天才の天災

春夜

テスト当日

この学院のテストは大きくわけて
実技テストと筆記テストの2種類ある。
筆記テストは授業範囲の復習とその応用
が出題される。
実技テストはクラスによって異なり、
エギルの経営する学院はA〜Fクラス、
そしてAクラスの上にSクラスが存在する。
このテストは単なるテストとは異なり、
成績が悪い者はクラスが落とされ、
逆に良い者はクラスが上がる。
成績は実技100点と筆記100点の総合点で
付けられる。
それが、この学院に通う生徒が必死になって頑張るひとつの理由だ。
今のSクラスの生徒は全員優秀で、
Sクラスになってから1度も落とされたことがないらしい。

「で、教室ってどこにあるんだ?」
レン達は部屋から出たはいいものの、
普段行かないから教室がどこか分からないでいる。
「あたしらも授業には1回も参加してないからねぇ...ボス、スキルで何とかなんないのかい?」
それは俺も思っていたし、
やろうともした。だがシズクが...
「だめ。ますたーに頼りっぱなし。
聞いてくる。」
と言っていろんな人に声をかけている。
シズクがこっちに向き直り、
足早に戻ってきた。
「わかった。来て。」
教室に着くと、入学してすぐの挨拶の時と同じ顔ぶれが必死になって教科書を読み漁っている。
ブツブツと呪文を唱えて、何やら魔法の練習をしている者もいる。
(...無属性魔法の透視、か...なるほどな...)
この学院はカンニング自体は黙認している。試験官が愚かだと判断したカンニングのみ、減点されるきまりだ。
試験官の目をも欺くカンニングは、
魔法の技術力として、実技に加点される。
その事をミネア達にも伝える。
「あたしは元々魔法が得意でもないからねぇ...」
「得意。」
ミネアは頭を掻きながら答え、
シズクは胸をはる。
「マスターもカンニングなさるのでしたら、私、お手伝い致しましょうか?」
俺の中に入っているリズが頭の中で話しかける。
「いや、ないな。自分で解いた方が早いし正確だ。」
リズに調べさせるという手もあるが、
わざわざ知っていることを調べる必要が無いと判断した。

ガラガラガラ

試験官と思われる人物が入ってきた。
「では、先に筆記テストを始める。
必要最低限の物はしまえ。」
がっしりとした身体の、坊主の男。
サングラスをかけているが、
何度か手で位置を直していることから、
普段かけ慣れていないのだろう。
つまり
(目の動きで悟られないようにするためだな。)
魔法以外でのカンニング対策である。
「じゃ、配るぞ。」
試験官が腕時計を見て数秒後、
授業開始の鐘がなった。
「始め!!」

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