞれ座り依頼の報告をする。


 「おめぜとう。大丈夫? リリィになにもされなかった?」


 「がんばった」


 待ちなさいシエル。なにその質問。私はなにもしてないわよ。


 「大丈夫です!」


 「…まったく、私がそう何度も変なことするわけないでしょう」


 「そう? それならいいけれど」


 私とユウの言葉に納得するシエル。…だがそこで、まさかのユウが爆弾発言を落とした


 「リリィじゃなくて…私が、やっちゃいました……」


 「…ちょっとユウ! 何いってちゃってるのぉ!」


 「…へぇ……それはぜひ詳しく聞きたいわね」


 「尋問尋問」


 シエルは剣をリュミナは本を手に持ち立ち上がる。


 「落ち着きなさい! 私からやったって訳じゃないから良いでしょ!」


 「…それも…そうね」


 「複雑」


 …ふぅ、なんとか2人を止めることができた。…ていうか、早く本題に入らないと。


 「そんなことより大事なおしらせがあるわ! 勇者についてよ!」


 「「「勇者?」」」


 「そう。さっきギルドで勇者が接触してきたわ」


 私が言うと、シエルとリュミナが驚きに目を見開く。


 「内容は、やっぱり勧誘ね。突っぱねたけど」


 「そ、そう…でも、それだけじゃないんでしょう?」


 「そう。まず1つ。もしかしたらまた勇者が接触してくるかもしれない。2人にもね。だから、なるべく2人行動しなさい」


 勇者が私に接触して来たということは、シエルとリュミナにも接触して来る可能性があるということ。


 「2つめ。ユウの存在が勇者にバレたことよ」


 「それは…めんどうね」


 「絶対に守る」


 ユウの容姿は天使みたいにかわいい。つまり勇者はユウにも接触して、何かしらふざけたことを抜かす可能性があり、最悪誘拐されるおそれがある。


 「…ん」


 「ユウの場合、実力は今の勇者よりは上だと思う。時魔法も使えるからね。だから、大丈夫だとは思うけど、念には念をいれましょう」


 私はアイテムボックスから1つの指輪を取り出した。


 「これは一方通行だけど、私達の持っている、通信用魔道具に声を送ることができるの。ユウはこれを身に付けておいて。魔力を流せば使えるから」


 「うん」


 ユウが指輪を左手につけるのを確認すると最後の話をする。


 「勇者は王様との約束を破ってまで接触してきたわ。今後、何かしら仕掛けてくる可能性もある。ゆえに、勇者もしくは、それに関係する者が近づいてきたら、武器を構えなさい。何があってもすぐに対応できるように」


 「そうね。わかったわ」


 「うん」


 「はい! それじゃ私は街の中でバスター「「「それはだめ」」」……はい」


 ユウがバスターソード持って歩いていたら、余計目立つでしょ。まったく……


 「良い? 絶対に1人行動はダメよ。何かあったらすぐみんなに知らせること? わかった?」


 「ええ。…それじゃ、夜ご飯の準備でもしてくるわ」


 「わかった。本読んでくる」


 「…ばすたー」


 ……ユウ、あなたはどんだけバスターソード持ちたいのよ。

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