ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第23話ー戦闘開始

 「よいしょ。よいしょ」


 時間にして朝の6時。まだ、外はすごく寒い。はぁ、と白い息を吐く。なんか、これみると極寒の雪山にいるみたい。……雪山かぁ。この世界に雪とかはあるのかな。


 「おーい! それはこっちだー」


 「はい!」


 手に持っていた、いくつかのポーションが入ったカゴを僕を呼んでいたおじさんの所に持っていく。


 「ありがとな」


 「いえいえ」


 おじさんにぺこりとお辞儀をし、来た道を戻る。


 今僕がやっているのは物資の運搬。商業ギルドで仕分けられたポーションや装備品を、街の入り口近くの倉庫に持っていく。以前、商業ギルドの依頼を受けたと思うけど、その時に各お店から持っていった物資がこれのためだった。


 最初から倉庫に持ってけばいいじゃんっておもったんだけど、そのまま倉庫に持っていくと、そこで仕分けるのに商業ギルドの人が何人かいなくなって人手が足らなくなってしまうから。商業ギルドというのは、毎日がとても忙しい。なので、なるべく人を分けたくないというのが理由だった。依頼を出したのも、冒険者なら一度に持ってきてくれるかもしれないという理由だったかららしい。


 それで、どうしてこんな朝早くからやっているのかと言うと、今日は、王都から援軍が来る日だ。なので、街の入り口は兵士の人や冒険者の人いっぱいになるので、まだ来てないうちに必要な物を移動させている。というか、入り口のみならず、街全体が兵士だらけになることが予想されている。そりゃ10万人くるんだもんね。


 今日はみんなで準備の日で、明日討伐に赴くらしい。民間人は、当日絶対に家から出ないようにと警告されている。もし何かあった場合は冒険者ギルドに来るように、とも。


 そうそう。10万人も来てみんなどこで寝るのかなぁと思って、商業ギルドの職員さんに聞いてみたんだけど、こういう時ように場所は確保されていて、専用の建物がいくつかおいてあるみたい。雑魚寝になるけど。


 「お、帰ってきたな。それじゃこっちも頼む」


 「はい」


 商業ギルドに戻った僕は、すぐに職員に呼び掛けられ荷物を受けとる。今度は装備品だ。


 ……っ!? こ、これは……僕が欲しかったあの流れ星模様の髪留め…!?


 ほ、欲しい…! けど、だめだ。これは他の人が使うんだから。我慢我慢。


 「ん? どうかしたか?」


 「いえ! なんでもないです! それでは行ってきます!」


 ササッとその場を離れる。そういえば雑貨屋とか、魔道具専門店とか行ったもんね。こういうのもあるか。


 再度大通りを歩く。たまに僕と同じ事をしている冒険者に出会うけど、ちょっと不安そうな顔をしている。それもそうだよね。僕も不安だし。…明日は無事に終わるといいんだけど。










 時間は、すでに10時を回っている。僕は街の入り口近くに待機しているんだけど、言われていた援軍がいつまでたってもやってこない。その事について全員の冒険者、兵士が戸惑いを隠せない。


 「お、おい。どうなってんだ? もう10時だぞ」


 「知るかよ。俺だって聞きたいぞ」


 一部の兵士とD、Eランクの冒険者が不安がっている。A、B、Cランクの冒険者は、ある程度修羅場を潜っているからか、不安は不安なんだろうけど、目に見えて不安がっているようには見えない。


 むしろ、どうするか、何をやるか話し合っている。すると、街の方から、ギルドマスターのザイックさんが走ってやってきた。


 「聞け! さっきゴブリンを見張っていたやつから情報が入った! 現在、約1万のゴブリンがこちらに向かって来ている!」


 ザイックさんは息を切らしながら大声をあげる。


 「いいか! 今から指示を出す! まず、A、B、ランクの冒険者と兵士1500人ほど、ゴブリンの撃退をしてもらう! 相手は通常のゴブリンだが、気は抜くな! ここにいないやつは、呼びにいってすぐに出発しろ! それと、残りの兵士とCランク冒険者で拠点の建設!
 D、Eは指定の場所で待機だ!」


 ザイックさんの言葉が終わると兵士とCランク以上の冒険者は一斉に動き出す。ここはやっぱり経験の違いだろうか。D、Eの冒険者は回りをきょろきょろしながら驚いていた。


 といっても、僕とその回りにいる人は指定位置がここなのでこれといって移動はしないんだけど。


 たった数分で全員揃ったのか、代表者が集まり、軽く話している。それが終わるといくつかの班に別れ、それぞれ森に向かって走り出した。


 それから30分くらいたったあと、怪我をしている冒険者や、装備が壊れた兵士やらがこっちにポツポツと帰ってくる。重傷なのは、回復魔法が使える人たちのところで、軽傷や装備が壊れた人はこっちでポーションとその人にあった装備を渡す。


 その後回復したらまた森に入っていく。


 さらに30分はたった。ゴブリンとの戦闘は苦しい状態だった。帰ってきた人達からによると、途中からゴブリンアーチャー、弓を使うゴブリンが1万体ほど追加できたらしい。そしてそのゴブリンアーチャーは本来はあり得ない戦い方をしてくる。ゴブリンの数十メートル後ろで、斜め上に向けて矢を放ち、冒険者や兵士にだけあたるようにしてくるのだという。最初に聞いたときそれって普通じゃない? と、思ったけど、ゴブリンには、それをやるほどの知能がそもそもないのだという。


 「すいみません! Cランク冒険者の方々ギルマスからの連絡です!」


 街からやってきたのは1人の職員だった。


 「Cランク冒険者は戦闘に参加してくださいとのこと! 兵士のみなさんはそのまま拠点を完成させてください!」


 「おう! それはいいけどよ。援軍はどうなってるんだ?」


 「申し訳ございません。それは後からギルマスがやって来ますのでギルマスが話すと思います!」


 そういうと「失礼します」と、頭を下げ街に戻る職員。


 「…ちっ逃げやがったなあの職員」


 「一体どうなってのかしら?」


 さっきの職員の行動に不満を出す人達。だけど、すぐに切り替えて、戦闘する準備をする。


 そして、なん組かの班に分けて森の中に入っていく。


 「…あ、ミルフィリア…さん?」


 森に入っていく冒険者を見ていたら、視界の端にミルフィリアさんの姿を見つけた。普通の人なら気づかないほど遠いけど僕の目はものすごく良いので見つけることができた。


 ミルフィリアさんはいつもの格好で立っていたけど、歩きだして森の中に入っていく。


 「…ごめんなさい。商業ギルドに用があるのでここを離れても良いですか?」


 「ん? ああ、いいぞ。こっちは任せろ」


 隣にいた男の人に聞き、無事に了承を得る。そうして、僕は小走りで街の中に入る。


 少し進んだところで、右に曲がり建物と建物の間に入る。そして、軽めにジャンプし、屋根の上にのる。


 「…こ、こわい」


 ぶるぶると若干足が震えているが、なんとか立ち上がりそのまま屋根を走り、たまに屋根から屋根へと飛び移り、ミルフィリアさんがいた方向の街の壁までやってくる。…飛び移ったあと、怖くて両手両足をついてしまったのは内緒だ。


 無駄に高い壁を見上げ、覚悟を決めてジャンプしのる。


 そして、そのまま外に飛び降り…とび……おり……


 「……め、目をつぶればなんとか」


 ぎゅっと目をつぶり大丈夫大丈夫と心の中で暗示をかけ、飛び降りた。


 「…よかった。いきてる」


 そしてミルフィリアさんがいった方向に走り出すのであった。

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