天才の天災

春夜

桜花の正体、&...

「ボス。楽しんでるとこ悪いんだけど、
これ以上やると精神が壊れちまうよ?」

ミネアの声でふと我に返ると、
目の前に妖狐が頭を抑えて蹲っていた。
妖狐は酷く怯えたようで、
ビクビクと震えながら涙を零している。

ただの幻でもここまで相手を追い込めるのは予想以上の結果だ。
妖術は中々に気に入ったスキルだ。
これからも使っていこう。

パチン

レンが指を鳴らすと、さっきまでの妖狐の怯え様が嘘のようにきえた。
「たしか...妖術を使われとった...はず...」
記憶を消したわけではないので、
妖術をかけられていたことは覚えているが、心に植え付けられたトラウマを
妖術を使ってその恐怖心を無かったことに
上書きした。妖術の応用だ。

「おもちゃを貰った子供みたいな顔をしてたねぇ、ボス。」
「笑っているご主人様もカッコイイです...」

ミネア達が何か言っているが、とりあえず放っておく。

「で?桜花の母親、だったっけ?」
「...そうじゃ。さっきも言うた通り育ての親やけどな。」
「俺に会いに来たとか言っていたな。
何か用か?」 
妖狐に視線を戻し、本人から聞いてみる。
「せや。お前さんらは、妖狐についてどのぐらい知ってはるん?」
リズ達に念話で聞いてみたが、
さっき聞いた『妖術が使える』という事以外何もわからないらしい。
「知らないな。」
「うちら妖狐は昔、『幻影の化身』や言われとったんよ。うちらがかけた妖術は
かけた本人かその人より高い妖力、お前さんらの言う魔力を持ってはる人、遥かに強い精神力を持ってはる人にしか解かれへん。ましてや妖狐言うのは妖術に長けた種族や。人が知恵を持ち、エルフが魔法を得意とし、ドワーフが鍛冶を得意とするようにな。妖狐が生まれながらに持ってはる長所が妖術で、それを神の御業や言う人もいはったわぁ。
そんな妖狐の情報がなんで少ないか、
簡単な話や。」
妖狐はその言葉の後に間をあけ、
少し冷たい口調で続ける。
「うちが種族を皆殺しにしたからや。」
その言葉を聞いてミネア達は驚いていたが、レンはそうでもなかった。
レンも人に飽きれば全滅させればいいと思っていたからだ。

妖狐はそのまま淡々と話す。
「うちはその中でも別格やった。
言葉を話し始めた幼少の頃でさえ、
里の誰もがうちの妖術を解けへんかったんや。退屈やった。
そんな時、ふと思ったんよ。
里の敵になれば、うちは負けれるんちゃうやろか。自分より強い人が出てきたら、
この世界は退屈やのうなるんやないかってな。せやから、強い人を探しとった。
里を全滅させたあの時からずっとな。
そんな時に桜花を拾ってな。
もし自分より強い人がおらへんのやったら、育てたらええんやないかって思ってな。それでもまだ人の一生分も生きてはらへん鬼の子や。修行も兼ねて、
強い人を探してまわらせとったんよ。」

ん?

「「「「「鬼の子?」」」」」
これにはさすがに神眼を使っていなかったレンも聞き返す。

「なんや。言うてはらんかったの?」
「別に隠しとったわけやあらへん。
決勝でレンと戦う時にでも明かそう思おとったんじゃが...
明かす前に殺られてもうたしの。」

どうりで他の奴らより少し強い感じがしたわけだ。
鬼人族(オーガ)であれば、人族より
ステータスが桁違いでもおかしくはない。

「なるほど。で?お前はどうだ?妖狐。
お前より強い奴が見つかった訳だが、
まだ戦う気があるのか?」
妖狐はレンの質問に勢いよく顔をぶんぶんと横に振る。
「堪忍しておくれやす!お前さんには
勝てる気がせぇへんわ。
圧倒的に強い人を見つけられて、
うちはもう満足や。
退屈な世界は終わったみたいやわぁ。
ただ...」
「なんだ?」
「...お前さんに会った時からもう1つ
願いが出来てしもたみたいなんや。」

ミネア、シズク、ココが何を言おうとしているのかいち早く気づき、
言葉を発せまいと駆け寄るも...

「うちを、お嫁にしてもらわれへんやろか...?」

...一足遅かった

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