ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第28話ー最初の一歩

 「わぁ! すごい! これ全部薬草なんですか!?」


 「ふふ、すごいでしょ」


 やってきたのは森の奥深くにちょっと広めの開けた場所。ここは前に私が見つけた、薬草の群生地なのよね。


 「これ、どのくらいとっていいんですか!?」


 目をキラキラさせながら聞いてくるユウに、やっぱり子供ね、と思い、少し笑ってしまう。


 「そうね。半分くらいは大丈夫よ。全部採っちゃうと生えてこなくなるから、全部はダメよ?」


 「はい! では行ってきます!」


 「ちょっと待ちなさい」


 走っていこうとするユウを引き留める。


 「…?」


 可愛らしく首をかしげるユウ。


 「私達に対する敬語をやめなければダメよ」


 「え? でも、みなさんは先輩ですし…」


 確かにユウから見たら私達は先輩だけど、それに私の方が身長高いし。


 「それでもよ。私達はパーティーなんだから。わかった?」


 私のこの言葉にユウはシエルとリュミナを見る。


 「敬語だけじゃなくて、呼び名もシエルと呼んでね」


 「敬語いらない」


 シエルとリュミナはそう言った。ユウは、恥ずかしそうに下を向き、もじもじする。


 「そ、それじゃ、その…よろしく、リリィ、シエル、リュミナ」


 これでまた一歩仲良くなれたかしら?










 「いやぁ…まさか、本当に半分採るとは」


 「きれいに割れてるわよ」


 「すごいすごい」


 「だ、だめだった!?」


 ユウが薬草を集め出してから約1時間がたった。普通こういう群生地で採るのは、多くて半分ほどとされている。そしてとりかたが普通はバラバラだ。だが、ユウの取り方がきれいに右半分だけ採っていた。


 「いや、そもそもここは私達しか知らないと思うから大丈夫でしょ」


 「本当に? 本当に大丈夫?」


 敬語を使うのを禁止にしてから、なんだかユウはさらに親しみやすくなった気がする。やっぱり敬語は距離感を感じてしまうものね。今のユウの方が好きだわ。


 「大丈夫大丈夫」


 「はい。それじゃ、依頼も終わったことだし、お昼でも食べましょう」


 いまだに困惑してるユウを無視し、シエルは手をパンパンと叩く。


 「そうだね…ん?」


 リュミナが頷いていると、一つの反応があった。いまだに姿は見えないが、まぁ、魔物だろう。


 「…それじゃ、お昼食べる前にやりますか」


 「私準備するわね」


 「手伝う」


 「…?」


 シエルは、身に付けていたポーチから、普通はポーチに入らないほどの大きなお弁当を取り出した。


 「え? …ん!?」


 ポーチとお弁当を交互に見ながら驚きの声をあげる。


 「どうかした? …って、ああ、もしかしてこの"魔法の鞄"かしら?」


 「まほう…のかばん?」


 ユウは、初めてその言葉を聞いたらしく首をかしげた。


 「これはね"魔法の鞄"シリーズのポーチ型でね。中が異空間になっているの。だから、ポーチよりも大きなものをしまえるのよ。容量は、鞄の大きさによるけれど」


 「ほぇ~すごい」


 そういえば、ユウは冒険者になってたから1ヶ月もたってないんだっけ。そりゃ、魔法の鞄の存在も知らないか。…そして、


 「グルゥゥゥゥ…!」


 「来たわね」


 やってきたのはウルフ。素早い移動で獲物に噛みつき、爪でひっかく攻撃をする。冒険者ランクでいえばDランクなんだけど、難易度はパーティー向けだ。冒険者の方からもパーティーで行くように呼び掛けてはいるが、ソロでいってしまバカもいる。


 「ま、魔物!?」


 「ユウはさがってなさい。まだ、早いから」


 ユウはもうDランクだけど、まだ戦闘経験はないはず。だから今回は私が倒すべき。…なんだけど、


 「わ、私がやります…!」


 「……へ?」


 ユウが前に出てくる。その手にミスリルナイフを持って。


 「あら、ユウちゃんいけるの?」


 「いやいやむりで「いけます!」……えぇ!?」


 シエルの言葉を否定しようとしたらユウが私の言葉を遮って声をあげる。


 「リリィ。せっかくユウが頑張ろうとしてるんだから任せてあげなさい」


 「それでも、いきなりウルフは難易度が高いでしょ!」


 「リリィ。ユウが力を隠しているのは教えたはず」


 聞いたわよ。聞いたけど……本当に大丈夫なのかしら


 「…ユウ」


 「大丈夫です…私は…私は……僕は、もう大切な人を失いたくないから……! だから、戦います。戦わせてください」


 …僕? ユウは昔から僕っこだったのかしら。まぁ、今は関係ないか。


 「…わかったわ」


 「ありがとう」


 …はぁ、仕方ない。ユウがどのくらい強いのかは知らないけど、お手並み拝見といこうかしらね


 「…ふぅ」


 現状私達がユウの力を知っているのは2つ。1つは、ユウ自身の力が身体能力強化レベル3程度あること。そして、スキルや魔法の、適正属性が1つもないこと。


 さて、どんな戦い方を見せてくれるのか。


 「…イメージ……魔法を使うにはイメージが大事……前の僕は言葉を言うだけで、何のイメージもしなかった……イメージ」


 ユウが私達には聞こえないくらいの声でぶつぶつと言う。魔法の詠唱ではない。なら、何を言っているのかしら。


 「…これは……まさか…!?」


 リュミナが驚きの声をあげる。リュミナは魔法使いだ。そして、リュミナほどの力があれば、相手の魔力の流れを見ることができる。そのリュミナが驚くということは、


 「まさか……魔法……!?」


 「…止まれ…止まれ…止まれ……時よ…止まれ…!」


 ユウがまたぶつぶつと呟く。すると、ユウの足元に魔法陣が現れた。


 やはり、これは魔法!? でも、どうして!?


 私達がユウの魔法に驚いていると、ユウの足元の魔法陣が薄い灰色に輝く。


 そして……音が止まった。


 「……は?」


 「…これ……は」


 「止まってる…」


 ユウの使った魔法に驚き固まっていると、ユウはウルフの方に歩きだす。


 「…ごめんなさい……でも、これが……最初の一歩」


 そう呟くと、手に持ったミスリルナイフでウルフの首を切り落とした。

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