ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第19話ー楽々亭。

 解放された僕は宿屋楽々亭に来ていた。あとはここでお仕事して終わりだ。


 扉を開けるとカランカランと音がなる。扉の先のすぐに受付になっていて、そこには1人の女性がいた。


 「いらっしゃい。これはまたかわいい子がきたね~」


 入ってきた僕に気づくと、女性は気さくに話しかけてくる。かわいいと言われるのは何回もあったけど、やっぱりちょっと恥ずかしい。


 「こんにちは」と、挨拶をして、女性の所に向かう。そしてポケットに入れていた依頼書を手につかんだ。


 「冒険者のユウです。今日はこれを受けて来ました」


 依頼書を取り出し女性に見せる。


 「ああ! 嬢ちゃんがかい! これはまた今日も楽しくできそうだねぇ!」


 女性は依頼書を受取、楽しそうに声をあげた。


 「よろしくおねがいします」


 「こちらこそさね! …おっと、自己紹介がまだだったね。あたしはビクマム。皆からマムと呼ばれているよ。ユウちゃんもあたしの事をマムと呼んでいいからね」


 女性…マムさんは元気よく自己紹介をした。


 「とりあえずこっちにきておくれ。そこからはいれるから」


 「はい!」


 マムさんに言われた通り移動をする。すると、マムさんは手招きして裏に消えていった。


 こっち来いってことだよね。


 おそるおそる裏に入っていく。中は意外に広い。椅子にテーブルにキッチンに、たぶん住居スペースだと思う。


 マムさんはクローゼットを開け、なにかを取り出した。


 「ユウちゃんはこのエプロンを着て接客してもらうよ」


 取り出したのはエプロン。確かに飲食店では、エプロンは必須。だから、着ること事態はわかる。すごくわかる。…でも、でもだよ?


 ……ピンクのエプロンはないんじゃないかなぁ…なんて。


 「…は……はい」


 本当は着たくないけど、これもお仕事お仕事。それにきっと他の人も着てるんだろうし大丈夫大丈夫。…マムさんは着てないけど。


 「服は貸し出し用の制服あるんだが、今の服と制服どっちがいい?」


 せい…ふく……?


 「ちなみにその制服というのは……」


 「これさね」


 再度クローゼットから取り出したのは、おぉぅ……それメイド服って言うんだよマムさん。しかもメイド服って白じゃん。なんでそれピンク基調にしてるの……聞いたことないよ。そんなメイド服。


 「…このままでいいです」


 「そうかね? ユウちゃんなら似合うと思うけどね」


 絶対に着ません。


 「それじゃ少し待ってな。娘と一緒に働いてもらうから、仕事内容は娘に教えてもらうことにするからね」


 マムさんはそう言うとこの場から離れていった。そして数分後。代わりにやってきたのは僕と同じくらいの背丈のちいさな女の子だった。


 「はじめまして! 私はイオナって言います! 今日はよろしくね! ユウ…さん!」


 「ユウです。よろしくおねがいします。あと、呼び捨てで大丈夫です」


 ぺこりとお辞儀をする。たぶん年下だとは思うけど、別に呼び捨てでも構わないし。むしろ呼び捨ての方が気楽で良い。


 「あ、ご、ごめんね。それじゃあ…ユウちゃん! 今日は頑張ろうね! わからないことがあったら何でも聞いてね! あと、私の事も呼び捨てでいいからね!」


 手をつかみぶんぶんとふってくる。い、イオナって中々に元気な子だね。さすがマムさんの娘さん。


 「それじゃあいこう!」


 「うん」


 イオナに手を引かれ食堂の方にやってくる。食堂には、色々な武器を持った冒険者とか、普通の一般の人とかが、チラホラいる。


 「おお来たね。それじゃここは任せたよ! あたしは受付にいるからね!」


 「はーい! お母さんありがとー!」


 お客さん…じゃなくて、お客様? かな。ともかく、イオナとバトンチェンジした。


 「ユウちゃん! 私が手本見せるから見ててね!」


 イオナの言葉にこくこくと頷く。「おとーさーん!」と、声をあげながら、食堂の裏に入っていった。そして、すぐにイオナは手にお盆を持ってやってきた。


 「ユウちゃん。ここ番号が書かれた板があるでしょ? これを同じ番号が書かれた場所に持っていくの」


 お盆を持ってわざわざこっち来て説明してくれる。そしたら、すぐにテーブルの方に持っていった。


 「お待たせしましたー!」


 「おおう! いつもありがとな! イオナちゃん!」


 「いえいえ!」


 常連さんなんだろうか。料理を持ってきてくれたイオナにお礼を言い、しかも頭まで撫でている。


 ……うらやましい。……って、イオナがじゃないよ!? 僕もイオナの頭撫でたいなってことだからね!!?


 ……誰に言い訳してるんだろう。


 「料理はこんな感じ。お会計と食器洗いはお母さんがやってくれるから、私達の仕事は、注文とって、お父さんに伝えたり、厨房行って、料理運んだり、お客さんが帰ったら、食器片付けてテーブル拭いたりかな」


 戻ってきたイオナに丁寧に説明される。あとは、どこに何があるかとか、これはここにおかれるとか、お客様が用があるときはこの呼び鈴をならすとか。


 「やるぞー! ユウちゃん!」


 「お、おー!」


 カランカランっと鈴の音が聞こえた。


 「あ、お客さんかな? ユウちゃん私のあとに続いて!」


 「はい!」


 受付と食堂には一枚の扉でしきられている。扉が開けばお客様。開かなかったら、お泊まりの人だ。どっちかな。


 ……ギィー。


 「いらっしゃいませ!」


 「い、いらっしゃませ…!」


 「お、おぉ…これはまためっちゃかわいい子がいるな」


 「…あ! お兄さん! ユウちゃんは今日依頼で来てくれたお手伝いだから、そういうのは禁止です!」


 スゥッと、やってきた男の人僕の頭を撫でようと手を伸ばしたら、イオナが止めに入ってくれた。


 「そうなのか。悪いな」


 「い、いえ…」


 男の人が申し訳なさそうに謝ってきた。良い人そうだ。頭を撫でられるのは嫌じゃないんだけど、恥ずかしいというかなんというか…正直助かった。イオナありがとう。


 「ささっ、お兄さんはこっちこっち! 今日はユウちゃんと2人だから、料理出来たらすぐに届けられるよ!」


 「それは楽しみだ! それじゃ今日もオススメを頼むよ」


 「はーい! ユウちゃんお父さんに伝えにいこう!」


 「はい!」


 お客様からの注文をとり、イオナのお父さん…名前はランドリーさん。ランドリーさんに伝え、料理が出来上がるまでの間、帰ったお客様のテーブルを片付けたり、やってきたお客様を案内したり、出来上がった料理の指定の場所に持ってったりと、中々に忙しい仕事だった。










 次の日。僕がここに来てから8日たった。というか、まだ8日か。もう1ヶ月はたったような気がする。


 今日も今日とてギルドに行く。昨日で2個こなしたから、あと2個だ。今日も出来れば2個。できなくても、明日で10個だ。ついに、ついにDランクになるときが目前まで迫ってきた!


 「…えへへ、楽しみだなぁ」


 昨日は終わったのが23時だったから、まだ達成報告はしてないけど、今日報告して8になる。


 今日は何を受けようか…などと、考えてギルドに入る。そして、いつもどおりボードに行こうとしたら、受付の前に大きなボードが置いてあった。


 緊急召集! Cランク以上の冒険者はギルド裏の訓練所までお越しください!


 ……緊急召集?

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