天才の天災

春夜

レンの宣言とクズタの改革

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「ふぅ〜、ヒヤヒヤしたねぇ...」
「ミネアもシズクも、マスターとクラスが離れなくて良かったですね。」
「...勉強頑張る...」
「クスッ。シズクは筆記が危うかったですからね。」
レン達は昨日テストが終わり部屋に籠っていた。
とはいえ、いつも通りすることが無いまま時刻は夕方になっていた。
リズとミネアとシズクは昨日のことを話しており、ココは夕食の用意をしている。
桜花は部屋の隅で愛用の槍を磨いていた。
ベッドの上に寝転がっていたレンが
珍しく体を起こして立ち上がった。
「ボス?」
「...??」
「どうかしましたか?マスター?」
「なんや、小便か?お前がベッドから起きるなんて珍しいこともあるもんやな!」
カッカッカッと笑っている桜花は放っておいて。
「ミネア、お前の故郷はどこにある?」
「ど、どうしたんだい?急に...
あたしの故郷はここから王国を超えた先にあるけど...」
「ますたー?」
「その国、俺が貰うわ。」

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目が覚めると小屋の中だった。
藁の隙間から真上に昇った太陽の日差しがチラチラと差し込んでくる。
横を見ると小さな女の子がゴリゴリと
薬草のようなものをすり潰していた。
「えっと...ルシャ、だったよね。」
「うん。」
「僕は楠田涼平。リョウヘイって呼んでね。」
「うん。」
「......」
「......」
か、会話が続かない...
どうしよう...今まで女子との交流なんて滅多になかったし、唯一女子と交流したのなんていじめられただけだし...
な、何を話せばいいんだろう...
確か、昨日僕はルシャとルイの家の前で倒れて...
介抱してくれたのかな?
「えっと...助けてくれてありがとう。」
「うん。」
「る、ルイはどこに?」
「外。」
か、簡潔的すぎて何もわからない...
そりゃ、前の世界の僕の部屋ぐらいの広さの家の中にいないんだから外なのはわかるんだけど...
「ルシャ!今回は当たりだ!
あいつら、いっぱい金を持ってたぞ!」
ルイが銀貨や銅貨が詰まった袋を手に駆け込んできた。
「お、お前も起きたのか。
ルシャに感謝しろよ?ルシャが居なきゃ、俺がお前のこと食ってたぞ。」
「あ、うん。僕の事を食っ...えええ!!!!」
「ルイ、今日はご飯あるの?」
「ああ。見てみろよ、こんなに沢山。
1週間はまともに食えそうだ。」
「ルイは何かバイトでもしてるの?
まだ小さいのに生活費を稼いでるなんて凄いね!」
「ばいと?ってなんだ?」
「...えーっと、見習いみたいな感じで
職に就くことかな?」
「お前、頭大丈夫か?スラムに職なんかあるわけないだろ?」
「え?でも、お金...」
「ああ、路地裏を通り掛かった奴らから小銭袋や荷物を盗んでくるんだよ。強いて言うなら、それが俺の職だ。」
「そ、それって泥棒じゃないか!
ダメだよ、すぐに返してこないと!」
「おい、触るな!これは俺の金だ!」
「違うよ!それは君が盗んだ人の物だよ!」
「やめて!」
小袋を掴もうとした腕をルシャに引っ張られる。
「やめてよ...やっとご飯食べれるのに...」
「っ!ご、ゴメン!泣かせるつもりは...」
「ったく、飯買ってくるから帰ってくるまでに許してもらえよな!」
そう言ってルイは外に出ていった。
「...っく...ぐすっ...」
「...ゴメン...君たちからご飯を取り上げるとかそういうつもりはなかったんだ...
えっと...ホントにゴメン!」
「......」
「...ちょっと、外見てくるね...」

外を歩いてこの街を見て回った。

良く考えればわかる事じゃないか!
ここはスラムだと言っていた。
前の世界では見たことは無いけど、
話に聞いた奴隷なんかも当たり前に流通している世界だ。貧民街があっても不思議じゃない。
この子達にとっては盗みが当たり前のことなんだ。
今までもしてきた、生きるための行動。
街を歩いて色んな人たちからジロジロ見られた。
多分それは僕がちゃんとした服を着ているから、何か金目の物を持っているかもみたいな感じだと思う。
みんな、生きるのに必死なんだ。
「ルイにもルシャにもちゃんと謝ろう!」
でも、やっぱり盗みはダメだ。
違うやり方で何とかしてみよう!

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